映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場 (Tuntematon sotilas)』の感想。

日本語だと『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』
爆音が苦手なので基本的に戦争映画は見ないが、フィンランドの人にオススメされたので見てみた。

普段戦争映画は見ないといいつつも別に戦争そのものに興味がないわけではない。
祖父は海外に出征してるし、祖母は原爆の目撃者なのでそういう経験者からの直接の情報と、メディアでよく見るパターンの戦争描写はなんとなく理解している。

海外の戦争ものの映画はだいぶ前に『プライベート・ライアン』を見た以来だ。内容もあまり覚えていない。街が壊れゆく土煙とか爆音の記憶しか残っていない。

『アンノウン・ソルジャー』はフィンランドとロシアの戦いを描いている。
映画の中でちょくちょく戦況を説明してくれる地図とナレーションがとても親切だった。

ー 軍へと旅立つ描写。
子どもの頃、日本の万歳三唱の出征シーンを見て感じた違和感が、この映画では(もちろん)なかった。本来の出征の在り方ってこれだと思った。
大事な人と大事な残り時間を過ごすこと。

ー 人間味ある仲間たち。
上下関係の文化がない国の軍隊はこうなのか!少し新鮮だった。日本の軍のを見ていると一体何が敵なのか分からなくなる。

ー すごくすごく綺麗な景色。
湖、森、麦畑。戦争映画でこんな綺麗な映像を見たのは初めてだった。この景色を守るために戦っていた当時の人の気持ちがよく理解できる。
国のために戦う兵士たちと一言に言っても、国によって守るべきものが異なることを知った。

爆撃で木が倒されるシーンでは『もののけ姫』のでーだらぼっちが頭をよぎった。


ー 俳優の顔を知らないこと
自分はまあまあ歳だし、映像の関係の仕事もしてたし普段見る映像が知らない顔だけで構成されているものってなかなか無い。
だが今のところ自分がフィンランドの俳優さんで確実に顔が分かるのは『かもめ食堂』のマルック・ペルトラぐらいだ。知らない顔が多いので邪念なくストーリーに入れてよかった。
この映画で唯一知った顔は歌手のRobinだった。それはそれで一人でも知った顔がいて嬉しかった。


ー フィンランド語
ごく簡単な単語なら聞き取れた。戦闘しながらのセリフは多分日本語でも聞き取れないと思うのであまり熱心に聞いてないが、唯一ちゃんと聞き取れて感動した単語、「odotan」!男女が戦争映画に出てきて女性が軍へ行く男性に言う言葉といえば!まさにそのシチュエーションで一番大事な単語を聞き取れて自分は感動した。満足しすぎて後の会話の記憶が飛んだ。
製品版にはフィンランド語字幕入れてくれないかな...そしたらフィンランド語音声×フィンランド語字幕で鑑賞したい。


ー サウナ
夫婦でサウナに入り、妻が夫の体を葉っぱで叩く。これを見て、もし日本だったらお風呂で妻が夫の背中を流す描写になるんだろうか?なんて勝手に想像してみたりした。


ー 戦車が怖すぎる
それまでの一人一人の涙ぐましい戦闘シーンをかき消すような戦車のインパクト。戦車の最強感が半端ない。戦車というものが本来そういうものなんだろう。まるで戦車そのものがロシアのように思えてくる。すべてを飲み込むようなキャタピラの動き。あいつが出てきたら逃げるしかない。それでも必死に立ち向かった人たちの姿があった。怯えながら近づいて行く緊迫感が伝わってくる。

戦車では陸続きの国同士の戦争の恐ろしさを感じた。
ふと昔韓国で見た戦車の進行を遅らせる装置を思い出した。時間稼ぎにしかならないと言っていたが、時間稼ぎでも出来るならまだいいのか...となんだかつらい気持ちになったのを思いだした。

写真撮った気がしたので探したらあった。たしかこの真ん中部分を爆破して道路を封鎖させると言っていた。

画像1

こういう装置は活躍する日が来ないのが一番いい。


ー 撃たれた兵士。
撃たれた兵士が仰向けに倒れて目線が上になる。ふと絶命しかけの兵士が何かを見る。そして映像は彼が見てる景色になる。おそらくそれは犠牲になった兵士たちが見たものと同じ景色だ。彼らは森を見ながら亡くなった。
もしかしたらこの映画の原作となっているVäinö Linnan の著書の中で、そんな描写があるのかもしれない。自分はこの作品をぜひ読みたいと思った。どう描かれているんだろう。
フィンランド語を勉強する目的がまた一つ増えた。嬉しい。


ー 題名について
“英雄なき”?
みんな英雄だった。



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