【ほぼ全文無料】オススメTCG『ドリームオーダー』の、説明書残念ポイントを分析してみる(ゲームのルールの伝言ゲーム)
こちらはアナログゲームマガジンの連載「ゲームのルールの伝言ゲーム」の36回目、かなり終盤まで無料で読めます。文字数は約5,300字です。
ドリームオーダーとは?
野球好き、昔はトレーディングカードゲーム(TCG)をのんびり遊んでいた家人が買ってきた、24/4/20発売の野球TCG、『ドリームオーダー』。
野球知識の乏しい自分なりに説明します。12球団=12種類のスターターデッキが販売されています。数個のスターターでは遊び尽くせないという、思いきった商法です。
TCGのため、ブースターパックも販売されています。こちらはセ・リーグ、パ・リーグの2種類、6球団混在です。1球団ファンはカードガチャ運を試されます。
2人プレー専用で、打撃側と守備側に分かれます。打者と投手のパラメータを比べて塁に進めるかの第一判定をまず行います。
打者が勝って第一判定をクリアしても、ダイスを二個振った数値が低いとアウトになってしまいます。その第二判定をクリアすると、出目に応じて出塁またはホームランです。
3アウトを取ったら打撃側と守備側を交代して3セット(イニング)続けます。得点の高いプレイヤーの勝ちです。
「遊びたいから説明書を読んでおいて」と言われ、一旦は流し読み。TCGはほぼ未経験なので、「しっくりと理解はできないけど、フローチャートも書いてあるし、遊んでみたら何とかなるだろう」と初プレー。
しかしプレーは難航しました……。
TCGとしてはテキスト量が少なく遊びやすいです。特殊能力があるカードでも数行です。
打者プレイヤーがミートか強振のどちらかを選ぶかという読み合いの要素や、ダイス運で逆転もある所がボードゲーム風で初心者向きです。
チームの垣根を越えた好きな選手でデッキを組むことも、制限の範囲内で可能です。まさしく「ドリームオーダー」。
なかなか楽しく好みのゲームです。ただ一点、説明書が残念なことを除いて。
前置きが長くなりましたが、今回は『ドリームオーダー』の説明書を語る回です。
説明書の特徴について
TCGのはじめの一歩、スターターデッキに同梱されている、A4サイズ2ページの「クイックマニュアル」を指します。
「クイック」と書かれていますが、他の説明書は同梱されていません。
公式ホームページ内の「遊び方」に、さらに詳しく書かれています。YouTubeの9分解説動画やQ&Aと合わせて読むことで、疑問のほとんどは解消しつつ遊ぶことができます。
すなわち、アナログの「クイックマニュアル」だけでは正しく遊ぶことが難しいのです。
これは、「特殊能力の裁定など、分からない細かい点は2人でルールを決めて、とりあえず一回通しで遊んでみよう」というレベルのプレーも難しいぐらいです。
何が問題かというと、「通しで1プレー遊ぶには情報が足りない、もしくは情報同士が繋げられていない」のです。
詳しく見ていきましょう。
説明書の画像をそのままアップロードするのは最低限とし、説明書の内容のブラッシュアップ版にあたる、「遊び方」の内容も適宜引用していきます。
1ページ目、内容物とアイコンの説明
1ページ目の構成はこうです。
本連載で何度も伝えているポイント、「内容物の詳細説明にいきなり入らない」に抵触しています。
ただ、かなり細かい内容に触れているわけではなく、A4サイズ2枚という制約があったのであれば、仕方ない部分もあると考えます。
ここで大事なポイントは、「内容物とアイコンの説明がここで書かれている」ということです。後述します。
1ページ目の気になった点
・番号の位置に違和感がある
①はマークの左に付けるのがベターです。 どこを指したマークなのか分かりづらいです。
⑥はマークで文字がつぶれています。
・エリアなど指し示す範囲が分かりにくい
⑥のベースエリアが、画像ではどの範囲なのか一見分からないと思います。黄土色のうち、メインエリアを除く箇所です。
これはチームカード画像の⑤も同様です。
中心に据えることで⑤の範囲を想像させますが、明確ではありません。
通常は、エリアを囲んだ上で囲みの外側に数字を付けます。枠のパワーを活用しましょう。
・得点欄について言及がない
プレイマット左辺が、得点を数えておく場所のように見えますが、定義されていません。
また、得点は10までマスがあるものの、11点以上になるかは書かれていません。
・メインデッキの作り方が否定形だけで表現されている
メインデッキについて、「【オーダーデッキ】【チームカード】【タイムポイント】を除いたカード」と定義されています。
