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大切なのは「体験」を通して選択するチカラ

5泊6日のサマーキャンプ!5日目は最後のタスクとして
奄美空港に降り立つ観光客向けに、
自分たちが作った環境保護のためのステッカーを配ること。イエナプランの基本活動には「対話」「遊び」「学び」「催し」があります。イエナプランスクールでは日々子ども達が学んだことを月に1回程度「催し」として発表の場を設けるのです。それは、学校内に地域の人や保護者に来てもらい、子ども達の発表という形だったり、(ミュージカルとか、プレゼンとか、)
また、子ども達が校外に出てやる催しだったりします。この催しを通して子ども達は社会とつながり、社会のシステムを学ぶことにもつながります。

5日目!人生初の空港での学び(しごと)

初めての奄美空港での学び(仕事)は自分達で奄美の自然界の生き物を描いた環境啓発ステッカーの配布。子ども達にとっては空港そのものが普段行き来するような場所ではないからそれだけでも緊張している。しかも知らない人たちに自分達が描いたステッカーを手渡しで受け取ってもらうという難易度の高い「しごと」をしなければならないのだ。

積極的に声をかける子もいれば、不安そうに様子を見ている子もいた。

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そのうち、何人かの子ども達が、「こんなふうに声をかけると受け取ってもらえるよ」と、経験からアイデアがでたようで、「受け取ってもらえるセリフ」が共有され出した。

こちらが、5日目に空港ロビーで子ども達が配布したステッカーだ。
4歳のれいくんは何故かうさぎというのが可愛いところでもある。子ども達は奄美に来る前に、奄美の鳥や海の生き物のことを調べて、それぞれとっても素敵なステッカーになった。

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積極的な子、照れ臭そうな子、不安そうな子、年齢に関係なく、それぞれの個性が出て見ていて楽しかった。

そのうちに、「奄美の自然を守る活動にご協力ください」といった感じのセリフをいいながら配布すると「ありがとう!」とか、「頑張ってね!」とか声をかけてもらうことが多くなった。もちろん急いでいるのか無視されることもあったが、子どもなりに環境客の状況を見ながら、相手を選び、手渡すタイミングや声かけを工夫して用意したステッカーは全て配布することができた。


イエナプランでは、「学び」のことを「しごと」とも言う。何故か?子ども達はやがて大人になり、社会に出ていかなければならない。そして必ず仕事をしなければならないのだ。ペーターセンは学校はそのための練習の場と考えていた。社会に出るための準備として体験を積む場所。自分の強みや弱みを知り、他の人と協力することで、1人ではできないことを協働により実現できるということを「学ぶ」のです。 

それは、イエナプランの創始者ペーターセンが、100年前にドイツのイエナ大学で「小さなイエナプラン実験校」を立ち上げた時の想いがあるからだ。彼は「人間の学校を創る!」という想いでイエナプラン実験校をスタートさせた。子ども達は人間として尊重され、社会に出ていける練習を「学校という安全な場で体験を通して学ぶのだ。

経済成長のためだけの教育?

当時、世界は、第二次産業革命による工業化社会に移行。農村から人々が仕事を求めて街に押し寄せてきたことで50年足らずの間に大都市がいくつも誕生するほどの人々の大移動が始まる。そんな中、労働者層の子ども達は劣悪な環境下でまともな教育を受けることもできず、同時に押し寄せた大不況からの2つの世界大戦。ペーターセンはこの大戦により3人の弟を亡くしています。そのような激変する社会を憂い、ペーターセンによる「人間のための学校構想」がイエナプランと言う形で立ち上がったのでした。ところが、その後、世界では、急速な工業化による経済発展に併せ、学校教育は「経済発展のためだけにある」といった流れが始まるのです。

社会や大人の都合で始まった学校教育システム

画一一斉授業は1人の教師により、40人程度の子ども達が先生から正解を教えてもらうと言う形のクラス。答えは大人が知っている。子ども達は何も知らない無知な存在だからと、知識を詰め込み、点数で評価する経済発展を見据えた教育が主流となった。その後の高度経済成長時代は「自分の頭で考えること」は余計なこととなり、多くの人々は労働者として、ベルトコンベアー的な「規格品」作りが主流の仕事となり「大量生産・大量消費」の時代へと大きくシフトしていく。そんな中で学校教育も、同じ教科書、画一一斉授業、自分の頭で考えることは「授業の邪魔」となり、子ども達は自分自身を確立することができず、競争社会の中で「規格品」のように評価される教育システムがはじまったのです。

イエナプランはオランダに渡り大きく動き出す。

欧米を中心に経済成長のための学校教育が進む中、オランダでも当時画一一斉授業による弊害「落ちこぼれ」の子ども達が続出し、教育界ではそのことを問題視する動きが始まっていた。ペーターセンは既に亡くなっていたが、オランダ女性スース・フロイデンタールは、ペーターセンの「小さなイエナプラン」を読んで感銘を受け、自国オランダに持ち帰り、熱心な普及活動を行った。その結果、現在オランダには200校以上のイエナプラン校が存在しているという。

イエナプランは理念。

イエナプラン教育はメソッドではなく、理念であると言われる。それはペーターセンが「人間のための教育を!」と、始めた志に多くの人が賛同しているからに他ならない。

イエナプランを実践する学校では「20の原則」を校内に提示しなければならないと決められており、その20の原則の最初に出てくる言葉はペーターセンの理念そのもの。

イエナプラン20の基本原則 どんな人も世界にたった1人しかいない人です。つまり、どの子どももどの大人も1人1人が他の人や物によって取り替えることができないかけがえのない価値をもっています。

イエナプランを知れば知るほど、学校教育は何のためにあるのか?ということを考えさせられるのです。今回のサマーキャンプでも私は子ども達1人1人の言動に、いろいろなことを考えさせられました。

子どもには社会を変えるチカラがある

植物は栽培によって形を変えられ人間は教育によって形を変えられる                    ジャン=ジャック・ルソー

このルソーの言葉は、性善説に基づいています。子ども達は全なる心を持っている。それが教育次第で善にも悪にもなるということなのだ。

3月、8月、共に、小さな海のイエナプランサマーキャンプでは子ども達を通して多くの気づきがありました。大人は子ども達のチカラをもっと生かして「社会を変える原動力」にしたほうがいいと思うのです。

まだまだ、イエナプランの奥が深くて学ばなければいけないことが多いのですが、「まずは一つ一つ体験的にやってみることです」と言われた言葉を励みに、来年4月を目標に子ども達のチカラを借りながら、体験クラスを重ねていきたいと思いました。

そして5日目の夜は保護者の方達と一緒にありがとうパーティー。ひとまわり成長した子ども達はグループごとに出し物を考えてくれ、楽しい夜が始まりました。 次回最終回に続く。

        

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