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弱肉強食

「弱肉強食」

それは、弱い者の肉を強い者が食べるという意味の言葉です。

。。。

ある日曜日の午後。

強い者のお父さんがぐうっと背伸びをしてから言いました。

「おい、強い者。今日は外食にするか」

強い者はとても喜びました。
外食の日はいつも、みんなで車に乗って遠出をして、国道沿いのファミリーレストランに行くからです。

「うん。行く」

こうして強い者は、お父さんとお母さんと強い者と妹の4人で車に乗りました。

「今日はどこに行こうか」

お父さんがそう言うので、強い者はびっくりしました。

「国道沿いのファミリーレストランじゃないの?」

強い者の言葉にお父さんとお母さんは顔を見合わせて笑います。

「他のお店に行ってもいいんだよ。強い者は何が食べたい?」

強い者は悩みました。

強い者が喜んだのは「みんなで車に乗って遠出をして、国道沿いのファミリーレストランに行く」からなのです。
何かを食べたかったわけではありません。

強い者は悩みながら答えました。

「弱い者の肉」

強い者のお父さんとお母さんは驚きました。
普通ならハンバーグとかステーキとかスパゲッティーが食べたいと言うものです。「弱い者の肉」なんて子供らしくない答えだと思いました。

「わかった。じゃあ今日は弱い者の肉を食べに行こう」

「うん」

強い者のお父さんは少し嬉しそうに、その交差点を右折します。

強い者の妹は何か言いたそうでしたが、黙ってただ後ろへ流れる景色を見つめていました。

。。。

残酷なことですが、こうして世界は成り立っているのです。

(おしまい)

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