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#映画感想文308『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』(2023)

映画『アバウト・ライフ 幸せの選択肢(原題:Maybe I Do)』(2023)を映画館で観てきた。

監督・脚本はマイケル・ジェイコブス、出演はダイアン・キートン、リチャード・ギア、スーザン・サランドン、エマ・ロバーツ、ルーク・ブレイシー、ウィリアム・H・メイシー。

2023年製作、95分、アメリカ映画。

ミシェル(エマ・ロバーツ)は、親友の結婚式に参列しており、花嫁が投げるブーケを取る気満々で待っている。彼女にはプランがある。このブーケを受け取り、ボーイフレンドのアレン(ルーク・ブレイシー)にプロポーズされて結婚し、親友と出産時期を合わせ、子ども同士も親友になってもらおう。

その企みを新郎から聞いたアレンは、ダイブして、ミシェルが受け取ろうとしていたブーケを奪い取る。アレンは結婚したくなかった。そのことを知ったミシェルは、怒りと悲しみでパニック状態。結婚するかしないか、はっきりしてほしい、とアレンに決断を迫る。

ミシェルの父親であるハワード(リチャード・ギア)は、アレンの母親であるモニカ(スーザン・サランドン)との不倫関係を終わらせたがっていた。一方のモニカはなかなか見つけられない不倫相手を逃がすまいとしていた。その甲斐もなく、ハワードはモニカを拒絶し、ホテルを去る。彼は人生に空虚さを感じていたが、女性の面子を潰すのもいかがなものかと思わせるシーンでもあった。

アレンの父親であるサム(ウィリアム・H・メイシー)は、映画館で号泣しながらビーフジャーキーをちぎって、ポップコーンに混ぜたりして、挙動不審である。ミシェルの母親であるグレース(ダイアン・キートン)は彼の近くに行って、問題ないかを尋ねる。サムは孤独に苦しんでいると泣きながら言う。そのようにして出会った二人は、一晩中、街を散歩して語り合う。この二人はプラトニックな関係である。

というわけで、ミシェルとアレンの両親は、知らず知らずのうちに、交換するかのようにダブル不倫をしていた。親族の顔合わせとして、六人で夕食会をすることになり、互いの顔を見て大パニックとなる。

そして、若い二人は結婚を選ぶのかどうか。コミカルなやりとりが、ベテラン俳優によって繰り広げられ、そこが一番見応えがあった。

結婚を避けたいアレンは、仮面夫婦になりたくない、子どもを養うことに必死になり、いつのまにか五十代になっているのは嫌だ、と言う。ミシェルはそれは素晴らしいことではないかと言うだけで、彼の苦悩とは向き合わない。彼女にとって、結婚は善であり、疑う余地のないものなのだ。結局、ミシェルの求愛に応え、彼女を失いたくない一心で二人は結婚する。

これはハッピーエンドなのだろうか、と思ってしまった。

まず、ミシェルは結婚を理想化しており、自分のキャリアについて真剣に考えている様子がない。そして、結婚して家庭を作り子どもを産むことは素晴らしいと頑なに信じている。うーん、ミレニアル世代にしては、のんきな人だ。結婚をためらうアレンは大人になれない幼稚なだけの男なのだろうか。

そして、中産階級の白人の両親から生まれた白人の二人が結婚する。これって、白人の保守層が安心して鑑賞するために作られた映画なのだろうか。もし、1990年代に観たとしても、古臭く感じていたかもしれない。結婚啓発プロパガンダ映画だったら、「なるほど」とうなずいてしまう。

どうせなら、六十代夫婦の二組が人生に葛藤して、愛とは何か、生きるとは何かを徹底的に討論するようなストーリーでもよかった。大半の観客は、名優を見ること自体が目的だっただろうし。

結婚してくれなきゃ、やだ! と駄々をこねるミシェルにイマイチ、リアリティがなかったなあ。

ちなみにリチャード・ギアとスーザン・サランドンは『Shall We Dance ?』では夫婦を演じている。

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