見出し画像

【インビジブル】kemu楽曲の物語を改めて考察してみる【10周年】

二度目まして。夢結(@Mei_yumeyui)といいます。よろしくお願いします。

サムネイルは「インビジブル」3:37辺りのスクリーンショットを使わせていただきました。

企画概要はこちら

【GUMI・鏡音リン】 インビジブル 【オリジナル曲・PV付】

【HD】 インビジブル 【GUMI・鏡音リン】- KEMU VOXX

「少年はよだかになりたかった」 - 動画説明文より
「いなくなったり」- マイリストコメントより

2作目です。最初はGUMIとミクの予定だったそうです。
動画説明文に関してですが、やはり思い浮かべるのは宮沢賢治の短編「よだかの星」でしょう。国語の教科書にも掲載されている有名作品です。まだ読んだことがないという方は青空文庫さんで公開されていますので以下のリンクからどうぞ。

この「よだかの星」がどのように関連しているのかは一旦保留しておきます。それでは歌詞を見ていきましょう。

とんでもない現象 どうやら透明人間になりました
 万々歳は飲み込んで
ああでもないこうでもない原因推測をぶちまけて
 一つ覚えで悪かったね

前作もそうでしたが、入りが強烈ですね...
透明人間になり、万歳したい気持ちを抑えて原因を考えてみるけど思い当たらず、悪態をついています。この台詞もそうですが、この主人公は少し自嘲的なところがあるようです。
万歳したい気持ちがあったということは、透明人間化を主人公は望んでいたということですね。

まあしょうがない しょうがない 防衛本能はシタタカに
 煙たい倫理は置いといて
あんなこと そんなこと煩悩妄執もハツラツと

なってしまったものはしょうがないと、割と楽観的です。シタタカは「強か」でいいのかな。透明人間になったことで、なにやらやましいことを考えているようですね。

聞きたくなかった陰口と 焼き付いたキスシーン

主人公を認識できない周りの人々は、本当はそこで主人公が聞いているともつゆ知らずに陰口を言い、本来は人目を憚るであろう行為も見えない主人公の前では遠慮なしです。

リセットは別の話 もう頭が痛いよ

何の脈絡も無くリセットという単語が飛んできました。PVではこの歌詞の時に白い立方体が落ちてきています。これは前作「人生リセットボタン」に登場したものと同じです。この立方体はほぼ全作に共通して登場するのですが、今後「kemuキューブ」と呼ぶことにします。
リセットは上で書いた通り、前作「人生リセットボタン」のことを指していると見て良いでしょう。そしてこれが別の話だと言っています。「インビジブル」の主人公が「人生リセットボタン」を別の話だと認識しているというのは時系列を考えるときに重要になってきそうです。

大嫌い嫌い嫌いな僕が 見えてますかルンパッパ
知らん知らん顔して 凭れるナナメが欲しいだけ
楽観 楽観 達観 楽観 達観 楽観視 僕は透明人間
見えないクセして 世迷い言垂れても意味ないじゃん

一文目からは主人公が嫌われていたことがわかりますね。
そして結局ルンパッパって何なんでしょうね...
個人的には見えてますか~って煽ってるような(?)ニュアンスを受けました。語感だけであんまり意味は無いんじゃないかなーって思ってます。度々出てくるけど。
グジャラート語で罪を犯すの意味があるという解釈もありますが...
投稿当時の動画説明文は現在の「少年はよだかになりたかった」ではなく制作メンバーの掛け合い的なものだったのですが、その際のkemuさんの台詞はグジャラート語で書かれていたので、関係無いとも言い切れないのが面白いですね。
凭れるナナメ~は頼れるものが欲しい、くらいの意味でしょうか。
見えないから色々言っても意味ないじゃんってここでも自嘲気味です。

混濁とコンタクト コンダクターこんな僕を導いて
 セルカークばりの粋なシチュエイション
ああでもないこうでもない あんなことこんなこと もう沢山 
 つべこべ排他的感情論

