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コント思考 | 『佐久間宣行のずるい仕事術』

はい、ただの佐久間さんのファンです。

もっと正しく言えば、佐久間さんのことは何にも知らない時にゴットタンというお笑い番組にはまって、佐久間宣行というすごいTVプロデューサーの存在を知った。

特にマジ歌選手権は私のツボ。
フット・後藤による「ジェッタシー」はまさに「名曲」だ(笑)

またちょっと前、佐久間さんのラジオ番組での「娘と箱根旅行」のエピソードトーク。これは娘をもつ親父の内にある心情がめっちゃ伝わってきて共感もして爆笑させてもらった。

ということで、こんなオモロい番組・企画・トークを生み出す佐久間さんがどんな人なのか、どっからそんなオモロい発想を生み出しているのか、そんなことを知りたくて手に取ったのがこの本。

しかし、この本には佐久間さんのそういったヒミツはあまり書かれておらず、どちらかというと「自分のやりたいオモロいものを造る」ために、テレビ業界というハラスメントの空気が多分に残る世界の中、サラリーマンという組織の歯車的立場でどのように立ち振る舞って来たかというズルさ満載の処世術が詰まっている。

思っていたのとは違ったけど、でも逆に居心地の悪い環境である会社を生き抜く工夫から、TVプロデューサー・佐久間さんの価値観だったり思考方法がとっても感じられた内容だった。

本の構成は、仕事術・人間関係・チーム・マネジメント・企画術・メンタルの6章に分かれており、計62種類の佐久間流ずるい仕事術が紹介されている。そのなかから王道のエピソードと個人的にお気に入りの項目について書きたい。

「雑務」こそチャレンジに変える

これは佐久間さんの鉄板ネタのようなものだろう。あまりに出来すぎている(笑)でも分かりやすいエピソードだ。

入社一年目のアシスタントAD時代、次の日の撮影の小道具として使う「サッカー部の女子マネージャーの手づくり弁当を用意する」という指示を受ける。

どうせ一瞬しか映らない小道具、テキトーに弁当を用意すれば終わるまさに雑務。

そこに試行錯誤を加え、サッカーボールに見立てたおにぎりを作って取り入れたところ、それが監督の目に留まって、その日の台本がその手づくり弁当によって変わったというもの。

この話はキレイすぎるけど、例え話としては上手く出来ているからよく引用されるだろう。雑務に工夫を凝らした佐久間さんの姿勢もさることながら、その弁当をストーリーに取り入れようと言った監督の粋な計らいもとても参考になるエピソード。

「コント:嫌いな人」でバトルを避ける

私が個人的にとても参考にしているエピソードがこれ。

これはコントなどお笑いを心底愛している佐久間さんだからこそ生まれた発想だし、この捉え方ができると今まで苦手だった相手からの受け入れがたい言葉や状況の受け止め方がガラリと変わった。

僕が苦手な人と話さなければならないときに編み出した、相手とのやりとりを不毛なバトルに発展させないためのテクニックだ。 その人と対面した瞬間、心の中でこう唱える。「コント:嫌いな人」。 そう、芸人がコントをはじめる前に言うタイトルコールだ。

コールを入れるだけで、自分と相手を客観的に眺められるし、「相変わらず理不尽! 後でどうやってネタにしよう」とおもしろがることもできる。

そうすると余裕ができて、失礼な態度を取ることも応戦することもしなくなる。
相手のメンツに触れず、平和的にその場をしまうことができるのだ。

佐久間宣行のずるい仕事術 | 59頁

佐久間さんはこのコント〇〇を苦手な人と話さなければならない時に用いるとしている。私はそれ以外にも、会社で思わぬ叱責や指摘を受ける時なんかにも用いるようにしている。

自分に非がある時は真摯に素直に受け入れる。しかし、会社で組織に所属していると時として一方的に責められたり、理不尽な目に遭うことがどうしてもある。

そんな時は、「これはコントだな」というマインドセットで参加する。すると前述の通り、この状況を俯瞰して見ることができる。

それまでは全身全霊で真面目に受け取っていた。そうすると、「そうじゃないのに…」とかいう自分の主張を我慢して何とかその場を耐え忍ばなくてはならなくなる。後は萎縮してしまって、話が入ってこなかったり、上手く説明できなかったりしてしまうことが多かった。

だから私にとってはこのコントという設定を変えることでその状況を俯瞰して捉えられることがとても自分には合っていて、とても救われた。これぞまさに処世術だといえる…。

このようなすぐに使える処世術が詰まった内容の本。佐久間さんファンだけでなく、社会人なりたての方なんかは読んでみると余計なエネルギーを消耗する前にずるくなれるんじゃないかな、と若い頃に出会いたかった本。

「ずるい」というのはどこか卑怯とかネガティブな印象をもつ方も多いのではないか。私もそんな1人だった。

しかし大学一年の時。アメリカ人の講師による英語の授業で、cleverとsmartの違いを教わり印象が変わった。

日本語ではどちらも「賢い」だ。

でも二つの言葉はニュアンスが少し違うのだそう。

cleverは、知能に優れて、知識豊富、勉強ができるといった賢さというニュアンス。

一方smartは、要領がいい、話の理解が早い、といったようなずる賢さのニュアンスだと教えてもらった。

というと、この本の「ずるい」はまさに英語でいうとこのsmartな仕事術だなと改めて思い至った。

さて今日もNOBROCK TVでも観てひと笑いさせてもらおう!



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