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中学部発修学旅行ゆき

中学3年生の娘の夏休みが始まり数日が経った頃、学校で修学旅行の説明会があった。

3年前に行き先がディズニーランドから近畿圏内の近場に変更になった。みんな正直なところ少々ガックリ来ていて修学旅行の行き先は3年に一回見直しの機会が持たれると言うことを聞き、娘の学年はちょうどそれにあたるタイミングで中学3年生をむかえるため行き先がどうなるか、3年前には、それに期待やな、もうちょっといいところにならへんかな〜なんて親同士あつまると話が弾みその時に誰かがぽつりと言った。
「みんな揃って元気にいけたらいいよなぁ」
の言葉を思い出していた。

世の中は大きく変わり、去年1年間娘の学校でもあらゆる行事が中止、縮小、延期を余儀なくされていた。それは娘の学校に限ったことではなく、日本中の、きっと、世界中の学校で。
運動会、文化祭、お祭り、遠足、宿泊学習…学校行事はどれも毎年こども達も親の私達もとても楽しみにしていたもので、その中でも特別な、修学旅行。
小6、中3、高3の、親の手を離れて泊まりにでかけていくこども達は誇らしげだったり、どこか不安そうだったりして。

娘は医療的ケアの必要な重症心身障害児でお友達も同じような子達が多い。
その歳を、その日を、無事に迎えることが全然当たり前じゃない我が子達が親の手を必要とせずに先生達に車椅子を押されて看護師さん達に見守られて笑顔ででかけていく姿を見送るのは感慨深いものがあって、中には感極まって泣き出す親もいて「もう、何泣いてんのよ〜」
とか言ってちゃかす親の目にも涙が浮かんでいたりして。

そんな修学旅行、去年は時期をずらしたり、日程や行き先を変更したりなんとか開催できた学年もあったけれど、中止になった学年も残念ながらあった。

そして先日の今年の中学部の修学旅行説明会、どんな説明がされるのか、そもそも開催されるのか、日程は、行き先は、どうなるんやろう。ドキドキしながら学校に向かい、説明会のある会議室の前に着くと受付の横に置かれていたのが



「ちゅうがくぶ 修学旅行ゆき のりば」

と書かれたカラフルなバス停。
学校の先生が作ってくださったもので、出発日の朝学校に集まってバスに乗り込むときに置いてくれる予定とのことだった。

説明会では変更になった県内の行き先のこと、縮小になった日程のこと、しっかり練られた感染対策、もしも発熱者が出た時の対応、当日の着用した後のマスクの取り扱いについてまで、こまかくしっかりした説明がされた。
丁寧に話してくださる先生の横に座っている他の先生の表情もいつもより固い。
説明の最後はこう締め括られた。

「変更や縮小等色々あります。でも対策を打ってでも、なんとか修学旅行に行かせてあげたい、行きたいという思いです。」

説明会のあと帰り際に親同士自然に輪ができて
「絶対みんな揃って元気に行こうな。」
と言葉を交わした。
それから
「色んなことが落ち着いたら前みたいに、また絶対飲みに行こな…!」
とも誓った。
修学旅行が開催されるかは、結局その日が近づくまでまだわからない。
その日まで、きっとみんな元気で過ごすから。
もはや行き先はどこでもいい。日程も、なんでもいい。ディズニーランドは逃げないし修学旅行で行けなくたって、生きてたらいつかまた行ける。

今願うことはひとつだけ。
みんな揃って元気に修学旅行に行けますように。

いただいたサポートは娘の今に、未来に、同じように病気や障害を抱えて生きる子達の為に、大切に使わせていただきます。 そして娘の専属運転手の私の眠気覚ましのコンビニコーヒーを、稀にカフェラテにさせてください…