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成長より生存 | 読書日記『商いの道』

戦後日本の高度成長期の経営者というと松下幸之助や本田宗一郎などメーカーの経営者が有名だと思う。

しかしメーカーにとって製品を市場に届けるために欠かせないのは販売店いわゆる流通業者。これは高度成長期の日本に流通革命を起こしたイトーヨーカドーの創業者である伊藤雅俊本人が綴った本。経営者本人が書いているからか文章に説得力を感じるし、高度成長期の日本人がビジネスにおいて何を大切にしていたかがものすごく伝わってくる内容でグッと引き込まれた。

1998年に発刊というのも興味深い。バブルが崩壊したのは1991年から93年でそこから経済は下降するもののまだ好景気の余力が残っていた(wiki調べ)。そして98年ごろに底をつき、家計への変化などが現れた頃というまさに日本が世界経済の頂点から真っ逆様に墜落して落ち切った後に発刊という背景がある。その背景を加味すると、やはり昇っていた時の心情を大切にする傾向にあるのだな、という見方もできる。

私にとって特に印象的であったのは、成長より生存を考える、というもの。成長にこだわり過ぎると人は貪欲になり無理がたたり長続きしない。一方、生存を意識すれば、基本に忠実な姿勢を貫き、結果信頼を勝ち得る。

生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。
チャールズ・ダーウィン


生存を問うとやはりこの格言に行き着くだろう。昨今、攻めの姿勢がないと弱腰だのと言われがちだが改めて守ることの強さということに自信をもらった一冊でした。

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