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真の芸術の探求

                    平泉会機関紙 2005年特別号

 ダダ、シュールレアリスムは、それまでの芸術における美意識や価値をことごとく破壊することから始まり、デュシャンが「芸術が死んだ」と宣言してから1世紀が過ぎた。

20世紀は、戦争の時代で、日本においても戦争中伝統芸術及び西洋芸術は禁止され、さらに大戦の敗戦で、芸術どころでなく文化が向上していない。

更に戦後はアメリカ文化の影響がつよく、芸術においても現代アメリカが中心であり、その象徴であるポップアートは美術のなかに商業広告・漫画・量産品など日常にあふれるものを主題として持ち込み、従来の芸術概念を打破することをねらった現代芸術(アート)である。
「文化史上、最悪の影響を及ぼしたのは(ロックフェラーの)近代美術館で、ディーラー趣味、商業主義、腐ったジャーナリズムとの組み合わせ」(カーステン)。これは現代の日本においてもまったく同じで、商業主義のアートが都市生活に蔓延していて、最新建築による都市はとても住みにくく、精神の荒廃を助長している。

21世紀に入り社会は急速に変化し、世界のどこかで紛争が絶えずおきている。
そして日本国内においても犯罪多発で不安定な状態が続いている。こんな社会だから、芸術が育たないではなく、今こそ“真の芸術”が渇望されている時なのである。

「芸術は人間のいとなみであり創造であるから、その窮 極の精神価値は人間の持つ最高の価値でなければならない。
それは古来からその価値をみとめられている【真善美】以 外あり得ない。“”は芸術という仮象の世界で対象化さ れ得る。真とは、いかなる意味に於いても普遍的であり普 遍性を持つ。真の領域に入ることは叡智の働きが必要である。
”もまた芸術の究極的精神性になる。そして芸術 は社会の中に意味を持って作用するから美術にあらわれる 美や真や善は当然社会的効果を持つであろう。
”を知 覚し、これを体験へと深めることによって感覚的な美の中 に精神的な美が顕現してくるのである。」(芸術学 渡辺護)

21世紀の芸術は、一人よがりの主義主張で満足せず、また新しければいいと奇抜なことをせず、内在的象徴としての芸術の究極的内容は精神的でありその高次の精神的昇華とともに、普遍的な【真・善・美】を探求する美の求道者でありたい。

絵画の創作は、自然や人間の愛と美への過程で心の喜びであり、この喜びによる芸術活動により、人々の心を癒し生活に潤いを与え、平安な世の中にしたい。

NPO平泉会 審査員・理事 嘉藤 恵  

2023年平泉会選抜展 Megumi kato 作品

スウェーデンの森

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