ジブリ新作、「君たちはどう生きるか」感想文
スタジオジブリの新作、「君たちはどう生きるか」を観た。
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この映画は公開当時、「一切のプロモーションを行わない」というコンセプトのもと、本当に劇場で流れる予告編やテレビCM、新聞広告、公式サイトの開設といった、通常なら誰でもやるであろう上映にあたっての宣伝を行わず、いきなり「ジブリの新作映画が公開されました」という話題をテレビで見たのが、僕がこの映画の存在を知ったきっかけだった。
映画が公開されたのが、2023年7月14日。
出演者やスタッフが誰であるといった情報も、公開日までほとんど伏せられた状態での、異例の公開だったので、特別なジブリファンでもない僕が映画の公開までその存在を知らなかったのは自然なことだし、世にいる多くのジブリファンも同じような状態でこの映画を観たことだろう。
さっきも書いたけど、改めて断っておきたい。
僕はまったくのジブリファンでは無いし、なんならラピュタまでは見ていたけど、そのあと宮﨑勤という殺人鬼が犯した「連続幼女誘拐殺人事件」が1989年に起きたおかげで、世間のアニメに対する印象がすっかり悪くなってしまい、そのせいで「アニメを見ていたらやばいヤツ」という印象を持たれてしまうと思い、アニメから遠ざかっていた人間です、僕は。
しかしジブリ作品の世に対する影響は絶大で、さすがの僕でも新作が公開されるたびにその存在は普通に知っていたし、「トトロ」は金曜ロードショーで見たのかな?はっきり覚えてないけど、その内容は子ども向けで僕にはピンと来なかった(ウィキペディアの情報になるけど、宮崎駿自身は一貫して子供に向けて作品を作り続けていたそうなので、これはdisのつもりではない)。
もちろん「トトロ」は、大人でも楽しめるコンテンツだったと思うのだけど、世間の「トトロ」に対する熱量があまりにも高すぎて、それに対して僕は斜に構えて、冷めた目で見てしまって、純粋に作品を楽しめなかったという側面もあったのだと思う。
熱心なジブリのファンの人が世に多くいることは知っているので、誤解を招かないよう、この点ははっきり強調した上でこのことは書いておきたかった。
要は、あんまりジブリのことを知らん人が書いたジブリの新作、且つあの宮崎駿が最後に監督したことになるであろう「君たちはどう生きるか」の、単なる感想文なのだと言うことが言いたかった。
世のジブリのファンのことを意識して、前段の言い訳があまりにも長くなりすぎた。
僕がこの映画を観たのは、つい最近。
9月28日だったので、世間がこのあまりにもネタバレしなさすぎな映画について盛り上がってた時期から二ヶ月以上も過ぎた頃。
まったく旬に乗れていないことは承知の上で、何故これを書きたいと思ったかというと、この映画が良かったからだ。
しかし万人におすすめ出来る映画かというと、そこは自分としては疑問。
僕の感覚は世間とちょっとズレてるそうなので、頭のおかしな人の意見だと思って聞いて欲しいのだけど、これは一般的にポップと言える映画ではないと思った。
それでも多くの人が劇場に、この映画を観るためにわざわざ足を運んだのは、それまでジブリが築き上げた功績があってのことだと思う。そのことは本当にすごいと思うし、上映されてから10週目である9月の中旬の時点で、観客動員数が550万人、興行収入81億円という記録を叩き出したという事実は、さすがジブリだなって思った。こんなの誰も真似できないでしょ、知らんけど。
あくまでもこれは僕の印象なんだけど、世の多くの人は難解なものを好まない。そう書くと語弊を招きそうだけど、世の中には美味しく食べられる難解な物とそうではない難解な物があって、これはどちらかというと後者だと思う。
ただそれでも見ていられるのは、その難解さを通り越してそれを凌駕するファンタジーのクオリティの高さ。「トトロ」でジブリから離脱してしまった僕でも圧巻と感じたこの映画はさすがだと思った。そりゃ、ジブリは今までファンタジーを提供し続けることで多くの支持を得てきた集団だもんね。凄くない訳がない。
その凄まじさについては、文章で書き表すものじゃないと思うから、もしこれを読んで「君たちはどう生きるか」に興味を持った人は映画館の大画面で観てみて欲しい。そんな人おるか知らんけど。
僕は映画を観る前は、なるべく前情報を入れずに見たい人なので、ネットで映画の情報を検索したりということはしなかった。
ただタイトルである「君たちはどう生きるか」については、数年前に池上彰がテレビで紹介した本と同じタイトルで、これはその原作に基づいた映画なのだろうと勝手に想像していた。
原作(といっても漫画版)は買ったけども途中までしか読んでなくて、本当になんとなくの情報で申し訳ないのだけど、いじめにあった少年が叔父に生きる意味を教えてもらう、みたいな内容で、それを宮崎駿風にファンタジーでアレンジしまくった作品だと予想して、映画を観た。
ところがこれがそうではなく、この映画は同名の小説のタイトルを借り、しかし映画自体はまさに「どう生きるか」を宮崎駿なりに表現した作品だった。
