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【六兆年と一夜物語】kemu楽曲の物語を改めて考察してみる【10周年】

四度目まして。夢結(@Mei_yumeyui)といいます。よろしくお願いします。

サムネイルは「六兆年と一夜物語」3:39辺りのスクリーンショットを使わせていただきました。

企画概要はこちら

【IA】六兆年と一夜物語【オリジナル曲・PV付】

【HD】 六兆年と一夜物語 【IAオリジナル曲・PV付】- KEMU VOXX

「少年は人になりたかった」 - 動画説明文より
「てにいれることもあれば」- マイリストコメントより

4作目です。雰囲気ががらりと変わります。

この企画にご協力いただいているホワイトさん(@snowwhite_9494)も、「六兆年と一夜物語」に関するnoteを投稿されているので是非!

それでは歌詞を見ていきましょう。
その前に、この作品に関してはcreate voxxの該当ページがhatsukoさんのpixivにアップされていますので引用させていただきます。

ものすごく遠い時代のお話。
土地のしきたりにより、生まれた時から忌み嫌われ人にあらざる扱いを受けてきた少年は、母親に手を引かれて帰る子供の心情も知る由も有りません。そんな少年が同じ忌み子同士の女の子に出会い、はじめて言葉を交わして逃げ出して、幸せなことを沢山知って、それでもすぐに捕まって、最後に心から望んだのは二人っきりの世界でした。

このように公式設定がめちゃくちゃ綺麗にまとめてくれています!おかげで今回は歌詞に関して述べることは少なく済みそうです。
以下、これを参照する際には""を用います。

名も無い時代の集落の 名も無い幼い少年の
誰も知らない おとぎばなし

"ものすごく遠い時代のお話"です。
今までを考えるとここからもう異色ですね。最初に奇跡が起こりません。
名も無い少年とありますが、男の子の名前はリクくんといいます。アルバム「PANDORA VOXX complete」の店舗別購入特典の一つに、「リクくんマウスパッド」なるものがあり、こちらから確認できます。

産まれついた時から 忌み子 鬼の子として
その身に余る 罰を受けた

"生まれた時から忌み嫌われ人にあらざる扱いを受けてきた少年"です。

悲しい事は 何も無いけど
夕焼け小焼け 手を引かれてさ

知らない知らない僕は何も知らない
叱られた後のやさしさも 雨上がりの手の温もりも
でも本当は本当は本当は本当に寒いんだ

"母親に手を引かれて帰る子供の心情も知る由も有りません"です。

死なない死なない僕は何で死なない?
夢のひとつも見れないくせに
誰も知らない おとぎばなしは
夕焼けの中に吸い込まれて 消えてった

こんな酷い状況に陥っているのに、どうして自分は生きているんだろう...ということだと思います。

吐き出す様な暴力と 蔑んだ目の毎日に
君はいつしか そこに立ってた

"同じ忌み子同士の女の子に出会い"です。

話しかけちゃだめなのに 「君の名前が知りたいな」
ごめんね 名前も 舌も無いんだ
僕の居場所は 何処にも無いのに
「一緒に帰ろう」 手を引かれてさ

"はじめて言葉を交わして逃げ出して"です。
名前も舌も無い、とありますが、名前は上で述べた通りあります。舌が無いのは、生まれつきかも知れませんし、罰として抜かれたのかもしれません。しかし、言葉を交わしているので喋ることはできるようです。
「一緒に帰ろう」は、一緒にここから逃げ出そうという意味でしょう。彼女も忌み子なので......

知らない知らない僕は何も知らない
君はもう子供じゃないことも
慣れない 他人(ひと)の 手の温もりは
ただ本当に本当に本当に本当のことなんだ

やっと考察しがいのあるところが来ましたね!
君はもう子供じゃないとはどういうことでしょうか。まずはこの曲単体での解釈をしてみます。
あまり考えたくは無いですが、この少女も忌み子ということなので酷い扱いを受けてきており、そういった背景を考慮すると、子供ではない=生娘ではないという解釈も可能なのかなと思います。
あるいは、罰を受けなければならない環境から逃げ出す決心を固めた少女の心が、もはや子供のそれではない、ということかもしれません。
では、他の曲を考慮しての解釈をしてみます。私の本命はこっちです。
詳しくは次回の記事で述べますが、私はこの少女が「地球最後の告白を」の少女だと考えています。そして「地球最後の告白を」の少女は不老不死だということが歌詞に書かれています。つまり、不老不死ゆえにとても子供とは言えない歳月を過ごしている、という解釈です。
慣れない他人の〜は、"幸せなことを沢山知って"の一部ですね。

