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マーライオンと子トラ

誰だ?「赤ちゃんはまだ昼夜の感覚がないから、時差ボケもそんなにないわよ」なんて言っていたのは。

2022年11月のとある日、午前11時発の飛行機に搭乗し、日本を発った。東京とニュージャージーの時差は14時間(サマータイムだと13時間)。13時間ほどのフライトで午前10時位にこちらに着く。
つまり、半ば徹夜明けのような状態で一日を過ごすことになる。

フライト中はかなり順調だった。息子は快便(重要!)。バシネット(飛行機についている乳幼児用のカゴ)でこそ寝なかったが、終始夫の膝でおもちゃと戯れるか、爆睡していた。私達は短い睡眠を交代でとり、着陸を迎えた。

無事にホテルに着き、夫は会社に車を取りに行き、取り急ぎ必要なものを買い出しに出かけた。
キッチン付きのホテルだが、さすがに初日に自炊する気持ちにはなれず、スーパーで買った簡単な惣菜もので食事となった。

この時すでに18時を回っていたが、二人して早くも眠気はピーク。
先に音を上げたのは夫だった。

それもそのはず、夫は比較的時差ボケになりやすい上に、息子を抱っこする私に代わり空港のドでかいカート丸々2つ分の大量の荷物を空港から車へ、そして3階のホテルの部屋までえっちらおっちら運び、疲労困憊だったのだ。

彼は惣菜を口にする元気すらなく、シャワーを浴びて床に就いた。私も息子を寝かせて、21時頃にやっとの思いでベッドに飛び込むも、それは長い夜の始まりに過ぎなかった。

ほぼ昼夜逆転で迎えた夜に、0歳児がこれまで通りに寝られるはずがない。早々に23時頃に起き、2時のターンに至ってはお目々らんらんで寝る気配すらない。
瀕死の状態なのにふにゃふにゃと起きようとする夫を制し、一人居間でだっこ紐をしてぐるりぐるりと2時間ほど歩き回る。やっと寝たと思ったら再び早朝に吠える吠える。

息子は生後2ヶ月頃から夜に起きる回数は大抵一度。生活リズムも規則正しく、入眠も比較的スムーズで、寝ないと生きていけない親としてはかなり有り難かった。
私達夫婦は夜中は二人で起きて対応する。夫がオムツを替えて、私が授乳と分担しているのだ。二度息子が起きた日は二人で「今日は多かったね」なんて会話をする。

普段の夜間対応が大分楽なだけに、この夜中の攻防戦は一発でクリティカルヒットとなった。

朝復調しはじめた夫とは逆にグロッキーな私。そんな私を尻目に夫はセットアップのために出社。その間だるくても一人で息子を見なくてはいけない。

だるさは夕方にピークを迎え熱が38度に。どうやら胃腸も山根モードになってしまった。(ちびまる子ちゃんに出てくるキャラクターで胃腸が弱い山根くんに例えている)
今度は私が食事をすることが出来ずに、帰宅した夫に息子の世話をバトンタッチ。そして夫が息子をお風呂に入れているときに気持ち悪さはクライマックスに。

ヨロヨロと台所の流しに辿りついたその時、盛大に胃から大波が押し寄せてきた。放物線を描きながら湧き出るソレを、人は思い切り戻すと鼻からも出るのだなと意外にも冷静に見ていた。
ディスポーザーがある流しで本当に良かった。

サッカー好きの夫に「槙野になった。」と報告すると、流石にまずいと思ったのか、その日は使い物にならないマーライオンに代わって吠える子トラの夜泣き対応をしてくれた。

夜中の3度起きと、2時ターンのらんらん君は数日続き両親を悩ませることになる。その後しばらく2度起きが続き、元通り1度起きに戻ったのは約二週間後のこと。

赤ちゃんの時差ボケもなかなか壮絶である。


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