エピソード10:中2の冬の終業式

夏の野外学習を経て、少しずつ彼女と仲良くなっていった。痩せ気味で背が高く、そのスラッと細く高く伸びたスタイルとは対照的に、幼げな顔。そのアンバランスさに自分は惹かれていた。

しかし、何せ思春期真っ只中の中2の頃なので、そんなに積極的に話しかけられる訳でもなければ、自分の気持ちをうまく理性でコントロール出来る訳でもない。

その結果自分が取ったアプローチは、消しゴムを細かく千切って彼女にぶつけるというなんとも幼稚な手法だった。

今考えてみても、いつ考えてみてもどうかと思う行動なのだけれど、これが彼女には意外と効果を発揮していたようで、地味に鬱陶しいながらも、こちらの好意は伝わっていたらしい。
まさかの好手だった。

もちろんそれだけでお互いの好意を深めた訳ではなく、秋の合唱コンクールに向けて一生懸命取り組む様子や、体育大会のバレーボールでネットに絡まりながら下手くそなスパイクを打つ姿を楽しく見ていたと彼女から後で聞いた。

そんな風にお互いを意識しつつも、目に見える進展がないまま迎えた二学期の終業式の日。
合唱部に所属していた彼女と、合唱部の顧問である担任の女教師が、終業式の後も2人教室で何やら話をしていた。

他のクラスの友達とひとしきりワイワイした後に教室に戻った自分は、そのテンションのままそこにちょっかいを掛けた。すると、後は楽しくやりなさいと言わんばかりに担任はさっさと職員室に戻って行った。

その去り際にひとこと。
あなたたち仲が良いわね、と。

教室に残された彼女と自分。

そこでサッと告白の一つでも出来たらカッコ良いのだけど、やはり何せ思春期真っ只中の中2の頃、そんなことはとてもとても出来やしない。

けれど、このままじゃあねとも言いたくない。

その結果我々が取った行動は未だに謎で。

どういう流れでそうなったのかは覚えてないけど、お互いの生徒手帳を交換して、自分の好きな人の誕生日の日付に印を付けようということに。

お互いの好意をビシビシと感じてるのに、それでも直接好きとは言えないのがもう‥。

もちろん自分は彼女の誕生日に丸を付けて生徒手帳を返した。自分の生徒手帳も受け取って、でもその場で確認はせずに、やっとここでじゃあねと言って帰路に着いた。

家に帰って早速生徒手帳を確認すると、自分の誕生日にハートのマークが書いてあった。


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