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点在する遊び場から「遊べるまち」へ

ドイツ南西部にあるGriesheim/グリースハイムという街は、ドイツで最初の"Bespielbare Stadt/遊べるまち"と呼ばれています。

「遊べるまち」とは、教育学者のBernhard Meyer/ベルンハルト・マイヤーさんが2008年に提唱しグリースハイム市と共同で開発したプロジェクト。
子どもたちの遊び場が街の中に島のように点在している状態から、まち全体を安全に遊べる状態にしよう!というコンセプトです。

グリースハイム市では、100以上の遊び場が市内に設置され、各地でプレーストリートが実施され、子どもたちがよく通る道の危険が軽減されるなど、まち全体でたくさんの取り組みが行われ、それまで子どもたちにほとんど配慮されていなかった公共スペースも子どもたちにとって魅力的で安全に遊べる場所になりました。

マイヤーさんは、子どもたちの声を直接聞くことが何よりも大切だと話します。グリースハイム市の例でも、1000人以上の子どもたちに、普段と通っている道や遊んでいる場所などを聞きながらプロジェクトを進めていったそうです。
そしてもうひとつ大切なのは、バリエーションを作り、各箇所の遊べるオブジェクトや仕掛けが単調でつまらないものにならないこと。

こちらが、「遊べるまち」グリースハイム市の地図。
赤い線が、子どもたちが遊びながら安全に通れる道。
オレンジ色の点のところに、遊べるオブジェクトが設置されたり遊びに誘導するような仕掛けが地面に埋め込まれたりしています。

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この地図は、こちらから拝借しました。

また、すべての世代に優しいまちづくり、ということで、
"Bespielbare Stadt/遊べるまち"
"Besitzbare Stadt/座れるまち"
というコンセプトでドイツ各地に少しずつ広がってきています。

こちらは、Brühl/ブリュールというまちの中心部になります。
黄色の点が遊べるオブジェクト、青い点が座れるエクステリア、緑の点が遊べて座れるオブジェクトが設置されている箇所になります。

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この地図は、こちらから拝借しました。


私も、ドイツ東部の街ハレの美術大学で「遊びと学びのデザイン」を学んでいた時のプロジェクトの一環で、「遊べるまち」づくりを体験しました。
20人ほどのプロジェクトチームが2〜3人のグループに分かれて、街のいろいろな場所で人々を遊びに誘うような仕掛けを作る、3日間のワークショップでした。
1日目に街の探索、アイデアづくり、2日目に実行、3日目にプレゼンテーションと、とても短くテンポラリーなものでしたが、おもしろい発見が盛りだくさんでした。

私たちのグループが選んだのは、街のマルクト広場にある教会の横の階段。
ここにテープを貼って簡単な迷路にしてみました。

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急いでいる人や足腰の不自由な人、興味のない人の邪魔はしないように、左側にはテープは貼らないでそのままに。右側を迷路にしてみました。

少し離れて様子を見てみると、少し不機嫌そうな男性が降りてきました。

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迷路で遊ぶ若者を振り返ってまじまじと見つめています。。。

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。。。そして、表情が一気に変わり、とても楽しそうに遊び始めたのです!

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これには私たちも大喜び!

それから、たくさんの人たちが階段を登って降りて、迷路で遊んでくれました。
一旦いなくなってから友達を連れて戻って来た子どもたちもいました。
また、杖をついて左側の階段を降りてきたおばあさんが子どもたちが楽しそうに遊んでいる様子を嬉しそうに眺めている様子も見ることができました。

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この街に住む人なら誰もが知っているこの階段。こんなに簡単な仕掛けで日常に遊び心の種を撒けるのだと実感することができました。


現在住んでいるベルリンでも子どもワークショップ「遊べるまちづくり」を行なっていますが、残念ながらこの活動も去年から休止中です。
今年の秋あたりからまたできるといいなぁ。


「遊べるまち」のテーマでは、

"子どもにやさしいまちは誰にとっても住みやすいまち"

ということが常に掲げられています。

安全で遊び心あふれるまちには活気が生まれ、人々の交流にもつながります。
子どもたちと協力しながらつくる「遊べるまち」がもっともっと増えますように。


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