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培養肉業界で日本が発揮できる6つの強み|シンガポールに続こう

はじめに

筆者は培養肉業界におけるルール形成活動などを評価いただきForbes 30 Under 30 Japan 2020のLaw & Policy分野に選ばれたご縁で、様々な方に培養肉の面白さやルール形成活動について聞かれることが多くなりました。また2020年12月に世界初、シンガポールにてEat Just社の培養チキンの販売許可が降りたことで、培養肉の面白さを知りたいとお声かけいただくことが増えております。

培養肉業界におけるルール形成の面白さとは、培養肉分野が世界の注目を浴びている分野かつ、日本がその強みを活かして業界をリードするポジションになる可能性を秘めていることであると考えます。

本記事では、筆者の携わる国内における培養肉のルール形成に関する活動内容や、業界において日本が優位になることが可能と考える理由について、簡単にご紹介したいと思います。

現在の活動内容

筆者は培養肉業界にて、培養肉の製造や販売に関する基準づくり・政策提言などのルール形成を行う細胞農業研究会の運営や、培養肉の啓蒙活動に携わっています

細胞農業研究会は2020年1月に、培養肉を含む細胞培養技術を用いた生産活動(細胞農業についてルール整備を行う目的で多摩大学ルール形成戦略研究所により創設されました(座長:國分俊史、事務局長:福田峰之)。同研究会は現在、農林水産省フードテック官民協議会の細胞農業WT(ワーキングチーム)を兼ねています。

筆者は細胞農業研究会の事務局として、他のメンバーとともに、研究会登壇者のセッティングや参加企業のヒアリング、研究会がマイルストーンに掲げる政策提言や国内でのルールづくり等のドラフティング・まとめへの参画をしております。

また、細胞農業研究会の事務局広報委員長として、培養肉や植物性代替肉に関する世界のニュースをまとめた細胞農業ニュースレターを発行・SNS等で発信しています

個人でも微力ながら培養肉について啓蒙活動を行なっており、肉肉学会での公演、イスラエルの培養肉企業を招いた公演会の主催など、食にまつわる団体等を対象にした公演活動・イベント主催を行ってきました

本業は越境M&Aアドバイザリーファームのアナリストであり、将来的には日本の培養肉技術に関連する様々な企業の海外展開のお手伝いをしたいと考えております。

日本が培養肉業界で発揮できる6つの強み(個人の見解)

筆者は、日本が世界の培養肉ルール形成・研究開発・ビジネスのハブとなるポテンシャルを十分に有しているのではないかと考えます。

日本が培養肉業界をリードするためには、培養肉産業が日本の優位性を高める領域(1)と、日本の強みを脅かす領域(2)について最低限認識をし、国際的に進むルール形成議論に積極的に関与・アジェンダを発信することが重要と考えます。(1)と(2)について、個人的には下記の論点があると思います。

(1)培養肉業界における日本の6つの強み

1 - 「和食」や美食の国という世界的ブランド・発信力を保有
2 - 世界基準で高品質な肉細胞を作り出す畜産技術を保有(和牛など)
3 - 既存の食肉業界における有力プレイヤーの存在
4 - 培養技術力を有する有力プレイヤーの存在
5 - 培養肉関連のルール整備上有利な、国内法規制環境
6 - 民間企業、非営利組織、アカデミアが官民協議に多数参画

これらの強みは、培養肉に関するルール形成に積極的な米国やシンガポールに全く劣らないものであると個人的には考えます。

1 について、日本は「和食」という世界に通用するソフトパワーを有します。また、世界一ミシュランの星を獲得したレストランの多い国として有名です。

4 について、日本ではIntegriCulture(インテグリカルチャー)社日清食品ホールディングスなどが培養肉の研究・開発を進めています。また、食肉加工食品大手の日本ハムはIntegriCulture社に投資三菱商事培養肉スタートアップのMosa Meat社に出資、住友商事培養魚スタートアップのBlue Nalu社に出資東洋製罐グループホールディングスは培養エビスタートアップのShiok Meats社に出資するなど、様々な日本企業の関心度合いが伺えます(投資額は数千万円〜十数億円規模であると推察)。

5 について、日本は米国等と異なり、培養肉の生産・販売等の取り扱いについては、既存法にて基本的には対応可能であると言われています。

6 の例として、農林水産省の主催するフードテック研究会・官民協議会などが挙げられます。

(2)培養肉のルール形成に日本が関わらないことの2つのリスク

1 - 細胞培養を乱用することが可能なルールを形成され、ブランド和牛等の知財を侵害される恐れ
2 - 「高付加価値のお肉(ないしタンパク質源)」について再定義をされてしまう恐れ

2 は、お肉のサステナビリティを問題視する世界的な動きに伴うものなどが予想されます。

※本記事は2019年12月の外部講演に用いた資料をベースにしております

終わりに

以上をお読みになって、培養肉業界・細胞農業研究会への参加にご興味を持たれましたら、ぜひ筆者にSNS等を通じてお声掛けいただければと思います。また、他の視点もある、上の意見がずれているとお考えの読者様も、ぜひコメント・ご教示いただけますと幸甚です

培養肉が世界に注目されている理由培養肉のルール形成をする上での課題安全性ルールに関する今後の展望マーケットアクセプタンスにおいて重要であると考えることについては次回以降の記事にてまとめたいと思います。

今後とも引き続きよろしくお願い申し上げます。


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