見出し画像

奄美大島逃亡記 vol.2

絡み合う木の枝、鳥や虫の気配、森は濃密な生命の息吹であふれていた。

しんと澄んだ空気。久しぶりに気温がぐっと下がった昨夜は、森の生き物たちも少し暖かい冬が来たと勘違いをしただろう。


ゆっくりと森の奥深くへ進む。絶滅危惧種に指定されているアマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、そしてケナガネズミ。奄美の固有種たちが姿を見せてくれた。

ケナガネズミに関しては、奄美大島、徳之島、沖縄北部にしか生息していないそう。つまり、3つの島が昔はくっついていたことを示している。

(びっくりするほど写真がヘタなのはご愛嬌…)


わたしが参加したのは、生き物たちを観察しに行くナイトツアー。小さい頃から昆虫を飼ったり父と一緒にクロアゲハを探しに虫取り網で走り回っていた私。珍しい生き物たちが奄美にいると聞いた途端、考えるよりも先に指が予約フォームを入力してた。

ガイドさんによると、普段はすぐに逃げてしまって写真もなかなか撮れないそうなのだけど、今日はみんな、私たちが通ってもゆっくりのんびり気ままにごはんを食べたりして過ごしていた。この人たちは襲わないな、と本能で感じたのか。


日中も、生命の息吹を全身に浴びた。

カヌーを漕ぎ、マングローブの中へと入っていく。満潮時にしか入れない場所。

マングローブは、"海の森"を表す言葉。ジャングルと同様に、マングローブという木は存在しない。これは地味に新しい発見だった。

本来植物は、海水を濾過することができないので枯れてしまうのだけど、マングローブを代表する種のヒルギやオルギの種は、海水を濾過できるように進化した。やがて東南アジアからどんぶらこ〜とやってきて、しぶとく居場所を探した。そしてたどり着いたのが、奄美だったんだそう。

流されやすく根を張ることが難しい川で、未来へと生命を繋げていくために、マングローブの種は木の上で養分をたっぷり蓄えて発芽する。

木から落ちたときに運良く干潮だったら、そのまま土に刺さって、水に流されないで済む。もし満潮でも、どこかの隙間にひっかかりやすい。だから、こんな見た目をしている。生きることへの意地を感じた。

これが種だとは…!

大自然が恵んでくれるマイナスイオンを浴びて、人間は自然の一部でしかないことを本能で理解した。


なんて力強いのだろう。


それは、森や林だけでなく、海でも同じだった。


ホノホシ海岸という南部にある地。サラサラの砂浜ではなく、丸みを帯びた石で岸が埋め尽くされた、少し変わった光景をしている。

この場所には神様が宿っているので、石を持ち帰ってはいけないという言い伝えがあるそう。夜になると動き出し、災いをもたらすとも。

強烈なパワーを感じた。霊感などはさっぱりないけれど、たしかにそこには"気"を感じたのだ。

奄美の自然は、とてつもなく力強い。

そして、人間はあまりに小さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?