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アカデミー賞2023のキー・ホイ・クアンで号泣する

2024年3月11日に第96回アカデミー賞の授賞式が行われた。この日は、いつも、自分の鑑賞済みの映画がどうなったのか、これから観たい映画が受賞するのかどうかの答え合わせをする日で、毎年、少しだけわくわくする日でもある。

しかし、まあ、今年は、助演男優賞のロバート・ダウニー・ジュニアがキー・ホイ・クアンを無視して、あれ? となり、主演女優賞のエマ・ストーンがミシェル・ヨーを透明人間のように扱うのを見て、さらにあれれ? となってしまった。

エマ・ストーンは擁護できる、という記事も散見されるが、ミシェル・ヨーは去年のオスカー女優であり、壇上のメインプレゼンテーターであることはわかっていたはず。違和感は残る。

結局、今年のアカデミー賞で可視化されたのはアジア人差別であり、そりゃトランプが再選しそうな国だけあるな、とシラケてしまった。普段の白人による有色人種に対する他愛のない差別が、図らずも衆目に晒されてしまっただけである、という指摘も多い。もちろん、どこの国にも人種差別はあるし、どのような人種も差別をする。ただ、あのような公の場でやってしまえる白人の特権性にビビっちゃうわけである。

そして、去年って、どんな感じだったのか。

この動画を見たら、仕事で疲れていることもあり、大号泣してしまったのだが、繰り返し再生しているうちに、あることに気づく。

アリアナ・デボーズが名前を読み上げる時点で、涙声なのである。(1:42あたりから)彼女は『ウエスト・サイド・ストーリー』で助演女優賞を受賞しているが、ラテン系の黒人であるため、多くの辛酸をなめてきたのだろう。かたわらにいるのは、『コーダ あいのうた』で助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーで、彼はろう者でマイノリティである。前年の受賞者二人が、キー・ホイ・クアンを祝福し、彼はそれにきちんと応えている。この三人だからこそ、ステージがものすごくエモーショナルになった、という側面はあるだろう。この映像が多くの人を泣かせているのは、アリアナ・デボーズの涙声が呼び水になっていることは間違いない。

オスカー2023はわたしが観たい、わたしが好きなアメリカで、オスカー2024は、そんなに手放しにありがたがる必要もないと思わせる暴力性があった。そんなわけで、ゴジラと宮崎駿の受賞もかすんでしまった。

キー・ホイ・クアンの受賞に、スピルバーグ、ハリソン・フォードも、大喜びした。それは彼が子役から、あきらめずに俳優に挑戦を続けて、五十代にしてカムバックしたからである。

『ホエール』で受賞したブレンダン・フレイザーも、2001年の『ハムナプトラ』からのカムバックだった。ミシェル・ヨーの場合はこれまでの艱難辛苦が報われるような瞬間でもあった。2023年はあまりにもドラマチックだった。

今年は王道を行くノーランのオッペンハイマー祭りで終わってしまった。でも、『オッペンハイマー』も観たら観たで、ボロカスに言ってしまうかもしれない。

わたしが見たいハリウッドとそうでないハリウッド、つまり、自分自身の過剰な期待と幻想を意識化できたことはよかったかなと思っている。




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