見出し画像

脳みそのフタについて(榊正宗)

こんにちは、榊正宗です。

NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』で宮崎駿監督が「脳みそのフタ」という表現を繰り返し使っていたのは、興味深い点だと思いました。

この表現は、一見深層心理に関連しているように思えますが、実際はもっと根源的なものを指しているようです。

人間の本能の深奥にある何かに対して通常触れることが出来ないようにフタがあると言う考え。これは、日常生活を送る上で必要なリミッターの存在を示唆しているのではないでしょうか。

このリミッターが解除された場合、日常生活に支障をきたす可能性があるという点は、非常に考えさせられます。

脳科学的な話をすると、人間の脳は確かに驚異的なイメージ作り出す能力を持っていることが分かっているそうです。しかし、その能力にはリミッターがかけられており、普通の人はその全容を引き出すことができないそうです。

事故や何らかの物理的な損傷によってこのリミッターが壊れると、現実と幻想の区別がつかなくなる事が、実際に医療の現場で報告されているそうです。

意志の力でその力を引き出そうとするのは、統合失調症のような症状を自分自身でコントロールするような試みになりかねません。極めて危険な行為なんですよね。

そして、そういった危険を冒してまで作品を作るというのは、ほとんど神の領域に達するような行為です。

創作活動においては、自分自身の心理や感情、そして無意識の深淵に触れることが求められますが、その深淵には計り知れないリスクも潜んでいるわけです。

創作者は、自らの内面を探求する過程で、未知の領域に足を踏み入れることになるのですが、それは、同時に自己と向き合い、内面の葛藤や恐れと戦うことを意味します。

宮崎駿監督のような偉大なクリエイターが、どのようにしてそのリミッターを扱い、自身の創造力を最大限に引き出しているのかは、多くの創作者にとって大きな学びとなるかもしれません。

創作活動は単に技術やアイディアを形にするだけでなく、人間の心理や感情の深層に触れ、時には自らの限界を超える挑戦も伴うものです。このように深いテーマについて考えを巡らせることは、私たち創作者にとって非常に重要なプロセスだと思いました。

もちろん、これは本当にめちゃくちゃ危険な行為なので、自己責任で可能な範囲でやるべきです。

ちなみに全く到達は出来てませんが、脳みそのフタの話を宮崎駿監督はかなり昔からされていて、私の自主制作アニメ「たいせつな時間」を制作する時に、その話を参考に深層心理の更に底にいく描写を描きました。

作中の夢のシーンに、更に夢の中で意識の底に堕ちるシーンを描きましたが、本当に自分自身がそこに到達するのはちょっと無理かな……と、作っていて感じましたね……。

この領域に到達してるクリエイターは、宮崎駿監督の他には、村上春樹、新海誠のお二人はおそらくフタの中に到達していると思います。彼らの作中にそれらを示唆する描写が良く出てきますよね。

新海さんについては、村上春樹と宮崎駿のオマージュとしてやってるだけで、ご自身はまだその領域に到達されていない可能性もありますが、時々インタビューなどでおかしな事(すみません)をおっしゃっているので、私は到達されていると予想してます。

もちろんフタの中に入れたらオッケーと言う訳ではなく、フタの中から戻ってきて、人にわかる様に作品化しなくてはならないので、もしかすると筆を折ったり自ら命を絶ったクリエイターの中には戻って来れなかった人もいるかもしれませんね。

フタの中に入る行為は、クリエイターの作家性の到達点かもしれませんが、くれぐれもその危険性はしっかりと理解してトライしてみて下さいませ🙇


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?