免疫寛容について

台風7号が接近中です。
15日に紀伊半島に上陸して、近畿や北陸を縦断する予報です。
天気予報に目を通し、十分お気を付けください。

なんとなくWHOの記事を斜め読みしていると、
Immune imprinting(免疫寛容)の言葉が出てきて、驚きました。
抗原原罪(Original Antigen Sin)ともいいます。

ものすごく,
かいつまんで言うと、
ワクチン繰り返して打つと効きにくくなる現象ですかね。

これまで、コロナワクチンでは、
おきないといわれてましたね。


Statement on the antigen composition of COVID-19 vaccines
WHO. 18 May 2023.

COVID-19ワクチン組成に関するWHO技術諮問グループ(TAG-CO-VAC)は、SARS-CoV-2の進化がCOVID-19ワクチンの抗原組成に与える影響を評価し、将来のCOVID-19ワクチンの抗原組成に変更が必要かどうかについてWHOに助言するため、定期的な会合を継続している。

2023年5月現在、XBB.1の子孫系統が世界的に優勢である(すなわち、XBB.1.5、XBB.1.16、XBB.1.9)。XBB.1.5およびXBB.1.16を含むXBB子孫系統は高度に免疫回避的であり、XBB.1.5は現在までに中和抗体からの免疫逃避が最も大きいSARS-CoV-2亜種の一つである。

XBB.1.5は、ワクチンによる中和抗体が有効でないようです。

ワクチンを2回、3回、4回接種した人、あるいは2価(BA.1-またはBA.4/5-を含む)mRNAワクチンのブースター接種を受けた人の血清は、ワクチンに含まれる抗原に特異的な抗体価と比較して、XBB.1子孫系統に対する中和抗体価がかなり低い。
SARS-CoV-2感染によるハイブリッド免疫のある人
は、感染の証拠がないワクチン接種者の反応と比較して、XBB.1子孫系統に対する中和抗体価が高い。
以前に遭遇した抗原に対するB細胞の記憶想起応答が新しい抗原に対する応答を低下させる現象である免疫寛容(immune imprinting)
が起こっている可能性を示すin vitroの証拠がある
。しかし、これまでの観察疫学研究に基づくと、臨床的な影響は不明なままである。
ワクチンメーカーがTAG-CO-VACと秘密裏に共有した前臨床データによると、XBB.1系統を含む候補ワクチン(XBB.1.5を含む)を接種すると、現在承認されているワクチンと比較して、現在流行しているSARS-CoV-2亜種に対して高い中和抗体応答が得られることが示されている。

ワクチン複数回うっても、XBBに対する中和抗体は十分にできないそう。
(恐らくXBB対応ワクチンでも、武漢型の抗体ばっかりできるのでは?)

その原因として免疫寛容が起こっているかも(in vitro:実験室レベルで)。
そもそも、データって秘密裏にやりとりするものなのでしょうか?

Immune Imprintingに関しては、
以下の論文が詳しいのですが、
ちょっと難しいです。

Immune Imprinting and Implications for COVID-19.
Vaccines. 2023 Apr; 11(4): 875.

免疫学的記憶は、病原体に対する長期的な防御において極めて重要である。逆説的だが、これは有益でもあり有害でもある。あるウイルス株によってプライミングされた記憶反応は、一定レベルの既存の交差反応性免疫につながる。記憶応答は、その後の変異株によって引き起こされる重篤な結果に対する防御をもたらすかもしれない。しかし、特定の条件下では、一次ウイルス感染(最初の感染)によって誘導された高い親和性と特異性を持つメモリーB細胞(免疫細胞)は、その後の新種だが関連性のあるウイルス(変異ウイルス)の感染に反応するB細胞の発達を阻害する可能性があり、これは免疫刷り込み(Immune imprinting)と呼ばれている。


(a) ワクチン接種またはウイルス感染による記憶 B 細胞の活性化。
ワクチン接種や感染によってウイルス抗原にさらされると、胚中心が形成され始めます。 高親和性 受容体が発現した最適な B 細胞が TFH 細胞の助けを借りてクローン増殖に選択され、長期記憶 B 細胞と形質細胞に分化します。 一部の B 細胞は、二次リンパ器官の濾胞外部位で形成される結合親和性の低い短命の形質細胞に急速に分化することができます。

(b) 体液性免疫に対するImmune imprintingの影響。
後続のウイルス変異体の存在下では、祖先ウイルス抗原への曝露後に以前に記憶細胞を生成したリンパ節は、ウイルス変異体を標的とするB細胞と比較して、祖先ウイルスに対する抗体を発現する記憶B細胞を相対的に多く産生する傾向がある。

ややこしいですけど、
リンパ節などで未感作の免疫細胞(B cell)がウイルスやワクチンで感作され、免疫を誘導します。
次に、ちょっとだけ変異したウイルスやワクチンに暴露されると、
変異ウイルスに対応する免疫ではなく、
最初のウイルス(武漢型など)に対応した免疫細胞が増えます。

二価ワクチンを受けたグループは、元のワクチンで追加免疫したグループと比較して、Omicron BA.1 変異種に対して 1.6 倍高い 中和抗体 を生成し、BA.4/5 変異種に対して 1.4 倍高い 中和抗体 を生成した。 したがって、ヒト臨床試験のデータによれば、二価のオミクロン適応mRNAワクチンは、免疫インプリンティングの影響も受けているようだが、現在流行しているオミクロン変異体に対する中和抗体応答の誘導に関しては、プロトタイプのmRNAワクチンよりわずかに優れているだけである。
2022年8月31日、米国食品医薬品局(FDA)は、モデルナとファイザーの二価mRNAワクチン製剤(半分は祖先株用、半分はオミクロンBA.4/5)を単回追加接種として使用することを認可した。 また、米国人口の約 12% が二価 mRNA ブースターを受けた。 注目すべきことに、二価mRNAブースターを受けた被験者に関する一対の研究から得られた最近のデータは、二価mRNAワクチンは一価ワクチンと比較してBA.4/5に対する優れた中和抗体応答を誘発しなかったことを示唆しており、これはおそらく免疫力に起因すると考えられる。

Immune imprintingによる負の変調を克服するには、さらなる新型コロナウイルスワクチン戦略を開発する必要があるかもしれない。 適切に設計された変異種の免疫優性 RBD タンパク質で免疫を強化したり、ワクチン接種の間隔を長くしたりすると、体液性免疫が新興 VOC の重要な RBD エピトープに偏る可能性がある。

スパイク蛋白は、
受容体結合ドメイン(RBD)およびN末端ドメイン(NTD)などからなっており、NTDに関する抗体は感染増強抗体と関連すると言われてます。

ようやく、認可された国産の第一三共のワクチンは、
RBDを標的としたものですけど、
武漢型なので使えないというww。




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