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古典衣装考察1 エカテリーナII世

フランスで舞台衣装家をしています、megumi です。

舞台衣装家をどのように志し、渡仏し、どんな舞台を手掛けて来たか。

思い出しつつゆっくりと綴っています。

ずっとやりたかったこと


ずっと取り組みたかったことの一つに、服飾の歴史研究があります。

国家試験準備期間中、わかりやすい解説書がなくてとても苦労したから。

フランスの人たちはヨーロッパの時代劇を見て育っている訳ですから、見れば大体の時代がわかるので、私には大きなハンデが最初からあった訳です。

ヨーロッパの服飾の歴史だって、参考書は当然仏語なので、読めば分かる。

で、日仏で説明された解説書か辞書が欲しいなーと、いつも思っていた訳です。

日本にも、ない訳じゃないのはとある服飾専門学校の図書館を見せていただいた時に見つけたので知っていますが、どんなに探しても廃刊で買えませんでした。

ま、つまり、需要が無いのですね。
しかも、多分今ならちょっとググれば日本語でも見つかるだろうし。

あんなに素晴らしい蔵書がある図書館で、若い学生さんたちが読んでいたのはファッション誌。せいぜいアメリカやフランスの物。

勿体ないけどそれが現実。

ま、そんな訳で、自分の為と、数少ない古典衣装家を目指す後輩の方々の為、これから有名な登場人物をテーマに、少しずつおさらい&解説を始めてみようかと思い立ちました。

基本自分の為の作業なので、つまらなかったら飛ばして下さいね。

敬愛するエカテリーナII世



(イタリア旅行中に、たまたまやってたエカテリーナII世展のパンフレット)


今では日本でもエカチェリーナと表示されているのは知っていますが、もう子供の頃から植え付けられて来たお名前、どう頑張っても私にはエカテリーナとしか思えなくなってしまっている為、悪しからずご了承下さい🙏

なぜ敬愛しているのか?
それは、彼女が努力で全て欲しいものを手にして来た人だったから。
そこにつきます。

ヨーロッパでは映画やドラマにもなっているので、どちらかと言うと男好きとか夫殺しとかの悪名の方が高い気がしますが、その時々に必要だった人とお付き合いして助けてもらったのと、同時期にオーストリアに君臨していたマリア・テレジアのように、子供達を政略結婚させて助けられていた母親と、どちらが褒められた人生⁇

所詮は18世紀の政治家ですからね、その辺はね…

参考作品



日本では、アンリ トロワイヤの伝記とそれをベースにした池田理代子さんの漫画が情報源のほとんど(当時)でしたが、フランスに渡って、色々と読み漁りました。
本人や側近の回想記は特に細かい点の間違った解釈が修正出来て良かった。

(渡仏当時ですら、殆どが廃盤で古本屋を探し回って見つけた資料)

子供の頃の教育係が仏人だったので、その手記の多くはフランス語で書かれています。

中に多くある、今では使わない言い回し、間違いなのか古文だから今とは違うのかは、私には判断出来ませんが…

時代衣装考察

最初の写真で大帝が着ている、パニエが使われたドレス、こちらの解説は長くなるのでまた今度という事にして、今回取り上げたいのは、彼女がクーデターの時に着ていた、軍服。

夫ピョートル3世が、ロシア軍隊にプロシアの軍服を着せて侮辱していたのに対し、彼女はロシアの軍服を着て、ロシア軍隊の士気を上げています。

ちょっと考えれば分かりそうなものを、ピョートル3世はその身勝手さから、軍隊を敵に回してしまったのですよね。今思うと、多分発達障害的な何かを持っていたのでしょう。

こちらが、軍服を着たエカテリーナII世。


フランスに来て、直ぐに買いに行ったアンリトロワイヤの伝記。
もちろん、日本語訳も既に読破済みでしたが。


こちらで彼女が身につけているのが、
tricorne 三角帽子
le Justaucorps 1番上に着ているジャケット。現代のオーバーコートの原型。
la veste 袖の取り外しが出来るロングベスト。現代のジャケットの原型。
la culotte à pont 膝下丈のパンタロン
la chemise 胸元にフリル(jabot)が付いたブラウス
la cravate モスリンのネクタイ
les bas 絹の靴下(パンタロンのボタンで落ちないように留めています。)
les bottes ブーツ
les gants 手袋

こんな所でしょうか。

la vesteはずいぶん昔ですがサンプル作ってみました(写真右)。


私は地味目に作ってますが、エカテリーナII世のは金糸やモールで華やかに作られています。

左に写っているのは、その時代のコルセットのレプリカ。

また今度、解説します。

18世紀の衣装は今までにも何度も作って来ていますが、毎回下調べして、それでも新しい史実が見つかるくらい、奥が深いです。


(2019年に、オペラ座でもやりました。この時は衣装全てが白)

丁度、マリア・テレジアやモーツァルト、マリーアントワネットの時代でもあるので、今度はそちらの華やかな方を解説してみますね。

ちなみに、ミュージカルモーツァルトで"女帝様から貰ったジャケット"と言っているのは、上記のjustaucorps です。

貴族でもなく、実はテレジア女帝から嫌われていたモーツァルト一家が、金の刺繍の入ったjustaucorps を着るなんて時代が許さなかった筈なんですけど、この辺はまだ調べがついていないので、気長にお待ちくださいませ。

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