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【更年期⑥通信】米国の更年期に関する調査から見えた、日本との共通点

不妊治療の福利厚生を提供している米Carrot Fertilityが、「職場における更年期障害」について、米国の40歳~55歳の働く女性1,000人に対し、2022年9月に実施した調査結果が公表された。

そちらの調査結果を見ながら、職場における更年期障害について、日本との共通点と違いを考えてみたので参考にしてほしい。

1.更年期障害のサポートは、医師・インターネット・友人・親族

【どのような方法で、更年期障害のサポートをしてほしいか】
・かかりつけ医・主治医:56%
・インターネット・掲示板:51%
・友人紹介:46%
・親族(母・姉):46%
・パートナー、配偶者:28%
・SNS:21%
・ニュース:17%
・職場の仲間:15%

上記の結果をみても、トップはかかりつけ医や主治医だが、同レポートによると、ほとんどの産婦人科医が更年期障害に関する特別なトレーニングを受けていない。
実際、産婦人科の研修医プログラムのうち、更年期ケアのトレーニングを提供しているのはわずか20%。ほとんどが選択科目となっているとのこと。

米国でも、医師にサポートしてほしいニーズはあるが、その体制が整っていない可能性が高い。

2.更年期障害で苦労した症状の1位は「ほてり」

身体的症状では、ほてり(78%)、睡眠障害(77%)、寝汗(74%)、体重増加または代謝低下(71%)。
感情的・身体的な症状としては、気分の変化(68%)、不安(62%)が最も多く報告されている。

「症状のデパート」とも言われ、さまざまな症状を引き起こす更年期障害だが、筆者がヒアリングしている限り「病院にいくほどではない」と放置してしまうのが現状なのかもしれない。

3.更年期は、働く女性にとって、最も困難なライフステージと回答

46%の回答者が「50代が最も困難な時期であった」と答えており、2位の20代(25%)を大きく引き離している。

回答者の70%が更年期を理由に転職を考えており、中でも47%がリモートワークやハイブリッドワークを検討している。また、5人に1人(19%)が更年期障害のサポートを充実させるために転職を検討したことがある。

特に非白人女性は、転職を検討すると回答する割合が多く、白人回答者の16%に対し、28%と高くなっている。

更年期は、管理職になる年齢と重なる上、子育てや親の介護なども背負う時期でもあり、更年期は職場やプライベートで深刻な問題に直面する。

筆者がヒアリングした更年期世代の女性は、「更年期障害もあり、さらに親の介護や仕事のストレスもひどくて退職した」と言っていた方もいて、更年期障害で休職や退職の裏には、複数の要因が絡み合っているようだ。

4.更年期障害に対する会社のサポートは限定的

更年期障害のサポートを、会社から全く受けていないと答えたのは59%。職場で更年期障害のサポートを受けていると答えた21%のうち、詳細は以下となっている。
在宅勤務やフレックスタイムの要望が、大きいようだ。

【職場における更年期障害のサポート・上位3位】
・在宅勤務、フレックスタイム:40%
・更年期障害の指導:36%
・カウンセリングによる精神的サポート:34%

5.更年期障害に対する福利厚生を評価するのは82%

どのような更年期障害の福利厚生が人気かというと、医療やサポート(88%)、カウンセリングやセラピー(79%)、サポートグループ(69%)、更年期のメンタリング(66%)、更年期対策室(58%)など。

米国と日本で医療制度は異なるものの、更年期障害の福利厚生を考える企業や事業者にとっては参考になる内容だと思う。

特に「更年期のメンタリング」については、更年期を経験した人が、現在更年期を迎えている人に、どのように乗り越えるかを手助けするものであり、今後求められる分野と感じている。

筆者も、すでに更年期障害を乗り越えた方から話しを聞いた際、「更年期障害の真っただ中には誰にも話せなかった」という意見をいただいた。
乗り越えたからこそ、伝えられるべきことがあるのではないだろうか。

6.更年期障害に対する手当を、会社が提供すべきと考える方は92%

【更年期障害に対する手当を、会社が提供すべきと考える理由】
・生産性の向上:62%
・仕事のやりがい向上:61%
・より良い職場風土:52%
・従業員の定着率向上:50%
・職場における公平さ:34%
・男女共同参画:32%

7.まとめ:働く女性に対する更年期サポートは米国でも日本でも不足

働く更年期世代の女性は増加傾向にある中、米国でも日本でも共通しているのは、「職場における理解が不足している」と当人たちが感じていること。

更年期の時期が、従業員にとっても、会社にとっても重要な時期であることを知ること。そのためにこのような調査結果を用いながら、数字とグラフで納得感を得ることが、必要だと感じている。