【最重要】マスク換気の話
麻酔導入のパートでもっとも重要なのが
マスク換気
です。
患者さんに麻酔薬が入って眠りにつくころ
薬の影響でだんだん呼吸が弱くなっていきます。
息をしないまま放っておくことはできません。
そのままにしたら、もちろん死んでしまいます。
そこでマスク換気です。
マスクを顔に密着させて、
それにつながったバッグにたまった酸素を
肺に送りこみます。
患者さんの呼吸は、
すべて麻酔科医にゆだねられています。
マスク換気はまず「お腹が上下しているか?」で確認する。
ちょっと専門的な内容をお話しします。
では、ちゃんとマスク換気ができているか
どう確認するのでしょうか?
教科書にはいろいろな方法が書いてあります。
胸のあがりを確認する
バッグが呼気(はいた息)でふくらむ
マスクが呼気でくもる
EtCO2がモニターで確認できる
などです。
確実な確認となるのは
「EtCO2がモニターで確認できる」でしょう。
しかし、逆は成り立ちません。
「EtCO2が確認できない」からといって
「換気ができていない」わけではないのです。
EtCO2はマスク近くのポートから
分析器へガスを吸引して測定しています。
(サイドストリームといいます。)
日本光電HPより
マスクから送り込んだガス(酸素)は肺を満たし
二酸化炭素を含んだ呼気として返ってきます。
このとき、マスクが密着していなければ
きちんとガスが吸引されず、EtCO2は測定されません。
同じように、
呼気がちゃんと返ってこない場合
バッグはふくらみませんし、
マスクがくもることもありません。
しかし、胸は酸素が送り込まれていればあがります。
「胸あがってる?」
麻酔科医がよく研修医の先生に聞くセリフです。
換気の確認はまずはそこからだからです。
すくなくとも胸があがっていれば、質はともかく呼吸ができているということなのです。
実際には、
お腹が上下しているのをみるほうが、わかりやすいと思います。
横隔膜の動きが、お腹の上下運動としてみえるのです。
マスク換気をはじめたら
まず、お腹が上下しているか?
これで最低限、酸素が送りこめていることがわかります。
換気ができていなければどうするか?
マスク換気を改善させる手段はいくつもあります。
麻酔科医が何をしているのか注目すべきポイントです。
一例をあげておきます。
スニッフィング位をとる
顔を横に向ける
triple airway maneuver
経口エアウェイの挿入
詳しくは教科書を参照してください。
麻酔科医によって、細かいテクニックもあることでしょう。
ちなみに私はtriple airway maneuverをよく使います。
マスク換気にこだわりすぎない。
しかし大切なことはマスク換気にこだわりすぎないことです。
重要なことは患者さんが呼吸(換気)ができているか?
ということで、
「マスク換気」ができているか?
ではないのです。
換気をする手段は他にもあります。
日本麻酔科学会の気道管理ガイドラインが道標になってくれます。
ガイドラインでも、次の行動を決める判断基準は「換気ができているか?」です。
アルゴリズムの図がわかりやすく、麻酔科医の頭のなかには常にあります。
ぜひ、みてみてください。
https://anesth.or.jp/files/pdf/20150427-2guidelin.pdf
まとめ
●マスク換気は麻酔導入で最重要。
ちゃんとできないと患者さんの命が危ない。
●マスク換気の確認は「お腹が上下しているか」。
●麻酔科医がマスク換気改善のために、なにをしてるかチェックしよう。
●重要なのは「換気」。マスク換気にこだわりすぎない。
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