映画のパンフレットには、自身の少年時代を重ねた自伝的ファンタジーと書いてある。つまりオマージュといっていいのかな?いや、インスパイアという言い方のほうが正しいのか?つまり直接は関係してない。通常よくある原作を映画化したものではなく、宮崎駿が幼少期に読んだ同名の小説から着想を得て、それが作品となったという理解であっていると思う。
なんかそう聞くと、ジジイが・・絶大なる影響を世に及ぼした生ける伝説とも言える御大が、自身の過去を懐かしんで作った作品と思ってしまいそうだが、そうではない。
映画に限らずエンタメなんてものは全部そうだと思うのだけど、あくまで世にある作品は公開された時点で見た人のものになる。そう僕は考える。
その僕が思うことなのだけど、この作品はとてもフレッシュ。個人の感傷に浸ったものではなく、いつになっても通用する、つまり不変性の高い、エンタメというよりは作品という言葉がふさわしい映画だと思う。
個人のマスターベーションに終始した物ではなく、これまで名作と言われる作品を何作も世に送り続けた宮崎駿が、世に訴えたいと思ったことを、ちゃんと食べやすいように調理した料理・・・なんで料理に例えたのか分からないけど、ちゃんと大衆を意識した作品という一面を持つもの、つまりそれはエンタメ性の高いものということなのだけど、エンタメでもあり作品といってもいい、つまり極上のエンターテイメント作品ってことになるのかな。
そういうものだと、映画を観た後の僕は思いました。
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映画のパンフレットにもあるように「ゾンビジブリにはしない」。そうあるので、宮崎駿自身も過去作を踏襲した、大衆に迎合した作品にするつもりはなかったことであることがわかる。
果たして、これが世に通用する作品だったのか。
それは興行成績という意味では、通用したということになると思うけど、世の中なんでも数字で推し量るもんじゃないと僕は思ってる。
全然、自分が言いたいことに辿りつかないので、すっ飛ばして感想を書くと、これは今までのジブリ作品のベスト盤なのだなと感じた。
ジブリをあまりよく見てこなかった自分のようなものにもわかる、今までの映画のテイストがこの映画には詰まっている、と感じた。
ナウシカ、ラピュタ、トトロ、もののけ、千と千尋、ハウル、崖の上のポニョ、ハウル、風立ちぬ・・・それら全ての作品をまともに見てきてない僕でも「君たちはどう生きるか」には、そこかしこに「あ、これはこの作品のイメージだな」と感じるような場面がたくさん詰まっていた。
だからこれって、音楽でいうところのベスト盤みたいなもんじゃん。
そう思った。
ただ、これは普通のベスト盤と違って、ベスト盤なんだけど全曲リミックスバージョンで、本当のジブリファンの人たちはこれを見て、どう思うのだろうと感じた。
「俺が聞いてた、あの曲となんか違う・・」
なんてなことを思ったジブリファンもいるんじゃないかと勝手に想像した。
だから逆に、まともにジブリ作品を見て来なかった俺はこの映画を楽しめたのかも知れない。
トトロ以降の作品に馴染めなかった自分はファンタジーに対する理解が乏しいかも知れないけど、自分の理解ではファンタジーとは幻想的な世界。
しかし、そのファンタジー部分には、これはあくまで僕の見方なんだけど、多くの人はそのファンタジーの背景にストーリーを求めがちだと思うのだ。
大前提としてストーリーがあってからの、ファンタジー。
それを多くの人は、見ていて心地よいと感じるんじゃないだろうか、というのは僕の偏見だろうか。
一応、ストーリーはちゃんとあって、そのストーリーはあくまでオーソドックス。つまり不変性の高いものだと思ったのだけど、細かな部分で「?」と感じる箇所はあった。
なんで蛙なの?
なんで鳥がこんなに忌み嫌われる存在になるの?
といった具合に、様々なキャラが突然現れ、それに対する説明は特になかったように思う。
これはちょっと、人によっては食べづらいと感じるかも知れないな、と。
だからこれは多くの人が好む難解なものではないと僕は感じたのだ。
でも僕は楽しめた。
こういうのって作り手は「ここはわかんねえだろうな」と思いながら、あえてそう作ってるんじゃないかって、思った。
「じゃあ、そのわからないものを楽しもう」
そう思って見ると、この映画はとても楽しめる作品だと思う。
最初のほうにも書いたけど、改めて書く。
これはあくまで僕の感想文だ。
個人があるコンテンツに対して、どう思うかは自由であって、「それは違う」と指摘するのは、あまり粋なことでないと僕は思う。
つまりそういうことなのだ。
宮崎駿は、わかんなくてもいいからこれをやりたかった。
そういう気持ちで挑むコンテンツだと思う。
説教くせえ。
パヨク。
今までそんな言葉で揶揄されたこともあった宮崎駿。
しかし、この映画の中には、そうした押し付けがましさを僕は感じなかった。
前は「生きろ!」とか、直接的な言葉で入ったりしてたんでしょ?
