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眼鏡絵本のレビューだよ!(その2)眼鏡のもつ不思議な力『かみさまのめがね』『すっぱりめがね』他

こんにちは。近藤ろいです。

今4歳の上の娘は弱視治療をしています。
「遠視性不同視弱視」といいます。左目が強い遠視であまり見えておらず、治療をしなければ将来眼鏡をかけても視力が出ないかもしれない状態です。

普通の3歳児健診で発見されました。

ここから数回は、「当事者母が語る! 日本一詳しい子どもの眼鏡治療・アイパッチ治療関係の絵本レビュー」と題して、
発覚当時、娘のために借りた絵本と娘本人の反応を綴ります。

娘が3歳10ヶ月~4歳2ヶ月くらいの間に読んだものなので、4歳前後の子どもの反応ということになります。

全部で13冊あるので、目次ページを設置しました。
こちらです。

他の本も読んだらまた加えていく予定です。


それでは、レビューです。今回は…

眼鏡のもつ不思議な力に注目した本

かみさまのめがね

市川真由美/文 つちだのぶこ/絵
ブロンズ新社

謎の眼鏡屋さんが色々お困りの神様たちに不思議な眼鏡を売る話です。

絵本の魅力 比較的コミカルにデフォルメされた画風のようにお見受けしますが、一つ一つの描き込みが細かい!

お祭りの縁日の様子が大半の背景を占めますが、屋台の物売りの様子、それを連れ立って楽しんだり、小さなトラブルに遭うお客さんたちの様子などが一つ一つ「あるある」という感じる瞬間を切り取られています。


主人公とお困りの神様との会話が各シーンの中心となるやりとりですが、こうした細かな背景の描き込みが、ページをめくると背景の人たちの少し時間も経過しているので、繰り返し繰り返し眺めて味わうことができます。

しかも、これだけ人や物が描き込まれているのに乱雑さはなく、お祭りならではのにぎやかさ、楽しさを印象付けています。

プロの方って本当にすごいですよね…。

もう一つ、面白いなあと感じたのが主人公と読み手(子ども本人)との距離感です。

絵本を読んでいると、自然と子どもは主人公に自分を重ねると思うのですが、この本の主人公?中心人物である眼鏡屋さんはちょっと怪しげな中年男性です。
この人にも娘4歳は自分を重ねるのか? それともお困りの神様の方にわが身を重ねるのか?


もしかしたら、この絵本を通じてわが娘は初めて、誰にも自分を重ねないけれど、起きていることの全体に自分を投影する、といった距離感の物語との付き合い方を知ったのかもしれません。
穿ちすぎかもしれませんが。


前述で「あるある」な雰囲気を切り取るのが巧いと言いましたが、人物についても同じです。
怪しげだけど、どこか親しみを感じる眼鏡屋さんはトランク一つ、お供の犬ひとりをとっても「そうそう、こんな感じ」。

風の神様のむっちりしたご婦人感や、ハートの神様のどこか軽薄な雰囲気とか、最高です。

そして秀逸なのがラスト3シーン。
眼鏡の仕掛けもそうですが、徐々に人気がすくなくなっていく背景が、「宴の跡のちょっとわびしい感じ」を見事に切り取っています。

読み聞かせている大人も、初めてなのにやたら親しみを覚える、見ごたえのある絵本でした。


子どもの反応 「眼鏡を掛けたら問題解決!」という単純明快な展開に、これも子どもが気に入り繰り返し読んでいました。
眼鏡を掛けることそのものへの抵抗感が薄まり、前向きに捉える構えができたのではないでしょうか。



すっぱりめがね

藤村賢志・作 教育画劇

不思議な眼鏡を掛けると見たものの断面が見えるよ! という作品です。

絵本の魅力 何と言っても書き込みの精緻さです。

日常のワンシーンがすっぱり断面になってしまうのですから。
これはどうやって描かれたのでしょう? ラーメンとか、液体のようなものは自分の家では切れないだろうし…。

そしてラーメンの麺一つとっても、本当に描き込みが細かいので、下絵→線画→彩色?の順なのでしょうか?

自分なら嫌になるような細かい作業を、一つもぬかりなく成し遂げられたことにプロのすごさを感じました。


子どもの反応 娘は眼鏡のすごさというより、すっぱり分かたれた断面の絵に見入っていました。

一番気に入っていたのは一軒家全体です。一つの部屋ではある過ごし方をしており、同時に別の部屋では…という俯瞰ができるのが、4歳児では斬新だったようです。

こちらも眼鏡のすごさを印象付けた絵本のようでした。


桂文我のまぬけなどろぼう めがねどろぼう

文/桂文我 絵/荒戸里也子 BL出版

絵本の魅力 ちょっとおまぬけで、どこか憎めないこそドロ2人が眼鏡店に忍びこもうとします。気づいた丁稚さんは色々な眼鏡を使って撃退します。
さて勝つのはどちら?

というお話です。

出版社名に一瞬びびりましたが、長谷川義史さんの『おへそのあな』などを出版されている歴史ある出版社さんです。

本ですが。

とにかく眼鏡がテーマの絵本を次々に図書館で借りていた、弱視発見直後。

落語がベースですやんこれ!


と、いきなり落語の軽妙な口調の読み聞かせを3歳児にすることになった私(母親)は大焦りでした。

時代設定は江戸時代かな? 滑稽な人の表情、当時の暮らしがそこはかとなくわかる挿絵。子どもが触れる時代物としては安心して読める作品でした。

子どもの反応 「えっ、泥棒さんが出てくるの、こわい…」

―完―

ということで、4歳の怖がりの娘が手に取れるまで2日間の熟成が必要でした。

4歳前後の子どもに"憎めない泥棒キャラ"の理解は難しいようです。


ディズニーの「アラジン」も「なんで? なんで悪いことする人なのにお姫様と仲良くなるの?」途中で挫折。

同じくディズニー「塔の上のラプンツェル」に至っては「泥棒さんこわい…お姫様もフライパンでバンバン人を叩いてる…」とドン引きしていました。

本誌に至っては、ちゃんと泥棒さんが撃退される結末を知ってからは面白がって聞くようになりましたが。


江戸時代の暮らし向きには興味があるようで、色々な眼鏡登場そっちのけで「どうして病気の人を泥棒さんが看病しているの?どうしたの?」が一番アツい質問でした。勘弁してェ。


ということで今回は「眼鏡のもつ不思議な力に注目した本」でした。

次回はいよいよ本丸、眼鏡を掛けることへの抵抗と解消がテーマの本についての紹介です。