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Kill Time

子が3か月のとき、たまたま同じ地域に住んでいた同僚と、近場の商業エリアで会うことになった。
彼は2児の父で、我が子が産まれる3か月くらい前に次男が誕生していた。

私は子が2か月になるかならないかのタイミングで、その地域に引っ越してきたので、正直あまり出歩いておらず、子と行けるスポットみたいなのも、あまり把握していなかった。

子育ての先輩として、同じ地域に住む者として、それまでLINEで色々アドバイスをくれた頼もしい方である。
我が子の誕生を喜んでくれ、会いたいと言ってくれている。有難い。

当日、特にどこに行くかは決めていなかったが、商業エリアのエントランスで待ち合わせをした。
早めのブランチでもするかな?と思いきや、同僚は子どもが遊べる遊戯施設に直行。私は初めて入ったが、同僚は馴れている様子。

施設内には色んな遊具があったが、子はまだ3か月ということもあり、特に何に興味を示すわけでもなく、ポツネンと周りを見回していた。
その間も、同僚は「可愛いね~」と言いながら、高い高いをしたり、手遊びをしたり、育児の先輩降臨といった感じで、あやし続けてくれた。

私は久しぶりに自分以外の誰かが子をあやしてくれているのを見て、嬉しくなり、束の間リラックスすることができた。
そんな時、同僚が何気なく「ここは子どもと時間を潰すのにはめちゃくちゃ良いですよ」と言った。

「時間を潰す」

この言葉に妙に引っかかりをもってしまったが、何も突っ込まず、会話を続行。そのまま制限時間までたっぷり遊んで、いよいよランチとなった。

商業施設だけあって、最上階にはフードコートがあり、子連れで大賑わいだった。席を確保して、お互い食べたいものを注文。子はまだ頭がぐらついて、食事用の椅子に座れないので、抱っこしたままの食事となった。

最近の仕事のことや他の同僚の近況などをひとしきり話したあと、「●●はあまり知られていないお花見に凄く良いスポットですよ。」など、同僚は新参者の私に向けて、その地域のおすすめスポットをたくさん教えてくれた。

そして、またしても「子どもと時間をつぶしたいときは●●がいいですよ」
の一言…英語にするとkill time….

(私は時間を潰したくない、むしろ子どもとの時間を何十倍にも増幅させたい)
子どもがほしくて仕方なかった新米保護者の私は、心の中でぼそっと呟くしかなかった。

帰りがけ、最後の最後まで子をあやし続けてくれた同僚に感謝をし、次はお互いの子どもを連れて動物園に行こうと約束をして別れた。

半日同僚と過ごして、彼は子どもと接するのが大好きだし、私のように悪い意味で「時間を潰す」という言葉を捉えているわけではないことは確かだった。

でもいつだって、私は言葉の端々が気になってしまうのだ。
私には、子と潰したい時間なんてない。

子との時間を目いっぱい楽しみたい。
それでいい。






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