俺はその映画、ちゃんと見てないからなんとも言えんのだけど。
この映画の中で登場人物たちは、借りてきた言葉で、つまり宮崎駿の代弁者としての言葉をセリフとして喋ってたようには思わなかった。
ちゃんとその世界の中の住人としての言葉で喋り、しかしその行間には宮崎駿のメッセージが滲み出ていて、すごくその配分が良かったように思う。
じゃあ、そのメッセージが何なのかというと、それは人間の生き死にのことだと感じた。
永遠に生きられる人間は、今のところ存在しない。
命とは有限である。
誰しもが本当のところでは最後を迎えたいなんて願ったりしないと思う。
しかし、その最後の時を避けられるものはいない。
誰ひとりとして、例外はない。
だからこそ、「君たちはどう生きるか?」ってことなんじゃないの??
こんなの今さらすぎるし、当たり前だし、わかってるよっていう意見もあるだろう。
でも人間なんて、源氏物語の頃から本質は変わってないでしょ?
昔も今も、人は同じようなことで悩み、苦しみ、喜び、幸せを感じ。
それを宮崎駿は、自身が出来る最高の手段、つまりファンタジーで表現した。
こんなもん、俺は否定できない。
見たことあるよ。
あー、知ってる知ってる。
・・・なんて無粋なことは言うな。
結局、オリジナルなんて、究極的には個人の体験に集約されるのだと僕は思う。
どんなコンテンツだって、何かしらの影響は受けているし、ましてやメッセージなんて、突き詰めるとそこに行き着くと思うのだ。
宮崎駿は現在、82歳。
そりゃ、死に対してのリアリティなんて、俺なんかの比にならないくらい生々しく感じてるのだと思う。
自分も今年に入って大きく健康を害し、そのせいもあって余計にメッセージが刺さったということもあったのかも知れない。
いい加減、キリがないので終わりにしたいが、さっきも書いたが、この映画はおそらく今までのジブリ作品の、音楽でいうところのベスト盤みたいなもの。
実はその答えは、映画館に展示されているポスターの中にあった。
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ほら、今までの作品が全部ポスターの端に羅列されてるじゃん?
だから、この解釈であってると思うんだけどなー。
これは映画を実際に観た人ならわかるはずだし、そのイメージは今までのようにわかりやすく、あえてストーリー性を持たせない形で潜り込んでいる。
だから、ベスト盤なんだけど、リミックス盤なんだと俺は感じた。
そして、これはあくまで感覚的なことになるんだけど、ベスト盤で最後に新曲入ってるアルバムとかあるでしょ?
俺は、この映画にそれを感じたんだな。
そこがまた感動的。
「新曲ってどこの部分だよ?」ってツッコミが入りそうだけど、ミュージシャンの場合、新曲って作り手が一番最近に、つまり今思っていること・伝えたいことが入ってるのが新曲だと思うんだ。
それがこの映画には入ってると思う。
だから、全然ゾンビジブリなんかじゃない。
ちゃんとアップデートされてるし、とてもフレッシュ。
それを俺は美しいと思うし、「君たちはどう生きるか?」というタイトルに嘘偽りがないことの証左にもなっていると思う。
だって、宮崎駿は今も生きてるじゃん。
だから、いま思ってることが入ってるから新曲なんだよ。
それって作品として完成度が高いってことだと俺は思うし、恒久性の高い作品ってことになると思う。
なんかだいぶ感覚的な文章になって来たな。
僕、これは他の人の検証動画とかまったく見ずに書いてます。
だって、それに影響されちゃって、自分の思いが変わるのが嫌だったから。
まず、こういうブログって形でアウトプットしてから、気が向いたら他の人の検証も見てみようかなって感じ。
だから文章の推敲もしてないし、結構思ったことをそのまま書いてる。
ジブリ関係はさすがにファンの人も多いだろうし、そこらへんは気を使って書いたつもりだけど、あくまでこれはデモテープみたいなもんです。
だから、こんなにだらだらと長くなってるし、同じようなことを言葉を変えて書いたりしてるし、おまけに読みづらいと思う。
本当、初期衝動だけで書いてる。
すごく自分の人間性が出てるなって思う、こういうところ。
でもそれでもいいんだよって、この映画は言ってくれてるような気がしたので、こういう形で吐き出させてもらいました。
間違っててもいいんだよって。
君は存在している。
そんな勇気を与えてくれる作品って、なんかいいじゃん。
素晴らしいと、俺は思う。
以上、ジブリのことよく知らんし、それどころかそんなに数多くの映画を見て来たわけでもない、ただの無名の人の感想文でした。
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