【読書感想】カミュ著 窪田啓作 訳「異邦人」より
世界と自分が一緒に感じた「世界の優しい無関心」その言葉に私も救われた
どうか、あなた方の無駄な関心を私に向けないで欲しい
「関心」が自ら何らかの意図を持ちルムソーに絡まり付き、それを彼は合理的で在りさえすれば受け入れていた
ルムソー自身絡まれた事故だったと微塵も思わなかった
一見自分の意向など持ち合わせていないようなマリイやレエモンとの会話の中で彼はその都度取捨選択をしている事からも、一被害者では無い証明と思う
裁判の過程で周囲が勝手に決める「被害者」と云うカテゴライズに、勝手に決めようとする「殺害する真の動機」にルムソーは心底うんざりする
何か理由付けしないと気が済まない「世間の関心」は彼にとってどれほど煩わしかっただろう
死刑の確定後、人はいつか必ず死ぬし、それが明日なのか20年後なのかは大した問題ではない、もし別の選択をしていれば人生は全く違ったものになったが、自分は一つ一つを確実に選択し今に至っていると鉄格子の中で彼は思った
ママンが晩年感じた心の安寧を黄昏時の憂愁を、「世界の優しい無関心」を通して感じられた彼は確かに幸せだと思う
「不感無感」「心の空洞」と検事に糾弾されたが、それは罪なのだろうか?
それこそが人間性ではないだろうか
他人には到底理解し得ない深淵を、誰でも持ち合わせているのではないだろうか
仮に私があなたの深淵を覗いたら、あなたは驚き一歩引いて身構えるのではないか?
不用意に覗き込み踏み荒らすような「関心」より「優しい無関心」そんな心配りは持ち合わせていようと思う