実録!モラハラサバイバー12
剣道防具事件
夫は床に物が置かれている状態を好まない。
それは、とっても正しい。床に物を放置するのは宜しくない。全く同感だ。しかし、ここにも注釈が必要なのが悲しい。「※但し、夫のカバン等、夫の私物が夫の椅子の周りに散乱しているのは除く」
自分の事は棚に上げやがって。とは、正直思う。が、自分が完璧じゃなければ文句を言ってはいけないとは思わない。だから、言っていい。
しかし、その事件は起きてしまった。三男が中学の部活で剣道を初めて半年くらい経った頃だった。
そもそも、兄2人に続き中学で剣道を始めた三男は、兄たちに比べられるのを嫌ってもあり、(もちろん日々の父親の言動から父を嫌っていることもありだけど)、試合を含め部活を父親に見学されることを、とても嫌がっていた。
それを知ってか知らずか・・・なにしろ、空気を読めない人なので本当に気にしていないのか、嫌がっているのを知っているからこそ、これ見よがしに父親としての権利の濫用か、夫は頻繁に三男の試合を見学していた。
「それでも試合会場まで車出しをしてもらって、試合見ないで帰れっていうのは、ちょっとないと思うよ」
嫌いなものを好きになれとは言えないが、だからと言って筋の通らない事、礼を欠くことはしなさんなと言い続けていた。しかし。
普段は学校に置いてある防具が、試合の後で我が家に置かれていた。それもリビングの床に。
そこへ、負のオーラ満載の夫が帰宅し、あれこれ難癖をつけた挙句、床に放置された防具という格好の標的を見つけて怒り出したのである。
「何度言っても床に物は置くしよーっ!」と怒鳴り、防具を思い切り蹴飛ばしたのだ。
大事な防具である。剣道では本来置いてある竹刀を跨ぐことも許されない。それを、事もあろうに蹴ったのである。
その時の三男の冷ややかな顔が忘れられない。既に怒ることも放棄した顔。
「あいつには二度と剣道を見せない」
とっても冷たい声で私に了解を取り付けに来た。
「うん。そうだね。それでいい」
そう答えることしかできなかった。
これ以上フォローすることは、私の筋が通らない。こども達に理不尽を押し付けることは出来ない。言ってることは正しくても、絶対にやり方が間違ってる。
「自分と、こども達との信頼関係をとる」
立て続けに事件が起きたこの頃、私はようやく、そう決心した。
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