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2人用声劇フリー台本『私は夫と不倫をしてる』

<はじめに>

ようこそ初めまして、鳴尾です。
こちら、以前ボイコネで投稿していたシナリオになります。

30分、2人用(男1、女1)フリー台本です。
演者様の性別は問いません。ひとり二役も頑張れば可能です。
セリフは、多少であれば言いやすいように変えていただいて構いませんが、なるべくそのままだと嬉しいです。


お芝居としての趣味、商業利用、ご自由に使ってくださってください。
その際、鳴尾の名前添えていただけると嬉しいです。
無断転載や自作発言は悲しくなるのでやめていただけますと幸いです。

もし使用後にこちらのコメントかTwitter等で教えていただければ、できる範囲で聴きに行きたいと思いますので、よかったら教えてください。

<あらすじ>

結婚二年目の妻と夫は、それぞれお互いには言えない秘密がありました。

それは…不倫をしていること。

けれど実はその不倫相手は夫で、妻でした。

<登場人物>

市川冴子(いちかわさえこ)。専業主婦。旧姓は一之瀬(いちのせ)。
SNS上にて、本名の両端をとった「イチコ」という名前でコスプレイヤーとして活動中。そこそこ人気。
SNS上で「コウタ」という名前の男性に口説かれ、振るために一回会ったら恋に落ちた。

市川孝太郎(いちかわこうたろう)。会社員。
SNS上で、偶然見つけたコスプレイヤー「イチコ」ちゃんに一目惚れし、猛アタックの末付き合うことに。
SNS上での名前は「コウタ」。
普段の一人称は「俺」だけど、イチコちゃんの前ではかっこつけて「僕」と言っている。




『私は夫と不倫をしてる』


妻:突然だけど、私には秘密がある。夫には決していえない秘密。それは…。
夫:突然だが、俺には秘密がある。妻には決していえない秘密。それは…。



妻:おはよう、孝太郎。
夫:おはよう、冴子。
妻:今日は早く帰ってこれそう?
夫:悪い、今日は会社の飲み会があるんだ。
妻:そう。じゃあ私も友達と食べてくるわ。
夫:わかった。じゃあ行ってくるよ。
妻:行ってらっしゃい。…はあ。


妻:私には秘密がある。夫には決していえない秘密。それは、私が不倫をしているということ。
妻:きっかけはSNS。私の密かな趣味であるコスプレを褒(ほ)めてくれたことが始まりだった。そこから会話をしていくうちに仲良くなり、実際に会うようにもなった。今日も彼とのデートの日なのである。



妻:お待たせ、コウタくん。まった?
夫:ううん、待ってないよ。それじゃ行こうか。
妻:うん。
夫:イチコちゃん、今日はどこに行きたい?
妻:そうね。動物園なんてどうかしら。
夫:いいね。行こうか。
妻:楽しみだわ。



妻:今日もとっても楽しかった!
夫:僕もだよ。次はいつ会えるかな。
妻:そうね。また連絡するわ。
夫:分かったよ。連絡待ってる。
妻:うん。それじゃ。
夫:じゃあね。…はあ。

夫:ああ、今日もやってしまった。はあ、どうしよう…。
夫:俺には秘密がある。そう、あれは遡(さかのぼ)ること数時間前。
夫:あ、もしもし。市川です。…すみません。体調が悪くて、休みをいただきたいのですがよろしいでしょうか。…はい。…はい。…わかりました。はい、ありがとうございます。…はい、失礼します。
夫:…よし。行くか。
夫:俺には秘密がある。妻には決していえない秘密。それは、俺が不倫をしているということ。
夫:きっかけはSNSだ。妻が好きなアニメのことを調べているうちに知ったコスプレイヤーに一目惚れして、俺から猛(もう)アタックをした。彼女に会うのは、最近の俺の一番の楽しみだ。
夫:俺は別に妻が嫌いだとか愛想をつかしているとか、そんなことはなくて、いやそれも言い訳なんだけど。
夫:最初は顔だけで近づいたけど、仕草や性格も素敵で、どんどん惹(ひ)かれていった。とにかく、俺はイチコちゃんのファンで、イチコちゃんが好きだ。



夫:ただいま。
妻:おかえり、孝太郎。お風呂沸いてるわよ。
夫:ああ、ありがとう。もう寝るのか?
妻:ええ。
夫:分かった。おやすみ。
妻:おやすみ。


妻:…。コウタくんからもらったこのニシキヘビのキーチェーン、どうしようかしら。孝太郎に見つかったら困るし…。でも捨てるわけにもいかないよね。困ったわ。とりあえずカバンの中に隠しとこ。



