わたしの純猥談

あたしが初めて愛したのは女の子でした。

小学5年生の春、転校してきた女の子は今まであたしの周りにいなかったタイプの子だった。
2つ隣の席に座ったその子は目が合うとにっこり笑ってくれた。元気でよく喋るけれど弱いところもあって、教室の隅で泣いているのを慰めたりもした。
転校してきて初めての友達があたしだったことがとっても嬉しかった。

中学校に上がってからあたしは周りに馴染めなくて、教室に行けなくなって、不登校の子が集まるちっちゃい部屋で、卒業するまで周りの目におびえて過ごしていた。
そんな間も一緒に帰ってくれたのが彼女だった。
あたしを見つけるといつも廊下を走ってきて思い切り抱きついてくるのが嬉しくて、とても可愛かった。

彼女は少し丸くて小さくて、いつも友達に囲まれてるクラスの人気者で、ひょろ長くて地味なあたしとは見た目も性格も真逆だった。
なんであたしと友達でいてくれるのか不思議で仕方なかったけど、彼女以外に仲のいい子がいなかったから段々依存していくようになった。

なんで今日は迎えに来てくれないの。
他の子とは遊ぶのにどうして。
彼氏出来たなんてあたし聞いてない。

そうやって少しずつ、でも確かに嫉妬が募って。
その頃にはもう彼女はあたしの特別で、自覚はしていなかったけど好きだったんだと思う。

高校は別々だったけど時々連絡を取って会っていた。
あたしが一年で高校を辞めてから始めたバイトが彼女のバイト先のすぐ近くで、よく会うようになった。

その頃だったかな。彼女があたしをお嫁さんって呼んでくれるようになったのは。
友達同士のノリみたいなものであたしも彼女を嫁って呼んで、キスしてプリクラ撮ったり手繋いで歩いたりしてた。
楽しかったなぁ。
気付いたら週に何日も一緒にいて、1週間会わないだけで寂しいねって言い合って、用事もないのにどっちかが会いに行ってた。

高校を辞めて半年くらい経った頃にあたしは突然東京に出てきた。誰にも何も言わずに。
彼女にも連絡しなかった。
東京へ来てひと月してからやっと返信した。
どういう話をしたのかは覚えてないけど、怒られたような気がする。どうして置いてくのって。
今思うとあそこからあたしたちは少しずつ何かがずれていったんだろう。

少し前に彼女と喧嘩をした。
彼女があたしの話をちっとも聞いてくれないから。
いつもあんた自分の話ばっかり。あたしの事興味ないなら関わらんで。って怒ってしまった。
大好きな人にごめんなさいを言わせてしまった。
本当に悪いのは、あなたを置いていったくせにいつまでも執着しているあたしなのに。

今はコロナで帰省することも出来ないから最後に会ったのは半年前になる。
彼女は相変わらず可愛くて強くて美しい。

あたしの嫁なんだから男が放っておくわけがない。
彼女のInstagramは彼氏のことで溢れている。
彼氏ができたことすら知らなかった。
きっとあの子の世界であたしが占める割合はそんなに大きくないんだろう。でもそれでいい。
あたしは彼女と同じ女だから、彼女を幸せにできるのはあたしじゃない他の誰かだから。

あなたがあたしに言う愛してるとは少し違うけれど、あたしもあなたを愛してるのよ。

あの頃も、今も、これからも
あたしの気持ちを伝えることはないけれど
心からあなたを愛してる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?