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#映画感想文198『グリーンナイト』(2021)

映画『グリーンナイト(原題:The Green Knight)』を映画館で観てきた。

監督がデビッド・ロウリー、主演がデブ・パテル。2021年製作、130分のアメリカ・カナダ・アイルランド合作で、原作がトールキンが現代英語訳した『サー・ガウェインと緑の騎士』だという。

A24初のダークファンタジーという触れ込みで公開された作品である。

アーサー王の甥のサー・ガウェインは、騎士になるべく旅に出る。彼が立ち向かう相手は、緑の騎士である。冒頭、クリスマスのパーティーにやって来た緑の騎士はガウェインに首を差し出す。ガウェインは無抵抗の緑の騎士の首を斬り落とす。そのシーンで、ガウェイン大丈夫だろうか、と不安になる。モンスターといえど、無抵抗の相手の首を斬り落とすのは騎士道精神に反しているのでは、という疑問が頭をもたげる。緑の騎士はその首を自ら拾い、一年後のクリスマスに再会しようとだけ言い残して、森に戻ってしまう。

ガウェインは不吉な匂いがぷんぷんする森の住人(バリー・コーガン)やキツネ、強姦されて殺された女性の幽霊、辺境の城に住まう夫妻などさまざまな人々と出会い、試される。試されて命の危機をその都度、乗り越えていく。

普通に鍛練を積むだけでは騎士にはなれない。いわゆる通過儀礼の物語なのだが、キリスト教、アーサー王の物語の知識が足りないので、何を象徴させているのかが、イマイチつかめなかった。

蓮實重彦(映画評論家)
ごくさりげなく見えながら実は凝りに凝ったファーストショットから、傑作の予感がフィルムの全域に漂う。実際、新鋭デヴィッド・ロウリーのこの新作は、21世紀のハリウッドが実現した最初の、ことによったら最後になるかもしれない傑作というほかない。

https://spice.eplus.jp/articles/310450

蓮實重彦先生が激賞しているので間違いのない映画だと思うのだが、翻弄される主人公というのは、見ているこっちを疲れさせる。

ただ、自分の死を覚悟すること、自らの死を受容することによって許される、という結末にはとても納得である。それが騎士に最も必要なものなのだろう。

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