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#映画感想文245『アフターサン』(2022)

映画『アフターサン(原題:Aftersun)』(2022)を映画館で観てきた。

監督・脚本はシャーロット・ウェルズ、出演はポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ローソン・ホール。

2022年製作、101分、アメリカ映画。

配給はA24だが、登場人物たちはイギリスで暮らしており、父親のカラムはスコットランド出身という設定で、監督自身もスコットランド出身なので、イギリス映画といったほうが適切かもしれない。

主人公のソフィは11歳の女の子。両親は離婚しており、普段は母親と一緒に暮らしている。夏休みに31歳の父親のカラムと一緒にトルコのリゾート地へ行く。ビデオカメラで、父と娘が互いを撮影している。そのビデオを20年後、31歳になって子どもを持ったソフィがビデオの映像と自身の記憶で補完し、彼女が知り得なかった父親の行動までもが明かされていく。

この父と娘の年齢差を考えると、ソフィは彼が20歳頃の子どもということになり、かなり若い父親である。彼は人生に行き詰っているが、娘に良い思い出を作ってやりたいと願っている。

確かダイビングのスタッフだったと思うが、「40歳になる前に家庭と子どもを持てて良かった。この仕事も悪くない」と言うと、カラムは「40歳なんて想像もできない。自分が30歳になったことにも驚いているんだから」と吐露する。わかる、わかる、わかる。なぜ、わたしはこの年齢まで生きているのだろう、生きられたのだろう、と考えたことは一度や二度ではない。自分で自分の年齢にギョッとすることは、あるあるだ。

カラムは経済的な困難を抱え、おそらくゲイであるため、抑圧を感じていたのだと思われる。それが自死の原因だと推測できるように作られているが、それだけではないだろう。他者が抱える闇を推し量ることは難しい。本作では残されたソフィが想像して、父親との関係を再構築していく過程が断片的な過去の映像で示される。

そして、11歳の女の子は性的には未成熟なのだけれど、性的な視線に晒されてしまう、ということも描かれていて、これは子どもを描いた映画でもあるなと思った。わたしはソフィの行動に何度もヒヤヒヤさせられた。

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