妻:おはよう。
夫:おはよう。
妻:今日は早いの?
夫:悪い。今日も遅くなる。
妻:晩御飯は?
夫:いらない。
妻:分かったわ。
夫:行ってきます。
妻:行ってらっしゃい。



夫:イチコちゃん、ここのラーメン美味しいでしょ。
妻:うん、すっごく美味しい。連れてきてくれてありがとう、コウタくん。
夫:イチコちゃんはとっても美味しそうに食べるから、あちこち連れて行きたくなるんだ。
妻:嬉しい。ありがとう、コウタくん。


妻:あのラーメン、本当に美味しかった!お礼に今度は私のおすすめのお店紹介するわ。
夫:それは楽しみだな。
妻:じゃあね。
夫:うん。またね。



夫:ただいま。…冴子?いないのか。友だちのところにでも行ってるのかな。まあいい。今のうちに今日の証拠隠滅(しょうこいんめつ)を…。
妻:ただいま。あら、帰ってたのね孝太郎。
夫:ああ、さっきな。どこ行ってたんだ?
妻:友だちとご飯食べてきたの。
夫:どこのご飯屋?
妻:えっと…次郎丸(じろうまる)らーめん。
夫:え?
妻:何?
夫:いやなんでもない。
妻:孝太郎はどこで食べてたの?
夫:えっと…次郎丸らーめん。
妻:え?
夫:あ、えっと…まあ店内そこそこ広いし、気づかないとかあるだろ。
妻:そ、そうね。
夫:…。
妻:お風呂入ってくる。
夫:ああ。

夫:え?冴子あそこにいたのか?バレてないよな。まさか冴子がラーメン屋に行ってるなんて…。迂闊だった…。


妻:あの店孝太郎も行くのね。会社の近くで飲んでなさいよ。迂闊だったわ。気をつけなきゃ…。



夫:おはよう、冴子。
妻:おはよう、孝太郎…。
夫:今日も会社のやつと飲んでくるから遅くなる。
妻:分かったわ…。
夫:行ってくる。
妻:行ってらっしゃい…。


妻:今日もコウタくんとのデートの日だけど…。頭痛い…。今日のコウタくんとのデートはやめよう。うつしちゃいけないし。えっと、スマホ、スマホ…。あった。
妻:えっと、『ごめんなさい。今日は少し体調が悪いので、デートはまた今度でもいいですか?』…送信、と。…それにしても、孝太郎は気づきもしなかったな。コウタくんとは大違い…。



夫:ん、メール?あ、イチコちゃんからだ。えっ、体調不良?大丈夫かな。返信しなきゃ。『大丈夫?デートのことは気にしないで、イチコちゃんはゆっくり休んでね。お大事に。』っと。…よし、送信。
夫:はあ、家の場所知ってたらお見舞い行くんだけどなあ。でも今聞いて寝てるとこ邪魔しちゃいけないしな、今度会ったときに聞いてみようかな。



妻:あれ、寝ちゃってたんだ。うわ、もうこんな時間…。あれ、孝太郎?
夫:大丈夫か?
妻:飲み会は?
夫:なくなった。ちょうどよかったよ。飯食ってないだろ。
妻:うん。
夫:お粥なら食える?
妻:多分。
夫:作ったから食え。冴子よりは下手かもしれないけど俺だってこれくらいはできる。
妻:ありがとう。
夫:今度から言えよ。帰ってきたときびっくりするじゃねえか。
妻:分かった。
夫:俺風呂入ってくるから、食ったら布団で寝ろよ。
妻:うん。


妻:どうしよう、孝太郎ってあんなにかっこよかったっけ…。



夫:おはよう、冴子。
妻:おはよう。
夫:具合どう?熱下がった?
妻:うん、もう大丈夫。
夫:そうか、じゃあ俺仕事行ってくるけど、何かあったら連絡しろよ。
妻:分かった。


妻:昨日できなかった掃除やっとかなきゃ。…あ、コウタくんからメール来てたんだ。気づかなかった。返事しとこ。



夫:メールだ。冴子か?あ、イチコちゃん。よかった。もう良くなったんだ。でもまだ病み上がりだよな。明日なら会えるかな。あ、でも冴子も病み上がりだし…うーん。
夫:『元気になってよかった。でもまだ無理しちゃだめだよ。今週はデートやめとこうか。』これで、送信、と。


