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#映画感想文216『別れる決心』(2022)

映画『別れる決心(原題:Decision to Leave)』を映画館で観てきた。

監督・脚本がパク・チャヌク、主演がパク・ヘイルとタン・ウェイ。

2022年製作、138分、韓国映画。

ちなみにパク・チャヌクは本作で第75回カンヌ国際映画祭の監督賞を受賞している。

刑事のチャン・ヘジュン(パク・ヘイル)は、仕事のできる人だが、熱血漢ではなく、肉体派でもなく、かといって文系でもなさそうな、捉えどころのない人物である。

そんな彼が担当することになった事件は、山頂から滑落した男の不審死。容疑者は、その男の妻のソン・ソレ(タン・ウェイ)。中国からの移民で朝鮮族の女性であるため、韓国語には堪能ではない。刑事とのやり取りは、いちいち止まり、通訳ソフトなども頻繁に使われる。

刑事のヘジュンは取り調べをしているうちにソレに惹かれていく。死んだ夫は入国管理局の職員で、彼女の入国を許可した人物であり、結婚したうえ、自分のイニシャルを彼女の身体にタトゥーで刻んでいる。妻を所有していると思っているような、ヤバい男と暮らしていたソレの体には無数の痣があり、DVがあったことも明らかである。だからこそ、彼女が犯人なのではないかと疑念を抱く。

ただ、本作はミステリーではなく、恋愛を虚実入り乱れる幻想として描いたラブストーリーである。ヘジュンの気持ちが高まっているときの差し入れは高級寿司の弁当で、醒めたときの差し入れはアメリカンドッグで、そのわかりやす過ぎる行動に笑ってしまった。

ヘジュンの妻は、原子力発電所の最年少所長の女性で「原子力発電所は絶対安全で危険性はないんです」と言いながらも、夫の浮気を知ると、あっという間にほかの男に乗り換えてしまう。いや、もともと不倫していたのかもしれない。やっぱり、絶対に安全なんてありえないじゃないか。さらりと間抜けな男としても描かれている。

しかし、「崩壊」をスマホで調べるシーンにはちょっと違和感を覚えた。もちろん、象徴的な言葉としてソレが調べたことはわかっているのだが、「崩壊」はそれほど難しくはない漢語である。韓国語の語彙の半数は漢語である。つまり、中国人には、当然わかる単語だ。むしろ、ソレがわからない韓国語は、文法とか専門用語なのではないかと思われた。まあ、そこはツッコむところではないのだろうけれど。

パク・チャヌク監督のインタビューも面白かったので、ぜひ!

Amazon Primeでも配信中(2023年6月現在)

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