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【創作怪談】フィギュア


「霊は人型の物に宿りやすいんだよ」
この界隈ではよく聞く話。

でもある霊媒師は言う。
「物にも感情があって、
条件次第では物が人を呪うこともある」

確かにそうなのかもしれない。
でも僕は信じてなかった。
あの出来事が起こるまでは…



今から1年ほど前、僕はアニメの、
とある女の子が大好きでした。

見た目も、作中の声、性格も、
全てが僕の好みだったんです。

そのあまりに異常な愛から、
その子のフィギュアを新品で買ったんです。

家に届いた時は新しい家族が出来たみたく、
その日から眺めたり、話しかけたり、
まるで生身の人間のように扱いました。

夜はベッドに置いて一緒に寝るなんて事も僕にとっては当たり前で、喜怒哀楽を共に過ごしてきました。


…それから月日が経ち、僕は大好きだったアニメから別の趣味に転じていました。

きっかけは周りや友人の影響でした。
ブランドや染髪に興味が生まれたんです。


そんなある日の休日、僕はフィギュアをフリマアプリに出品する事にしました。

フリマアプリとは出品物と価格を決めて、
新しい買い手をネットを通じて探すのです。

言わば、
素人でも中古販売が出来るアプリです。


かなり人気作品でもあるからか、
程なくして、そのフィギュアは売れました。

僕はフィギュアを段ボールに詰め、
近くのコンビニから発送しました。

よし!これで◯◯の帽子が買える!
少し嬉しかったのを覚えてます。


その日の夜の出来事です。
僕は不思議な夢を見ました。

自分の部屋で僕がスマホを見ている夢。
でもそれが変なんです。

僕が見た夢は《他人目線の僕》なんです。

つまり、誰かが僕を見ている。
その『誰か』の目線で僕が見えてるんです。
僕が自分を誰か視点で見ている。

その自分はスマホで何かを見ては、
クスッと笑うだけでした。


翌朝僕は起きると、
ふと棚に目線を向けました。

そこはフィギュアが置いてあった場所。
そして夢で、僕が自分を見ていた場所。

まぁ、その時は偶然だろうと思ってました。
夢なんて不思議なものですからね。


そんな不思議な夢はフィギュアを販売した日からほぼ毎日見るようになりました。

ある日は誰かがベッドの近くで、
「もっと一緒に居たかった」と言われる夢

ある日はそのフィギュアと僕が、
何気ない会話をしている夢

嫌と言うほど僕の見る夢には、
あのフィギュアが出てくるようになりました。


そこからまた数日後、
僕は夢の中で焼かれる夢を見ました。

詳しくは覚えてませんが、
焼かれる僕を誰かが笑ってる感じでした。

なぜか熱さがリアルに伝わり、
夢の中で僕は泣き叫んでしまいました。


夢から覚めると、とてつもない熱気。
半泣き状態になっていました。

僕はすぐ体温計を取り出し検温すると、
40℃を超える熱を出していました。

それと同時に来る息苦しさ、
酸欠に近く、頭も痛い。
はっきり言って死を覚悟するくらい。

解熱薬を飲み、何とかその夜を明かしました。



翌日、僕は購入者にフィギュアを返品してもらおうと連絡をしました。

あのフィギュアを販売してから、
悪夢や体調不良が続くからです。

この環境がなくなるなら、1万でも、
10万でも支払うつもりでした。

しかし、購入者からの返信に僕は、
背筋凍りました。


『連絡頂きありがとうございます。返却はできません。購入したフィギュアですが、なんか凄く不気味で不幸続きなので焼却処分しました』


僕は思わず目を疑い考える間もなく、
気付けば手が勝手に返信していました。

「いつ処分したんですか?」


『昨日の朝です』


(もしかして物が人間を呪った?)
僕の脳にその思考が浮かんだ。

信じたくはないけど、
偶然にしては完璧すぎる。


楽しかった頃の記憶を見せる為に、
フィギュア視点の僕を夢で見せた。

ベッドで寝ていた頃を思い出させる為に、
夢の中で囁いてみせたり。

燃やされるのが嫌だと知らせる為に、
夢の中で僕と会話したり。

自分は燃やされたんだと知らせる為に、
夢の中で僕を焼き、高熱にさせたり。

全部フィギュアが原因だとしたら…
僕はどう償えばいいのでしょうか?

僕はそっとスマホを閉じて、
ベッドに倒れ込みました。

信じたくはないのですが、
僕が自殺をする夢を見ました。


《end》


#創作 #怪談 #創作怪談



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