セルカークはおそらく以下の人物を指しています。

アレキサンダー・セルカークは、遭難者として無人島で4年間を過ごしたスコットランドの水夫。彼の苦難は、ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』の素材の1つとなっているのではないかと推測する見解がある。
-「アレキサンダー・セルカーク」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。2021年5月7日 (金) 01:35 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org

透明人間ゆえに周囲から認識されない状況を、無人島ゆえに周囲に誰もいないセルカークのような状況だ、と言っているのでしょう。

どうやら一方通行のお友達は膠もなく
 随分大胆な夜遊びね
世界一無害で尚且つ傍若無人なゴミにはなれたでしょう

一方通行のお友達...自分は友達だと思ってたけど...ってやつでしょうか。
自身をゴミだというところもやはり自嘲的です。

そこに僕がいない事 誰も気づいちゃいないでしょう
そもそもいない方が 当たり前でしたね

主人公がいなくなっていることに誰も気づいてくれません。そんな様子を見て、自分がいない方が当たり前だと言います。主人公は透明人間となる以前も周囲から無視されていた、いじめられていたのだと考えられます。

大嫌い嫌い嫌いな僕を 覚えてますかルンパッパ
知らん知らん顔して 楽しく生きるのやめてくんない?
楽観 楽観 達観 楽観 達観 楽観視 僕は透明人間
爪噛む悪いクセ 今更止めても意味ないじゃん

特に解説することも無いですね。次に行きましょう。

大往生を前にして しゃがれた老父は笑ってた
そうかそうか道理で ひとりじゃ笑えない

安らかに亡くなる老父が笑っているのを見て、主人公は透明人間のままでは永遠に孤独であり幸せにはなれないことに気づきます。

大嫌い嫌い嫌いな僕が 張り裂けてルンパッパ
届かない戯れ言 内緒の悪口ありがとう

上の気づきを得た主人公は、たとえそれが悪口だとしても、まだ自分の話をしてくれていることがありがたいと思えるようになったみたいです。

大嫌い嫌い嫌いな僕を どうか忘れないで
ごめんね それでも 端っこでいいから座らせて

初めは透明人間になれたことを喜んでいた主人公ですが、今は周囲から忘れ去られることを恐れ、良い扱いで無くてもいいから普通の人々の中に戻りたいと思っているようです。

交差点 人ごみの真ん中を急ぐサラリーマンが
すれ違いざま 今 半身で確かに避けたんだ
今 僕はここに

文字通り受け取るなら、主人公はサラリーマンに認識された、つまり透明人間ではなくなったことになります。そういう解釈もあると思います。

ところで、保留していた「よだかの星」の話をしましょう。
いじめられていた、嫌われていたところなんかはそのままリンクしますね。
そしてよだかはたくさんの虫を食べ殺した自身が鷹に殺されるその無意味さに気づきます。ここは老父を見ての気づきとリンクしそうです。その後よだかは星になり、今でも燃えているそうです。つまり、嫌われものだったけれど、最終的には星という偉大な存在になったわけです。
いじめられ、嫌われている自分だけど、最後には意味のある死を遂げたい。これが「少年はよだかになりたかった」の意味だと思います。

ここからは妄想の域を出ないとは思いますが、私なりの考えを...
特筆すべきは、なりたかったという部分です。これは、なれなかったのと同義ではないでしょうか。よだかになれなかったということはすなわち、意味のある死を遂げられなかったことになります。
最後、本当に透明人間ではなくなったのでしょうか。主人公の判断材料はサラリーマンが避けたということだけです。たまたまだということもあるでしょう。しかし舞台は交差点です。主人公が透明人間のままだとしたら、サラリーマンがここで避けるべきものは...

こうして主人公は透明人間として誰にも気づかれないまま意味の無い死を迎えたというのが私の考えた結末です。私がこういうオチが好きなだけかもしれません。

まとめ

起:透明人間になる
承:能力を使って色々する(キスシーンとか夜遊びの目撃など)
転:透明のままでは幸せにはなれないことに気づく
結:透明人間ではなくなった?

お付き合いいただきありがとうございました。
次回「イカサマライフゲイム」でまたお会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?