コーニス症候群について

今朝は、ちょうどよい気温で、すがすがしい朝でした。
昨日は、千葉にある東京ドイツ村に初めて行ってきましたが、
予想外に広大な園内で、長閑な時間を満喫できました。


先日、yahoo newsで気になる記事がありました。

コロナワクチン接種後に死亡「救命できた可能性否定できず」 事故調査委員会が報告書を公表 愛知・愛西市。

9/27(水) 9:54配信。

集団接種会場で新型コロナの4回目のワクチンを接種した飯岡綾乃さん(42)が、経過観察中に体調が急変し、搬送先の病院で死亡しました。今回の事案ではアナフィラキシーの治療薬であるアドレナリンの投与は行われていません。

これだけみると、
なんだかよくわらかないけど、
医者がアドレナリンを使わなかったのが悪い、
でおわってますけど、実際の現場の様子とかはわかりません。

m3.com ニュースには、詳しく書いてありました。
ワクチン接種後死亡の42歳「躊躇なくアドレナリン筋注すべきだった」
レポート 2022年11月17日 (木)

咳の症状が認められてから約4分後に医師が呼ばれ、その時には既に顔面蒼白、呼吸苦があり、血中酸素飽和度が60%に低下していた。その時点では、病態を判断する間もなく、女性は泡沫状の血痰を大量に排出し、意識レベルが低下。呼吸停止、心停止となったため、医師は直ちに心肺蘇生法を開始した。静脈確保を試みるができず、アドレナリンの静注はできなかった。死亡後、病理解剖が実施されておらず、最終的な病態解明には至らなかった。女性は、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群といった基礎疾患を持っているだけでなく高度の肥満であった

アナフィラキシーといえば、
「最初は不安感が多く、次いでチクチクした感じと、めまいが起こり、
 全身にかゆみやじんま疹、腫れが出たり、喘鳴や呼吸困難が起きたり、失神したりします」というのが多いかと思います。

泡沫状血痰といわれると、心疾患による肺水腫が一番に思い浮かびます。
(急性心筋梗塞=>急性肺水腫)
病態がよくわからない状態で、予期せず亡くなった場合は、
病理解剖もお勧めしたほうが良かったかも。

救急医療界隈では、
ちょくちょく話題にでるようですが、
コーニス症候群というのがあります。
おそらく、通常の臨床医ではなじみが無いと思われます。


SARS–CoV–2ワクチン接種によるKounis症候群の1例.
日本救急医学会雑誌. 
Volume 32, Issue 11

97歳の女性。特別養護老人ホーム入所中で,ADLは車椅子。かかりつけ医で1回目のコミナティ筋注®を接種して数分後から咳嗽および喘鳴が出現。アドレナリン0.3mg筋注を3回施行されて症状は改善し,特別養護老人ホームで経過観察をした。翌々日の採血検査でWBC 16,400/µL,CK 653IU/Lと高値であることに加え,12誘導心電図で異常を認めたため当救命救急センターに紹介。非ST上昇型心筋梗塞NSTEMI(non–ST–elevation myocardial infarction)と診断した。心臓カテーテル治療の適応であると考えられたが,患者および家族が積極的な治療を希望しなかったため,血小板薬2剤併用療法を中心とした保存的治療を施行した。その後も胸部症状出現はなく心筋逸脱酵素も低下して第4病日に車椅子で退院となったが,第5病日に施設で死亡した。

恐らく、車椅子でかかりつけ医に通院し、
ワクチン接種したのだと思いますが、
咳、喘鳴に対し、迅速にアドレナリン筋注(3回も)して、
症状改善しましたが、結局心筋梗塞を起こし、5日後に亡くなっています。

2021年9月10日時点でコミナティ筋注®被接種者223,487例に対して急性心筋梗塞の報告が298例(0.13%)であり開始初期の重点的調査(コホート調査)よりかなり高いデータとなっている。被接種者が報告するシステムになっており統計学的に正確ではなく,因果関係も証明されていないが,臨床的な急性心筋梗塞の発生頻度は,投与開始初期の重点的調査よりも高い可能性がある。

