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夫の話と愛情の匂い

休日のこと。夕飯を食べ終わり、夫とおちびは月曜日からの用意をしていて私は小説を読んでいた。そんな時、不意に夫が言った。
「そういえばめぐちゃんに、オレの自転車エピソード話したことだったっけ?」
「えっ?どうやろう。どんな話?」
聞き返したら自転車エピソードを話してくれた。まだ私たちが出会う前の出来事だった。私たちはよく二人で話して盛り上がることがよくある夫婦だけど、出会う前の夫の話を聞けるのは珍しい。昔語りは私の方がどうしてもしてしまいがちだ。だから夫が自分から過去にあったことを話してくれたことが嬉しかった。

嬉しかった気持ちを伝えておきたいな、と思って夫が忙しそうじゃないタイミングを見計らって「ぼうちゃんがお話してくれたの嬉しかった」と伝えると、夫はちょっと目をパチパチとさせて
「え?そう?」
と意外そうにしている。
「そうだよ、なんか珍しいもん。また話聞きたい」
これは本当にそう思うことだった。
夫はふんわりとハグをしてくれたので温かい腕に包まれながら夫の胸元に凭れて深く息を吸い込んだ。好きだ、この匂い。香水でもなくて柔軟剤の匂いでもない。おちびの匂いにとても似ている。
私はこれを愛情の匂いと呼んでいる。何の匂いでもないけど落ち着く。オーデコロンとか色々、最近になって若い時みたいに探したりしてたけど私はやっぱり愛情の匂いが一番好きなのだった。

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