働くに関わるレジリエンスの伸ばし方:困難への対処法を学んで危機に備える
職場におけるレジリエンスの働き
近年は、VUCA時代とも呼ばれています。VUCAとは以下の言葉の頭文字をとった言葉で、技術革新の影響を受け、変化が早く、かつ、その変化が読みにくく、複雑で、行き先が不透明な状況を指すのに用いられています。
Volatility:変動性
Uncertainty:不確定性
Complexity:複雑性
Ambiguity:曖昧性
このような中で、「環境の変化に適応し,ネガティブな仕事状況に対処する個人の能力(NOE et al. 1990)」である、働く人のレジリエンスが重要視されています。
保険会社が介護事業も行うようになり、今まで金融業をおこなっていた人が、いきなり介護方面の職場に配置替えになりうるというニュースもありましたが、変化の激しい時代においては、今まで学んできた知識やスキルとは別の知識やスキルが要求される仕事をすることにになることも、少なくはないかと思います。こうした、変化の激しい時代に高いパフォーマンスを発揮する上では、レジリエンスが重要であり、実際に海外の研究ではレジリエンスがパフォーマンスに正の影響を与えることが確認されてきました(e.g. Cooper et al. 2019)。近年では、日本人を対象とした研究においても、レジリエンスがパフォーマンスに正の影響を与えることが確認されています(池田ほか 2020)。
職場でレジリエンスを高めるには?
上司がどのように部下と接することが、部下のレジリエンスを高める上で有効か、といったことに関しては、以前の記事でまとめたので、今回は、働く個人が何ができるのか、と言った視点から考察します。
レジリエンスの向上にとって重要な要素の1つに知識の獲得が挙げられています。例えば,平野(2017)は個人がレジリエンスを向上させる方法として、新たな知識の獲得を提案しています。また、MALIK and GARG(2017)の研究では、組織が学習の機会を創出するような学習文化が従業員のレジリエンスに正の影響を与えることを確認しています。学習をすると、職場での変化にうまく適応するための知識や柔軟性が養われるために、レジリエンスが高まると考えられています。
少し前に、困難の対処に関する学習とレジリエンスの関連について検討したところ、困難の対処に関する学習がレジリエンスに正の影響を与えることが確認されました。つまり、過去に逆境をどのように乗り越たか、振り返っる、職場の人と困難な局面をどのように乗り越えたかについて話す、困難な状況に備えて必要な知識やスキルを学ぶといった行動をよく行ったっ人ほどレジリエンスが高い傾向にあることが確認されました。
VUCA時代において、いつ大きな変化が起こるか予想するのは難しいかもしれません。けれど、日頃から、大きな変化や困難が起きたらどうするか、考え、学んでおくことはレジリエンスの獲得を助け、また、実際に大きな変化が起きたときにうまく対処するのに役立つかもしれません。
この記事の、もとになった研究はこちら
(山内研と株式会社マイナビの共同研究です)
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