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特別支援学校からの発信「苦手な課題を乗り切るためのええことを」

Twitter上でスケジュールの視覚支援について、時折「嫌なことが起きるまでの見通し」を立てることで嫌なことが視覚化され、余計に不安にさせてしまうケースを見かけます。という内容を見かけ、どうしたらいいのかを考えてみました。

僕たち大人はどうしているのか?

突然ですが皆さんも、仕事やお家のことでやりたくないこと、嫌なこと、めんどくさいこと、ついつい後回しにしてしまうことってあると思います。僕にもたくさんあります笑。

僕の働く支援学校でも、子どもたちがしないといけないことはたくさんあります。本当にみんなよく頑張っていて偉いなーと思います笑。

でも、「やりたくない!」「嫌だ!」そんな思いをストレートにぶつけてくる子もいます。

僕たち大人も、そんなストレートな思いを抱えていますが、なんとか自分をなだめすかして乗り切っています。

そんな風に気持ちの折り合いをつけるために、僕たちはちょっとした「ええこと」を活用しています。

「この作業が終わったら休憩しよう」「後15分やったらお終いだ」のような数時間単位の小さいサイクルから、「明日頑張ったら週末だ」「今日は仕事終わりに一杯飲みに行こう」「週末は給料日だ」「明後日のデートのために早く仕事を片付けよう」なんかの数日単位のサイクル、はたまた「マラソンで4時間を切るために頑張って週3日は走ろう」「目指す大学に入るため毎日10時間勉強しよう」なんて大きなサイクルまで、僕たちは前向きな見通しをもって行動しています。

ただ提示された課題を機械的にこなすのではなく、その先に目的や報酬(ええこと)があるからこそ、誰もが頑張れるのです。

僕たち大人が嫌なことでも頑張れるのは、今まで嫌なことを頑張って乗り越えてきた経験があり、自分でその先にあるええことをイメージできるからなのです。

提示するタイミングの配慮

そもそも視覚支援は、その子が見通しを持つことで不安なく行動できるための配慮です。提示したことをこなさないといけないノルマではありません。

前もって提示することが、逆にプレッシャーになるのなら、提示するタイミングを考え直した方がいいでしょう。

ええこと(インセンティブ)とセットで

また朝出勤してから「締め切りまであと3日!絶対に締め切り守れ!!」なんて机の前にデカデカと貼られていたら…嫌ですよね。「そんなんわかってるよ!」なんてイライラした気持ちになるかもしれません。

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(画像は酎ハイとわたしより)

でも「3日後の締め切りが終わったら焼肉!」なんて書き方だったらちょっと前向きになれそうじゃないですか?

視覚支援でスケジュールを提示するときには、その子にとってのインセンティブ(報酬)となるようなことを提示すると、前向きな見通しに繋がります。これが表題にあるええことの意味です。

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(画像はザ・プロンプトより)

例えば、授業の中でその子が好きな内容(活動やキャラクターなど)を取り入れてそれを提示する、その活動が終わったらあるいいことを提示する(カードの裏面にいいことのイラストがあり、終わったらひっくり返す)、スケジュールカードにトークン(ごほうび)のシール(5個貯まったら●●など)をセットしておくなどです。

そうするとスケジュールに提示されてた嫌な活動が、あら不思議、いつの間にか「ええことのためのチケット」に変身するのです。

やらないといけない義務感を別の活動にチェンジする

「苦手な活動をしなければならない」という状況自体の考え方をチェンジしてしまうという方法もあります。

例えば教室移動が苦手な子だったら、先生の荷物を運んでもらう仕事をまかせることで「お手伝いをする」へ、下校の通学バスへ乗りたくない子だったら、添乗員さんの仕事を任せて、「その子の好きな体温計を使って友だちを検温する」へ、行動をチェンジするのです。

教室移動やバス乗車という子どもがやっていることは変わらないのですが、それが目的から好きなことをするための手段にいつのまにか変換されていますよね。

活動内容自体の見直しという選択肢も

苦手な活動に取り組む際は、時間や回数、内容などをその子と交渉・提案しながら見直し、「どのくらいならいけるのか」を調整していくという方法もあります。

まとめ

「この一杯のために仕事を頑張ってるんだ!これでまた明日から頑張れる!」

お酒ではないかもしれませんが、誰もがそんななにかいいことのために、日々頑張れています。

振り返ってみれば、僕も小学生の頃、ゲームをするために率先して宿題を終わらせていたように思います。まぁ親からしたら「宿題をこなすだけでなく、自分の身になるような宿題の取り組みや自主的な勉強をして欲しい」なんて思うのかもしれませんが…夜中に隠れてゲームをしていたのはご愛嬌ですが笑。

考えてみればご褒美のために頑張るというのは当たり前の話ですが、ある大学の先生から視覚支援のスケジュールカードにインセンティブの視点を取り入れてはとアドバイスいただき、それがすごく効果的なだったので今回紹介してみました。

大人も子どもも、ええことがあるから頑張れる。

子どもに「●●させないと」と一生懸命になるあまり、そんな当たり前の視点って忘れがちです。スケジュールの視覚支援はあくまで子どもたちのためのもの。そのことを忘れず、子どもたちが前向きに取り組めるようなインセンティブ、「ええこと」を活用した支援の紹介でした。



表紙の画像は、東洋経済ONLINEより引用した、「この一杯のために生きてる〜」という感じのマンガワカコ酒の画像です。