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♯123 日常で世界を変える(鴻野編)12月19日

 昨日、ケンカしたところより広い。ここで、何をするか俺にはわからなかった。それでも、強くなれるのであれば何でもいい。今の自分に何が足りてないのか?それがわかれば、また変わるのかもしれない。俺たちの真正面から風が吹き抜けていく。風も俺たちのケンカを後押ししてくれている。俺の目の前には、不動が待ち構えている。広い森の中で、不動が話しかけてくるのを見つめていた。不動は、とても鍛え抜かれた筋肉をもっており、着ている服が既にピチピチとなっている。不動は、木を切っていたこともあり、とても力強い目をしていた。その力強さをそのまま俺に向けてきそうで怖い。拳を握りしめ、話し始めた。

「鴻野、準備はいいか?」

すぐさま頷きながら返事をした。本気でやられねぇと、特訓とは言えやられてしまう。俺は、身を守るためにも両腕を体の前にする。そして、俺の前へと一歩ずつ近いてくる。

「いくぞ!!」

次の瞬間、不動は走り始めた。少し目を逸らした瞬間、不動の拳が空気を切り裂いた。ゆっくりと顎に攻撃されるのがわかった。あんなに素早い動きに加えて威力があったら、防げないだろ。

「お前、やる気ないなら帰れよ」

言葉がでなかった。ホントは、明後日の繭村の病院に向かうため、もっと向こうまで近くに行く必要があったのだ。だからこそ、中途半端なことはできないんだ。俺は、すぐさま立ち上がり反撃に転じた。しかし、不動を狙った拳はなかなか当たらない。そんなことをするから、すぐにカウンターをもらう。俺は、次から次へと攻撃を繰り出すが、不動の攻撃を防ぐことができない。そして、再びお腹に攻撃をくらった。この前より、さらに強くなっている。嘘か?現実をなかなか受け入れることができない。

「お前は、こんなものか?残念だな」

悔しいが何も言い返せない。俺と不動では圧倒的な差がある。特訓とかいう次元じゃない気がする。お互いに拳を交えているはずなのに、なんでだ。

「お前に足りないのは、技じゃない。頭だ!」

え?どういうことだ。今まで、散々頭を使ってケンカをしてきた。最初から負けるケンカは挑まないし、勝つための戦略ならなんでもたてた。その俺がなぜ無理なのか?

「頭の使い方。お前には、それが足りない。それは、戦略とかじゃない。考える過程だよ」

考える過程ってことは、勝つための過程ってことだろうか?俺は頭を働かせた。もし、それができたら俺も今よりも強くなれるのだろうか?俺も手に入れたい。

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