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ポジティブリストをやめよう

 今回のテーマは「ポジティブリストを辞めよう」です。ポジティブリストという言葉を聞き慣れない方も多いかもしれません。これは「〇〇をしよう」という実践を並べたものを指します。

例えば、「学び合いをしよう」とか「自由進度学習をしよう」とか「百ます計算をしよう」といった具合です。

 これらの教育実践はその効果も高いと評判で、各地で実践が行われている有名な教育実践です。それぞれの実践に関する書籍も数多く出版されていて、それらを読めば多くの先生方は「ぜひ自分の学級でも取り入れてみよう」という気にさせてくれるものばかりです。

 しかし、良い実践を詰め込んだからといって、良い教育が行われるかというと、僕はそんなことは無いと思っています。

教育は「すればするほど良くなる」のか?

 教育の持つ力を教育関係者は過信する傾向にあると感じます。「教育をした分だけ子どもたちは伸びていく」というのは、多くの教育関係者が信じていることだと思いますが、果たしてそうなのでしょうか。

 「〇〇教育」というものがどんどん現場に入ってきています。これは先程の考えがその根底にあるからでしょう。しかし実際のところ、現場の教育はどんどん良くなるどころか、どんどん疲弊していっています。やらせないといけない「ポジティブリスト」をいくら追加したって、現場はそれらの理念を理解できないままに、ただやらせるだけになっています。これでは食べ過ぎによる消化不良と同じです。

風呂敷を広げすぎた学校教育

 今の学校教育はその風呂敷を広げすぎています。教育はみなさんが信じるほど万能ではありません。だからこそ、今こそ必要なのは「ネガティブリスト」ではないでしょうか。これは、ポジティブリストの逆で「〇〇を辞めよう」というリストです。詳しくは拙著『その指導は、しない』(東洋館出版社)を御覧ください。「子どもたちにとって必要な力は何か」を「ゼロベース」で考えてみましょう。

「余裕」と「無駄」を大事にする

 教育に一番必要なのは「余裕」であり「無駄」だと思います。子どもたちは失敗を繰り返しながら成長していきます。大人から見れば「無意味」で「無駄」に見える時間も子どもたちにとっては「成長の糧」になっていることはたくさんあるはずです。そんな子どもたちの時間を、先生側が「ゆったりと見守ってあげられる」ような、そんな時間を作るための「ネガティブリスト」づくりです。

 教育実践は「始めることは簡単」で「続けることは難しい」です。でも一番難しいことは「元々あるものを辞める」ことだと感じます。足し算型の教育から引き算型の教育へ。そこから生まれた「余裕」は子どもと先生に良い感化をもたらすと信じています。