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2022年8月に読んだ本

『ロシア点描』 小泉悠著

ロシアの軍事・安全保障政策が専門の著者が「ロシアとロシア人の魅力を、衣食住の面から伝えたい」という目的で書いた本です。ウクライナ侵攻以降特にロシアに対するイメージが悪くなっていて、それは仕方のないことだと思いつつ、でもロシアについてどうしても書いておきたかった思いが伝わってくる本です。

これを読んだからといって今のロシアが行っていること、プーチン大統領が行っていることを仕方ないこととは到底思えないけど、でもロシアという国に対するイメージは間違いなく変わりました。ロシアの人の生活の考え方とか、他人に対する思いとか、社会に求めるものとかは日本のそれとはずいぶん違っていて、ロシアに対する興味が強くなりました。今起きていることに対して、反対の立場を取っている国だけでなく、賛成はしないけど態度を保留している国もあって、そのようなことを踏まえつつ曖昧な状態でロシアを見ることにも意味があるんだろうと思います。今のロシアの行動に関心がある人には、さらに理解を深めるというか理解の幅を広げるためにもおすすめしたい本です。


『22世紀の民主主義』 成田悠輔著

かけているメガネもユニークで惹かれるし、表紙に書かれている「言っちゃいけないことはたいてい正しい」には共感しかありません。

(被)選挙権や選挙制度を変えたければ選挙(投票)が必要で、選挙に勝ったものしか選挙制度を変えることはできない。既存の選挙制度で勝つことで今の地位を築いた現職政治家がなぜこうした改革を行いたい気分になれるのか、無理そうな匂いがプンプンするからだ。

と選挙改革は諦めているけど、その代わりに選挙が必要のない社会にするための新たな仕組みは作れるはずだと提案しています。

現代でも、どこかの自治体に大量移住して住民の過半数を握れば、その自治体の選挙を支配できる。千代田区の区長選ですら最新の当選者(2021年)の得票数は9534票である*5。一万人を移住させられれば首都の重要区の区長選ですらジャックできる。一万人が選挙遊牧民として団結すれば、各地の首長選を順に乗っ取って最年少首長を大量に誕生させることさえできる。

この案もおもしろいです。

課題と感じていることは同じでもその解決のためのアプローチが全然違っていて、論露的に考えて効果のある方法を選択しようよと進めてくれています。別に選挙制度を変えたいわけではないけど、気づけばその課題が課題ではなくなっていたと変化させていく方法はいろんな分野でもあるんじゃないか、そんなことを考えさせられた本でした。


『電通とFIFA』 田崎健太著

小田嶋さんのこんなツイートを思い出したので読んでみました。

確かにこれを読むと高橋治之さんがいかに重要な役割を担っていたかがよく分かるし、この人が関わっていたら何が起きてもおかしくはないと思います。全面的に肯定はしませんが、今の時代の価値観に合わない部分があったかもしれないだけで、過去のこの人の仕事は大きな意味があったと思います。ここまで書いてもいいんだろうか?と思ってしまうくらい、電通FIFAの関係や今までやってきたことが詳細に書かれています。11月に始まるW杯までにこれを読んでおくと、大会自体を味わい深く観れると思います。


『みんな、忙しすぎませんかね?』 釈徹宗、笑い飯・哲夫著

かみ合っているようで、あまりかみ合っているようには思えない2人の往復書簡形式の本で、でもそのかみ合わなさというか、ちょっとした違和感の連続がこの本の良さなのかもしれません。

「仕事は楽しい?」「怒るということ」「煩悩とは?」「地獄ってどんなところ?」「運を考える」「努力は報われる?」「孤独について」「生まれ変わりについて」「家族について」「自殺は許される?」「苦手な人」「『バチが当たる』について」「お墓参り」「戒名の値段」「退屈」「仏壇は必要?」「心を強くする」「調子に乗る」「友達って必要?」「お金は好き?」「苦手なこと」「食欲」「しがらみ」「死んだらどこに行く?」の24のテーマについて2人が回答していくんですが、哲夫さんがうまく引っかき回してくれ、釈さんがそれを整理するやりとりが奇妙というかおもしろいというか。この24のテーマの気になった部分をつまみ読みするのもいいかもしれません。

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