「◯◯以外」という否定形は、どのカードを入れていいのかという明確な定義ではありません。
本ゲームは同じ選手カードが複数枚入っているスターターデッキです。うち1枚は、投手と打者として投げたり打ったりする役割としてオーダーデッキに入りますが、同じ選手をメインデッキにも入れていいのか迷います。
「残りの選手カードと戦術カード」という定義で良かったでしょう。
2ページ目、終了・勝利条件、ゲームの準備と流れ
2ページ目の構成はこうです。
⑥以外のルールに、色々なツッコミポイントがあります。
①終了条件と勝利条件
・3回裏が終わって同点の場合の判定が書かれていない
Q&Aでは、「お好きなルールで延長戦を行って大丈夫」と書かれています。しかし、勝敗部分を明確にせず、ハウスルールを入れない場合は引き分けもありうるとするのはTCGとして寂しいです。
②ゲームの準備
・図示と本文の間の、番号の対応がズレている
図でいうと③以降、本文の④以降と対応しており、ずれています。
……あるあるミスではあるのですが、わずか2ページの説明書で起こるのは確認不足が否めません。
・基本的な用語定義が不足している
手札は、「山札からカードを引きます。これを手札と言います」という表記で大丈夫です。
・アプリを使わない場合、ダイス2個と得点を示すためのコマ類が必要と書かれてない。
アプリの紹介はされていますが、必須という程度の表記ではありません。
・タイムポイントの残り2枚をどうするか書かれていない
タイムポイントカードは5枚あり、うち3枚をゲーム準備で手元に用意します。もう2枚はどこに置いておくのか書かれていません。
なお、ゲーム内でどう登場するのかは、ホームページを見ても、どう使われるのか分かっていないのでした。
③ゲームの流れ
分かりやすいデザインのフローチャートです。
・用語解説よりも、ゲームの流れを先に書いてほしかった
まず内容物一覧、次にゲームの準備を書いてほしかったです。
・「メイン・起動」の能力とは何なのか、アイコン説明にも書かれていません。
自分の扱ったスターターデッキには起動持ちのカードがなかったため、なおさら混乱します。
・打者を1番からメインエリアに配置することが、用語集の「打順」の項目を見ないと書いていません
・DPとAPを比べる方法はどこを見ればわかるのか、流れに書いてほしいところです。
・「選手の交代」とは何かが分かりづらいです。
具体的には1ページ目の「交代」の説明を見る等が書かれていないのと、1ページ目の表現は「交代」だけであり、色々繋がっていません
・投手の交代について、一投はしてから交代する旨の制限があるそうですが、書かれていません
・1〜2枚出す、は手札から何を出すのか、どういった組み合わせで出せるのかが明記されていない
選手カードと戦術カードの2種類ありますので、何も書いてないので自由に出せそうではありますが、片方を2枚出すことはできないのでは、と家人は思っていましたので、書いておいてほしいです。
・手札がゼロの場合にどうなるのか書かれていない
レアケースではあります。
④打者と投手の数字比べ、覚醒
④と⑤は重要なルールなのですが、曖昧な表記になっています。
・両者が同値の場合はどうなるのか、用語集部分にそっと書いてありますが、ここでは明記されていません。
「上回る」は解釈が分かれる書き方なので、「超える」を使うと良いです。
⑤サポート
・サポート例、どの例が打者側なのか投手側なのかが不明瞭です。さらに、中央のカード2枚は、ミートと強振、どちらを宣言した例なのかが一見分かりません。
・左から読んでいくレイアウトの説明書なのに、この部分は右から読ませており、視線の動きが不自然
・DPのサポート例は、APのカード上の色である赤ではなく、青い線や枠で囲むと分かりやすかった
・アイコン説明済のそれぞれの能力はいつ発揮するのか明記されていない どちら側から、どういう順番や制限で使うのかが書いてない
戦術カード、覚醒、サポート、基礎能力とあります。個々の能力説明は1ページ目に書いてありますが、使われ方が不明瞭です。
・打順9番がアウトになったら1番に戻ると明記がない
・そもそも、ダイスを振った後の打撃判定とは何かが分かりにくい。具体例がない。チームカードを見て判定することの明記がほしい
・出目補正があるゲームなので、出目合計が1や13の時の判定も通常書いてほしい
・3アウト後、ほか2枚の伏せカードをどうするか書かれていない
・ブースターパックに説明書がないため、わからないことが多すぎる
細かく色々
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