妻:コウタくんからメールだ。優しいなあ。『心配してくれてありがとう。この埋め合わせは来週きっとするからね』っと。よし、買い物行くか。



夫:ただいま。…あれ、冴子?ぶり返してどっかで倒れたりしてないよな?冴子、冴子!…いない?出かけてるのか?病み上がりだってのに…。
妻:あれ、孝太郎?
夫:冴子、どこ行ってたんだ。
妻:隣町のスーパー。今日特売だったんだよねえ。てか帰ってくるの早いね。
夫:俺の心配を返せ…。
妻:へ?
夫:荷物かせ。座ってろ。病み上がりは無理すんなって今朝言ったばっかだろ。
妻:う…。だって安かったんだもん…。
夫:ったく。しょうがないやつだな。とにかく、今週は俺がご飯作るからな。
妻:ええ、それじゃ専業主婦の私の立場がないじゃん。
夫:うるせえ。専業主婦にも有給は必要だ。
妻:…。
夫:なんだよ。
妻:ありがとう。
夫:お、おう。
妻:えっと。お風呂入ってくる。
夫:ああ。


夫:どうしよう、冴子が可愛い。


妻:なんで今週の孝太郎はこんなにかっこいいの…?まだ熱あるのかな…。



妻:おはよう、孝太郎。
夫:おはよう、冴子。
妻:今日は飲み会?
夫:ああ。
妻:分かった。私も友だちと食べてくるわ。
夫:分かった、行ってくる。
妻:行ってらっしゃい。


妻:一週間ぶりのコウタくんとのデート。今日は私の好きな店に連れてくんだ。気に入ってくれるかな。楽しみ。でも、なんかモヤモヤする。



夫:あ、もしもし。市川です。…はい。また…。…そうですね、社会人の自覚が足りないことは自覚しています。…はい。…はい。すみません…。はい。…はい。失礼します。
夫:ふう。今日は久しぶりのイチコちゃんとのデート。楽しみだなあ。あ、でも冴子…。はあ…。



妻:コウタくん!
夫:イチコちゃん。久しぶり。もう体は大丈夫?
妻:うん。心配してくれてありがとう。もう大丈夫よ。
夫:よかった。ずっと心配だったんだ。それでね…。
妻:どうしたの?
夫:先週、イチコちゃんが体調崩したって聞いたとき僕本当はイチコちゃんの家までお見舞いに行きたかったんだ。でも家わからなかったから。だからね、今後はそういうことがないようにイチコちゃんのお家の場所、教えて欲しいんだ。
妻:えっと…。
妻:(どうしよう…孝太郎がいるときにコウタくんが来ちゃったら不倫してるのがバレちゃう。でもここで断るのも変よね…。そうだ。)
妻:分かった。私の家の場所、教えるわ。でもその前にコウタくんの家も教えて欲しいな。私、コウタくんの家に行ってみたい。
妻:(コウタくんの家で時間潰して誤魔化そう!)
夫:僕の…家?
夫:(どうしよう、俺から聞いた手前俺ん家だけ教えないのも変だよな。でも冴子がいたら?聞いてみるか?)
夫:ちょっと待っててくれる?
妻:うん…?
夫:(冴子に…『今家にいるか?』と。よし、送信。)
妻:(メール?誰から…孝太郎?今仕事中じゃないの?え?家にいるか?『いない。』送信。なんなの?)
夫:(お、返信来た。いないのか。ずっといないのかな。『何時に帰る?』)
妻:(なんなの孝太郎のやつ、今日に限って。忘れ物でもしたのかしら。『19時くらい。』)
夫:(そんなに?あいつ一体何してんだ。まあいいか。今夜にでも聞いてみよう。)
夫:お待たせ、イチコちゃん。じゃあ僕の家行こうか。
妻:やったあ、楽しみ。



夫:もうすぐだよ。
妻:楽しみだわ。
妻:(近いわね。近所でばったりあったらどうしよう。あ、でもこの格好してなきゃわかんないか。)
夫:着いたよ。ここが僕の家。
妻:え?
夫:さ、入って。
妻:どういうこと?
夫:どういうことって?
妻:(ここ、私の家だ。)
夫:イチコちゃん?
妻:ここ本当にコウタくんの家?
夫:うん、そうだよ。ほら、鍵だって。
妻:孝太郎?
夫:へ?
妻:ねえ、その鍵、孝太郎のよね。どういうこと?
夫:それはこっちのセリフだよ。っていうかなんで僕の名前知って…?
妻:だって私も同じの持ってるもの。お揃いで!…あ。
夫:冴子?え?冴子なの?
妻:本当に孝太郎なの?
夫:うん…。冴子なのか?
妻:うん…。
夫:…。
妻:…。
夫:中で話そうか。
妻:そうね。



