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映画『クナシリ』(2019)の感想

映画『クナシリ』を映画館で観てきた。監督・脚本はウラジーミル・コズロフで、製作はフランスのドキュメンタリー映画だ。

クナシリとは、北方領土の国後島のことである。ロシアが実効支配しており、日本人は強制退去させられた土地だ。領土を手に入れたロシア側はインフラ整備や投資はしていないので、島は荒れ果てている。入植者である旧ソ連の国々の人々は、貧しい生活を強いられている。

戦前や戦時中の日本人がいた頃の話や日本人の人々の写真が何度か挿入されるのだが、着物を着ていたり、ちゃんとした和室で暮らしているせいか、相対的に豊かに見えてくるから、不思議だ。

島民も日本人がいた頃のことを懐かしんでいるし、日本人が戻ってくれば投資や雇用が生まれるのではないかと期待している。

確かに、浜辺はゴミだらけで汚いし、耕作放棄地ばかりだ。湾は汚染されており、魚はおらず、貝を食べるのは危険だ、とおじさんは言っていた。(漁業権は日本にくれてやれ、日本人のほうが漁業をわかっているとも)

途中、博物館を作るという話題も出るのだが、二次大戦で使われていたソ連製の武器や戦車を展示するのだという。国に見捨てられた地域なので、セールスポイントが何もない。

ただ、そういった場所で生きていかなければならない人たちもいる。金持ちの中国人が土地を買って開発とかをしたら、一大観光地に生まれ変わるかもしれない。まあ、プーチンが許さないだろうし、日本政府も邪魔をするだろうけれど。

記号的な北方領土から、現実の生活をしている人々がいる島に印象が変化したことは大きい。

そういえば、先日、国後島から亡命を希望して泳いできた男性もいた。

難民には認定されなかったようであるが、帰るのも大変だろう。

経済合理性だけで、政治は進まないし、それだけで住民が動くとも限らない。しかし、ちょっとここに住むのは大変だろうな、と思わせてしまう島は政治的には失敗しているといえる。

そして、これがロシア語のブログだったら、大変なことになるのだろうな、と思ったりもする。

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