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書籍紹介『愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?』

『愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?(米澤 好史)』という本の紹介です。

愛着の器モデルを提唱された米澤先生の本です。愛着障がいにおける愛情欲求エスカレート現象、本人の要求を受け入れても満たされずもっともっとと要求の歯止めが効かなくなることを、「もらった愛情を感じてしっかりと受け 止めて貯めておく「器」の違い」によって説明しようとするのが愛着の器モデルです。

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(画像は大阪府教育センターより)

この愛着の器モデルに基づいて、キーパーソンが主導権を持ちながら、感情のラベリングや信頼関係の形成などを進めていき、「器」のフタを開ける「愛情を受け止める」ことと、「器」の底をふさぐ 「愛情を貯めておく」ことによって愛情を受け入れ、貯められることを目指します。

米澤先生の本は何冊か読みましたが、この愛着の器モデルの話やそこに至る理論がなかなか難しく…今回紹介するこの本が一番わかりやすいのではないかなと思います。

気になる方は以下の本も読まれてみてはどうでしょうか。

もちろんこの本にも愛着障がい自体や「愛着の器」モデルに基づく愛着修復プログラム(ARPRAM)、などは紹介されています。

それだけでなく、この本の一番のおすすめポイントは具体的な関わり方についての事例が豊富に紹介されていることです。

・褒めたのに、パニック的に暴れました。
・こどもに主導権を取られて愛情欲求された場合、どうすればエスカレート現象を防げるでしょうか?
・キーパーソンを中心にした支援体制はどう作るか。
・お迎えが来ても帰りたがりません。
・被害者アピールが頻繁にあります。
・モノを大切にせず、よく壊します。
・他者の弱みを言いふらし、みんなでからかうことをよくします。
・他のこどもを扇動して、不適切な行動をするように仕向けます。
・挑発してトラブルを発生させ、もめごとをつくって喜びます。
・他のこどもが褒められるとその子を攻撃し、自分が褒められると逃げたり、怒ったりします。
・集団では落ち着かず、多動になり、他のこどもにいろんな指摘をします。
・二人のこどもがキーパーソンを取り合って困ります。
・授業を抜け出し、追いかけると逃げます。「もう好きにしたら」と言うと激怒します。
・勝ち負けにこだわり、負けると相手や周囲のこどもを攻撃したり、すねたりします。
・「にらまれた」「笑われた」と訴えながら、「一生呪ってやる」などとひどい暴言を言い続けます。
・嫌なことはしたがらず、好きなことしかしません。
・失敗したら固まって動かなくなります。クールダウンしようとしても、なかなか部屋を出ようとしません。
・保護者がしっかりかかわっているように見えるのに、愛着の問題があるのはなぜですか?
・こどもの情報を伝えても聞く耳を持たない保護者(同僚の教師、保育士、指導者)にどう対応すれば?

今あげたのは事例の一部ですが、読んでいて子どもの顔が浮かんでくることも度々ありました笑。このケースでどうしたらいいのかを知りたいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。

各ケースごとに、①現象、②原因と意味、③してはいけないかかわりとは?適切な支援とは?、④支援のポイントという4つの視点からの解説があるります。なので、こちらが主導権をもつ、相手の感情をそらす、感情のラベリングなどをはじめとした関わりをどうやって使っていけばいいのかがよくわかります。

愛着の課題のある子どもたちはタイプによって適切な関わり方が変わってくるので、この子は今こんな状態かな?こんなふうに関わればいいのかな?と考えるヒントをたくさんもらえます。

わざとからかったりちょっかいをかける子
固まって動けなくなる子
こちらが関わりないくと怒りだす子
授業から抜け出す子
嫌なことや苦手なことから逃げ出してしまう子

こんな子どもたちを支援学校でも、地域の学校でもよく見かけます。

もちろん、全ての原因が愛着の課題とは限りません。でも、子どもたちがどんなふうに考えているのか、どうやって関わったらいいかのヒントが見つかるかもしれません。

そんな子たちが気になる方におすすめの本です。



表紙の画像はAmazon.co.jpより引用しました。