夫:…で、本当に冴子なの?
妻:うん。
夫:俺、孝太郎。
妻:知ってる。
夫:そっか。
妻:会社は?
夫:仮病…。
妻:今までずっと?
夫:そろそろ有給なくなるからどうしようかなとは思ってた。
妻:ごめんちょっと理解が追いつかない。
夫:俺も。…化粧で変わりすぎだろ。
妻:そっちこそ、髪型と服装でそんなに変わるなんて聞いてない。そっちのほうがずっと似合ってるじゃん。
夫:ていうか俺には気づけよ!俺髪型と服装変えただけじゃん。
妻:仕事してる時間なのよ。ちょっと似てる人かなくらいにしか思わないわよ。
夫:それは、そうかもだけど…。
妻:大体、孝太郎だって気づかなかったじゃない。私コスプレしてるときほどメイク濃くしてないよ。
夫:だって普段のメイクと違うだろ。
妻:それでもこの服とか見覚えあるでしょ。
夫:そんなよくある柄じゃ見分けられねえよ。
妻:よくある柄で悪かったわね。孝太郎こそセンスないのよ。
夫:は?
妻:なんなのよニシキヘビって。こんな変なキーチェーン誰が買うのよ。
夫:貰ったときはあんなに嬉しそうにしてたくせに、俺だと知った瞬間手のひら返しか。
妻:何よ孝太郎こそ、さっきまで『僕』って言ってたくせに。
夫:それは…。
妻:赤くなってんじゃないわよ。もう。
夫:うるせえ。大体、なんで『イチコ』なんて名前でやってんだよ。
妻:分からないの?
夫:わかるわけないだろ。
妻:そうね、孝太郎は『コウタ』だもんね。安直だこと。
夫:余計なお世話だよ。それでも気づかなかったくせに。で、なんで『イチコ』なんだよ。
妻:私の名前よ!
夫:名前?
妻:『市川冴子』だから最初と最後を取って『イチコ』。
夫:ああー。
妻:感心しないで!恥ずかしい!!


妻:ねえ、なんで『イチコ』をデートに誘ったの?
夫:可愛くて…。つい。
妻:何それ、最低。
夫:お前だって来たくせに。
妻:一度会ったら連絡するのやめてくれるかなって思って。だって、孝太郎いるし。
夫:ごめん。でも、イチコちゃんに惚れたのは顔だけじゃない。一緒にいると心地よくて、楽しかった。
妻:私も、コウタくんとのデート、楽しかった。
夫:…。
妻:…。
夫:っぷふふははは。
妻:っぷふふははは。
夫:なんだよ、馬鹿みたいじゃん。俺、冴子に2回も告白したの?
妻:何よ、よく確認しなかったからでしょ。
夫:それはお互い様だろ。
妻:はあ、もう馬鹿みたい。
夫:そっか、そりゃイチコちゃんと冴子が同時に熱出すわけだ。
妻:一緒なんだもん。
夫:だよなあ。
妻:メール変えてたのが馬鹿みたい。
夫:本当だよ。
妻:ラーメン屋さん被ったのも全然偶然じゃないし。
夫:一緒に行ってたんだな。
妻:焦って損した。
夫:全くだ。
妻:てか家教えちゃだめでしょ。突然来たらどうすんの。
夫:確かに。
妻:馬鹿ねえ。
夫:考えてなかった…。
妻:孝太郎らしいわ。
夫:はあ。疲れた。
妻:私も。
夫:なあ、冴子。
妻:何?
夫:デート、行かない?
妻:いいわよ。
夫:『イチコちゃん』おすすめのお店、連れてってくれよ。
妻:うう、もうその名前で呼ばないでえ…。
夫:ははは。
妻:ふふふ。



妻:あ、でもね孝太郎。私あなたが可愛い…子に一目惚れしてアプローチしたってとこは許さないからね。
夫:自分で自分を可愛って言って照れるなよ。
妻:うるさいわね。茶化さないの。とにかく!知らない子に一目惚れしてアプローチしたら許さないから!
夫:すみませんでした。でもな、お前だってそれで簡単に落ちるなよ。知らないやつについてったら怒るからな。
妻:はい…。ごめんなさい。
夫:お互い次はないってことで。
妻:そうね。
夫:てかこのパスタ美味いな。
妻:でしょ。こっちのスープもおすすめよ。
夫:ん、美味い。ここいいな。また来ようぜ。
妻:そうね。
夫:ははははは。
妻:ふふふふふ。

こんにちは、自他共に認めるいかれポンチ鳴尾です。 いかがでしたか? あなたの期待に応えられるよう、これからも良い作品を書き続けますね。