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#映画感想文207『ドリームホース』(2020)

映画『ドリームホース(原題:Dream Horse)』を映画館で観てきた。

監督はユーロス・リン、脚本はニール・マッケイ、主演はトニ・コレット。

2020年製作、113分、イギリス映画である。

主人公のジャン(トニ・コレット)は47歳。ウェールズの田舎で、スーパーとバーでパートタイマーの仕事を掛け持ちして、夫と両親の世話をして暮らしている。子どもたちはすでに巣立っている。そんな彼女は自分の暮らしに飽き飽きしている。

何か目標がほしい。朝、起きたときにわくわくできるような何かがほしい。

彼女は、以前は鳩レースで優勝したり、ドッグショーで賞を獲ったりとしていたのが、いつのまにかそういったことからは遠ざかっていた。

夫は牧畜業を営んでおり、家に帰れば牧畜チャンネルのようなものを文句を言いながらも見ている。仕事熱心ではあるが、妻に対する思いやりはあまり感じられないし、生活に刺激はない。

そんななか、ジャンがバーでビールを入れていると、ハワードという馬主になって失敗した男の話を耳にする。彼女は自分も馬主になることを閃き、一直線に進んでいく。

馬主組合を作り、牝馬を買って、サラブレッドの種付けをして、牡馬が生まれ、調教師を見つけ…と、彼女は周囲を巻き込んで、馬主として競馬に参加すべく、邁進していく。これが実話だというから、驚きである。

背景にある家族の物語も、淡々としているが興味深かった。愛情をストレートに表現できない父親は、まさにウェールズというかイギリス文化圏の特徴だと思われた。

また、主人公のジャンは17歳で妊娠と出産をしている。高校は中退しているのかもしれない。つまり、彼女が参加できるレースは限られていた。しかも、田舎で仕事も多くはない。しかし、そこでめげたり、自己卑下に陥るのではなく、自分にできる分野を見つけ、挑戦していく勇気が彼女にはあった。それこそが褒めたたえられるべき部分だと思う。

ご都合主義的な脚本だと非難されないのは、これが現実だったからなのだろう。

馬が走るシーンでは少し緊張して、手に汗を握ってしまった。これこそが映画の臨場感であり、醍醐味でもある。

ジャンが言う通り、人生には夢中になって情熱を捧げられる何かが必要なのだ。やっぱり、個人個人が何か小さなプロジェクトを抱えて、少しずつ前に進めることができたら、もっと幸福になれるのではないかと改めて思った。

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