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『若く逝きしもの』を読んだ。

超高齢化社会と言われる日本。
テレビが豪語する“人生100年時代”とかいう言葉を本気で信じている人たち。
でもその一方で地震、津波、事故、戦争などで年齢に関係なくある日突然人生が終わってしまうという世界線が私たちのすぐ隣り合わせにある。

この物語に出てくる人物すべてが年齢を明かしているわけではないが、なんとなく年齢が分かるように描かれている。
その年齢の描き方がとても鮮やかだったのが印象的だった。
若い人の描写はとても瑞々しく、年配の人にはその人生の年季を感じさせる重厚感。

そしてこの物語全体を通じて感じるのはフィンランドの四季の移ろいの美しさと、人の人生の移ろいの美しさがシンクロしたかのような雰囲気。

また1953年当時の言葉遣いをほぼそのままにしているというのもすごくよかった。
中世や古代の話であったら現代の言葉遣いでも読み手である自分は“その時代の話”という切り分けがはっきりできるので違和感がないが、
この物語は今から100年ぐらい前のやや近い昔の話なので油断すると現代の話のように感じる瞬間がある。それでも現代の超高齢化社会の事情とはだいぶ異なる。
自分が勝手に現代の感覚で読み進めてると、古い言葉遣いや今ではあまり見かけない表現が交通整理の役割をしてくれて100年前の世界に連れ戻してくれた。

言葉は変わっていくものなので、きっとこの本はこれから先に1900年代前半の言葉を研究しようという人にとってとても価値のある本になると思う。

この物語は長い歴史の中のほんの一部の一家族の話を切り取ったに過ぎない。
おそらく人はこうやって命を繋いできて、このようにこの世から去っていったんだろうと思った。

なんだかいろいろ人生について考えさせられる本だった。与えられた時間を大切にしようとも思った。そしてやっぱりフィンランドに行きたくなった(最後はそれか!)

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