やめないやめない君は何でやめない?
見つかれば殺されちゃうくせに
雨上がりに 忌み子がふたり
夕焼けの中に吸い込まれて 消えてった

話しかけてはいけないレベルなので、一緒に逃亡などもってのほかです。バレたら死ぬのに、どうして助けてくれるの?ということだと思います。

日が暮れて夜が明けて 遊び疲れて捕まって
こんな世界 僕と君以外 皆いなくなれば いいのにな
皆いなくなれば いいのにな

"それでもすぐに捕まって、最後に心から望んだのは二人っきりの世界でした"です。

知らない知らない声が聞こえてさ
僕と君以外の全人類
抗う間もなく 手を引かれてさ
夕焼けの中に吸い込まれて 消えてった

全人類、のシーンでの背景は「イカサマライフゲイム」にも使われていたイラストですね。髪型的にもおそらくマキちゃんです。
ようやく通例の奇跡が起こりました。

知らない知らない僕は何も知らない
これからのことも 君の名も
今は 今はこれでいいんだと
ただ本当に本当に本当に本当に思うんだ
知らない知らない あの耳鳴りは
夕焼けの中に吸い込まれて消えてった

少年と少女の二人きりになって、これからどうすれば良いのかは全然分からないけど、今は忌み子としての酷い環境から二人とも解放されたことを良しとしよう......という心境だと思います。

この曲単体としてのストーリーはとても分かりやすいと思います。問題は「六兆年と一夜物語」というタイトルです。「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」のオマージュだとは思いますが......
この曲の歌詞にどうみても六兆年の要素はないです。いくら遠い時代とはいえ、六兆年は遠すぎます。地球、無いです。しかし、このnoteを読んでくれているようなKEMU VOXXファンの方なら六兆年という単語に聞き覚えはあるでしょう!

六兆五千三百十二万四千七百十年の -「人生リセットボタン」より

これですね!
他の曲に六兆年を思い起こさせる要素は見当たらないので、「六兆年と一夜物語」の六兆年という部分は、「人生リセットボタン」の主人公がリセットを繰り返すことによって実際に経た年数、です。つまり六兆年自体が一単語ということなので、タイトルの切れ目は、「六兆年と/一夜物語」になります。「六兆年と一夜/物語」ではないということです。英語を使って説明するなら、「六兆年 and 一夜物語」であって、「物語 of 六兆年+一夜」ではないということです。
すなわち、タイトルを詳しく書くと、次のようになります。

『「人生リセットボタン」の主人公が繰り返し経験した六兆年という年月、そして、一夜にして君と僕以外の全人類が消えた物語

六兆年の由来はこれで良いとして、次に生じる疑問はどうして「人生リセットボタン」から六兆年という単語を引用する必要があったのか、です。この2曲に物語的な関連は無さそうです。それでもこの曲と「人生リセットボタン」に関連性を持たせたのには意味があるはずです。

この曲のタイトルが単なる「一夜物語」ではなく「六兆年と一夜物語」であることによって、何が変わるんでしょうか?

そう、「人生リセットボタン」を想起するか否かです。では、想起しない場合には何が変わるんでしょうか?

......この曲と過去作との、誰が聞いても明らかな関連が無くなります。繰り返しになりますが、この曲は過去3作に対して異質です。冒頭で奇跡によって願いが叶い、次第に破滅していくという過去3作のパターンとは明らかに違います。明らかに過去作とは毛色の異なる曲が投稿されて、その曲には過去作との関連が無いとなると、こう思う視聴者もいるかもしれません。「過去3作のシリーズは完結して、この曲は新しい、あるいは単発の物語なのだな」。これを回避し、毛色は異なるがこれも同シリーズであるということを強調するために、歌詞には一切関係の無い六兆年という単語を引用したというのが私の考察の一つです。

世界観の共有という観点なら、PVにkemuキューブを登場させておけば解決するような気もしますが、「インビジブル」では「リセットは別の話」という歌詞を用い、「イカサマライフゲイム」では冒頭に過去2作の音源、途中に過去作のメロディを使用しています。このように歌詞・音で関連が示されていて、PVが無くとも理解できるようになっていました。これにならって今作もPV以外のところで関連性を持たせるようにしたのかもしれませんね。

最後に、考えてはみたけど考察には盛り込めなかったことを書き残しておきます。

・世界に二人きりという状況、そして背景の林檎......これは「創世記」のアダムとイヴを思い起こさせなくもない......
・「千夜一夜物語」との共通点......タイトルオマージュするくらいだから何かありそうだけど話の内容が違いすぎる......

まとめ

起:忌み子として罰を受ける
承:同じ忌み子の少女と出会う
転:逃亡するが捕まり、二人きりの世界を望む
結:君と僕以外の全人類が消える

お付き合いいただきありがとうございました。
次回「地球最後の告白を」でまたお会いしましょう。

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