高齢者の超過死亡が増えておりますが、
「老衰」が主な原因とされます。
上記の症例報告では、
急変に対し、適切に処置/診断されてから死亡されていますが、
寝たきりで、介護施設や在宅医療を利用されている、
合併症が多い高齢者では、
ワクチン接種によるコーニス症候群=>心不全悪化=>食思不振、誤嚥性肺炎などで老衰死。
なんてことが起こる可能性ないでしょうか。


コーニス症候群について、
日本語版Wikipediaがよくまとまっているので、
引用させていただきます。

コーニス症候群(コーニスしょうこうぐん、Kounis syndrome)は、
薬剤などに対するアレルギー反応や強い免疫反応によって引き起こされる急性冠症候群(心臓への血流低下に関連する胸痛などの症状)と定義されている。
初めて記述したのは、ギリシャの心臓学者Nicholas Kounisであり、彼は1991年に冠動脈の痙攣(現在はI型)の症例にアレルギーが関与している可能性を報告している。
2017年の調査では、男性130名、女性45名の真正の症例が報告されている稀な症候群であるが、この疾患は一般的に見過ごされており、実際にははるかに有病率が高いことが疑われている
肥満細胞の活性化とその反応による炎症性サイトカインやその他の炎症性物質の放出により、冠状動脈攣縮プラーク脱落により1本以上の動脈が塞がれる。
一般的には、高脂血症糖尿病喫煙高血圧、アレルギー反応などが増悪因子である。
本症候群を引き起こす原因としては、薬剤、さまざまな健康状態、食物、環境への暴露など多くのものが発見されている。


アレルギーでは、肥満細胞からヒスタミン、中性プロテアーゼアラキドン酸誘導体血小板活性化因子、さまざまなサイトカインケモカインなどの炎症性物質が放出される。これらの生理活性物質冠動脈の痙攣を促進し、冠動脈のアテローム性プラークの破裂を加速させる。これにより心筋への血流が阻害され、不安定狭心症と見分けの付かない症状を引き起こす。

冠動脈の動脈硬化性病変には、
肥満細胞がたくさん存在するとのことです。

コーニス症候群は見逃されたり過小評価されたりすることが多いので、問題を強く疑いながら疾患プロセスや臨床症状を理解することが必要である。 要因に晒されてから症状が出るまでの時間に注目することが重要である。大半の症例は1時間未満であったが、中には6時間の症例もあった。心筋虚血または心筋梗塞が疑われる場合は、心電図胸部X線心エコー血管造影が必要である。

すくなくとも、
公民館などのワクチン接種会場では、診断/処置は困難でしょう。
何かあれば、
反射的に「アドレナリン筋注」はしといたほうがよさそうですけど。

コーニス症候群は以下の3つに分類される。
1型が最も多く、次いで2型、3型となっている。
I型は、内皮機能障害によるアレルギー性血管攣縮性狭心症としても知られている。この症候群は、基礎的な冠動脈疾患や素因を持たない患者が、冠動脈の攣縮に続発するアレルギー性ACSを発症するものである。
II型は、無症候性の冠動脈疾患が基礎にある患者がアレルギー反応によって冠動脈の痙攣やプラークの侵蝕を起こすことで発症する。また、心筋梗塞の可能性もあり、その場合はトロポニンが上昇する。
III型は、冠動脈血栓症(ステント血栓症を含む)の際に発症し、吸引した血栓をヘマトキシリン・エオシンギムザで染色するとそれぞれ好酸球肥満細胞の存在が確認される。また、過去に冠動脈ステントを挿入した後に急死した患者で、死後の検査でステントに対するアレルギー反応の証拠が発見された場合も含まれる。III型は現在、ステント血栓症(IIIa型)とステント再狭窄症(IIIb型)に細分化されている。

治療は、
I型では、アドレナリン筋注を第一とするアレルギーに対する治療。
II型では、急性冠動脈疾患に対する治療、
III型はステント内血栓吸引、新しいステント入れ替え、等となっております。

冠動脈疾患の既往/リスクが高い人は、
しかるべき医療機関にて接種したほうがよいかも。



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