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【連載小説】螢惑守心の煌仙子【完結】

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十七年前、国に忠誠を誓い、命を懸けて護国のために戦ってきた常勝軍が、一夜にして壊滅した。  戦場はあまりに悲惨で、何かに食い散らかされた兵士たちの残骸だけが残っていた。  遺体は…
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#ファンタジー小説

第〇集:登場人物用語紹介(随時更新予定)

※こちらは小説【螢惑守心の煌仙子】の用語集です。 ※歴史上、実際にあった官職も書いてあり…

第三集:暗中模索

「さっきの女の子……、大丈夫かな」 「ねぇ、さっきの男の子だよ? 見てわかんなかったの?…

第四集:春和景明

「こちらに着替えてください!」  朝十時、新しい仕事先である蒐集屋敷『銀耀』へと出勤し、…

第五集:安穏無事

 舞慈山の麓にある樹海にそれはあった。  色彩豊かな布地が川の流れのように風に揺れ、家々…

第六集:畏怖嫌厭

「ここもなかなか……」  樹海の奥に聳え建つ青銅色の建物。  さきほどの村の家とは打って変…

第七集:凡聖一如

――誰ぞ、わしの聖域にズカズカと入りよるのは……。許さん……。許さん……。 ――あの女の…

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第八集:羞月閉花

 わたしは後方に飛びのき、斬撃を躱すと、すぐに前方へ飛び出し、大剣めがけて太刀を振り降ろした。 「うわ! なるほどね。これじゃぁ、まともな斬り合いはできないわ」  ジャリアが持っていた大剣は中心で分離し、切っ先は地面に刺さったままとなった。 「まぁ、糞蛇の牙じゃぁ、仙子族の仙術には敵わないか」 「知ってるんですね」 「もちろん。何人も殺したことがあるからね」 「そうですか」  ジャリアは「困ったなぁ。素手だと殺すの時間かかるんだよねぇ」と言いながら視線はずっとわたしを捕え続け

第九集:異国情緒

「おおお……、なんという栄え方をしているんだ……」  花丹国一の港町、長海。  現代語では…

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第十集:適材適所

「懐かしい、この感じ……」  第一階層は緑豊かな地下大熱帯森林だった。 「なるほど……。龍…

第十一集:因果応報

 灰が散り、声を持たない魔神蚕たちが、枝や葉と一緒に燃え落ちていく。  子供たちを救おう…

第十五集:焦熱地獄

 長海は今日も変わらずにぎわっている。  何かのお祭りでもあるのだろうか。店の軒先に、前…

第十六集:善戦健闘

「おお、平原だ。最悪」  あちこちで探索者の集団と鬼霊獣の戦いが繰り広げられており、地面…

第十七集:虎尾春氷

「痛い……」  時間短縮のため、魔窟を飛行で往復した結果、溶岩洞では蛙たちに狙い撃ちされ…

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第十八集:兄友弟恭

「兄上! いますか!」  わたしは帰宅後すぐに蜜柑堂へ行き、兄を探した。  清廉な薬の香りが漂う蜜柑堂は、様々な人々でにぎわっている。  赤ちゃんを抱いているご婦人や、杖を突いて足を引きずっている青年。  薬を取りにきたお使いの子供や、従者を連れた見るからに富貴な人。  薬舗を併設しているために、質の良い薬草などを売りに来る行商人も後を絶たない。  両親の弟子たちが感じよく対応しているのを見ると、ここは働く場所として素晴らしい場所なのだな、と、なんだか嬉しくなる。 「翠琅坊ち