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青春の363ページ | 読書『夜のピクニック』

「こんな素敵な体験、自分も高校生の時にしたかったなぁ」

なんて甘い感想を持つ私はズバリ「やったことがない」組だ。実際に歩行祭なる夜通しただ歩きっぱなしのイベントに参加した人のみぞ知る大変さもあるのだろう。

実は私は歩行祭に似たイベントに参加する機会があったにも関わらず参加しなかった。

私の大学の新入生オリエンテーションの一環としてまさに夜通しただ歩くというイベントがあった。企画者はこの本に出会って感銘を受けたのかは分からないが、まさに同様のイベントが開催されていたのだ。それなのに当時の私はこのイベントに興味すら示さなかった。むしろ「夜通しただ歩くって何の意味あるの?」という否定的な態度。

ああ、後悔先に立たず、とはこのことだ。まあ本を読む習慣がなかった自分が悪い。そういった念もあり、今はいろいろ勉強し直し中。

なので、この本には是非とも10代のうちに出会ってもらいたいと切に願う私。自分の子どもにもこのようなイベントに参加できる機会に恵まれたら、何とか説得して参加するように促したい。

それほどに参加したことのない私は、この物語に魅了され、ひと時の青春に触れられた本。

冒頭から最後まで一気に世界に入り込んで、最後はもっと先の結末も知りたくなるくらいこの世界観にはまってしまった。

歩行祭。実際自分が高校生ならこの行事に前向きに参加できたのかは疑問だが、今読んでからはこんな素敵なイベントをしかも高校生という子供から大人への転換期に参加できて、本当に羨ましいなあと思う。

しかも、ザ・青春というキラキラ感ではなく、異母きょうだい、歩行祭の意味とはといった社会的な一面もあり、やはり恩田陸作品は考えさせられる面が奥深い。特に東日本大震災の後にこの物語に出会った私は、夜通し長い距離を歩く場面に遭遇したからこそ、この歩行祭という行事に込めた先人たちの想いみたいなのも勝手に想像して感慨深かった。

とはいえ自分の青春時代と照らし合わせながら思い出に浸れる素敵な物語でした。

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