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【備忘録】ウクライナ戦争のための情報リテラシー

真偽不明情報を鵜呑みにしないために

 2月22日にロシアによるウクライナ東部の親ロ派武装勢力支配地域の独立承認に憤激し、noteに駄文を投稿し始めて2週間強。note上でウクライナ情勢に言及した記事を多く読みましたが、ネット空間に漂う真偽不明な情報の紹介に終始している例も結構多いな、という印象を僭越ながら抱いています。

 情報の信頼度にはメディアによって違いがあり、それを見分けるにはそれぞれのメディアがどういう性格を持っているのかに関し、大まかな知識を持っていなければなりません。

 といっても大げさに構える必要はなく、自分の目でニュースソースの元記事を確認する作業を続けていれば、「これは怪しい」「これは事実を多く含んでいそうだ」という勘が働くようになる上、「Aがこう報じている一方、Bがこう伝えているなら、事実はおおむねここいら当たりだろう」という情報の総合もできるようになります。

 以下では、ウクライナ戦争の推移を追う上でどういったメディアが参考になり、またはならないのかについて、既存大手国際メディアを評価してみます(いずれも同一カテゴリー内は順不同)。その上で、分からないことを含め情勢の全体像を自分なりに判断するヒントも記したいと思います。

 いずれも私の独断と偏見に基づく評価と手法で、ところどころ異論・反論があると思いますが、大枠では日本の新聞・テレビの外報・国際部の方々のそれとそれほど懸け離れているわけではないと思います。

 残念ながら英語しか読めないので、どうしても米欧の大手メディアが中心になり、最重要なウクライナの現地メディアはウクルインフォルム以外、判断不能のため除外してあります。

 西側でもフランス、イタリア、スペインなどのメディアにはほとんど目を通さないので、やはり除外。さらに、あの方この方の顔が思い浮かんでしまうので、日本メディアも対象外。すいません。

各メディアの評価

【まとも】

 以下の大手メディアはおおむねまともと評価。ただし「誤報」の可能性がないというわけではなく、政治的影響やメディア側の主観により報道内容を意図的に修正している可能性は低い、という意味です。言い換えれば、誤認による誤報は下記のメディアでも常にあり得ます。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)と次に紹介するフィナンシャル・タイムズ(FT)は、一般的にはFTの方が評価が高いようですが、どうも外交・安保についてはFTの方が裏取りが甘い印象。

 Defense Newsは軍事専門ニュース。米軍寄りのバイアスかと思いきや、かなりまともです。米国には軍経験者も多く、こうしたニュースアウトレットの記者の中にも、戦場経験があるなんていう人がいます。

 Reuters(英)、AP(米)、AFP(仏)、DPA(独)、New York Times(米)、Washington Post(米)、Wall Street Journal(米)、Guardian(英)、Times(英)、 Frankfurter Allgemeine Zeitung(独)、CNN(米)、ABC(米)、NBC(米)、BBC(英)、CBC(カナダ)、Defense News(米)、Time(米)、Politico(米)

【結構まとも】

 FOXは「まとも」カテゴリーに入れても良いかもしれません。保守系ではまともな方。それでもやっぱりちょっと政治バイアスの臭いが拭えないなあ。

 ブルームバーグはまともだとは思いますが、FT同様、どうも裏取りが甘い気がします。Axiosは米新興ネットメディア。記事の信憑性は決して低くはありませんが、迅速に情報摂取できるよう意図的に短文記事に仕立てており背景を十分に把握できないので、この位置に。

 Bloomberg(米)、Financial Times(英)、FOX(米)、Axios(米)

【政治的バイアスあり、ないし情報の補完に】

 アルジャジーラは、中東域内のことには政治バイアスがかかりますが、域外のことは淡々と現地報道を転電することが多い。ブライトバートはトランプ支援の大論陣を張ったことで有名。

 FOXは【結構まとも】にカテゴライズしてみたんですが、リベラル教育の申し子である家人から「非常識人! レイシスト! ミソジニスト! ●ね!」とののしられたこともあり、かつ執拗なトランプ発言紹介やら民主党政治家への個人攻撃を考慮すると、やはり常識的にはここになるかなあ。ミラーとスターは大衆紙で、日本で言うならゲンダイとかそういった感じ。

 Aljazeera(カタール)、Breitbert News(米)、FOX(米)、Newsweek(米)、The Mirror(英)、Daily Star(英)

【大本営発表】

 表題の通り。実態は報道機関というより、報道機関を装った政府声明発表機関です。乱暴な言い方をすれば、以下に挙げた報道機関が流す記事の主語を「ロシア政府」「ウクライナ政府」「中国政府」に読み替えても大枠間違いではない。

 だからといって無視すべきだというわけではなく、ロシア政府やウクライナ政府、中国政府などの公式な主張を把握するには、ここを参照すべし。

 Tass(ロシア)、Interfax(ロシア)、ウクルインフォルム(ウクライナ)、新華社(中国)、朝鮮中央通信(北朝鮮)

【プロパガンダ】

 事実関係の正確性には期待しない方がよろしいでしょう。偽情報が多い。「こういうプロパガンダを張っている」という材料を拾う時に。

 RT(ロシア)、Sputnik(ロシア)、ParsToday(イラン)

国際通信社を基本、が無難

 明確なフェイクニュースの意図的な放流という現象は、既存メディアではあまりみられません。

 フェイクニュースの温床はやはりSNS(Facebook、Twitter、telegram等)で、「おや」と思ったらgoogleで良いので検索してみてください。ファクトチェッカーたちが活動しているはずです。

 また、「おや」だけでなく、「そうだったのか!」と目からウロコ的な分かりやすい解説にも要注意。残念ながら現実は分かりやすいものではありませんし、こういった解説には陰謀論も多い。「既存メディアが伝えない真実」という枕詞にも警戒を。

 皆さんにはまず、なぜ「既存メディアが伝えない」のかを考えてほしいのです。

 その理由はたいてい、「裏が取れずに真偽を確認できないから」。もちろん、中には「政治的背景や取材源(役所など)との関係で報道できない」「名誉棄損の恐れがあり報道できない」ということもあります。

 まさに「既存メディアが伝えない真実」ですが、真性のスクープなのか、単に裏取り不能ないいい加減な情報をスクープと称しているのかを判別するには、一定のメディアリテラシーが必要です。

 ウクライナ情勢に限って申しますと、まずはロイター、AP、AFPという国際通信社情報をチェックしてみてください(BBCも良いでしょう)。新聞と異なり保守・リベラルの党派色がなく、事実を淡々と伝えているからです。

 同時に大本営発表メディアの情報もあれば、それとのクロスチェックを。この時、大本営発表にはウソやごまかしがある、という視点で情報を読むことが必須です。

 さらに新聞やテレビといったソースもチェック。それでも大本営発表に一定の合理性がありそうだと判断したら、西側メディアが何かを誤解している可能性が出てきます。その際も、大本営発表の情報の確度は5割引きぐらいで捉えてもらった方が良いかと思います。

 そんな面倒くさいことやってられない、という方は、やはり国際通信社の報道を一つの基準にしてください。通信社報道には、単一のソースだけでなく複数のソースの情報や見方が列挙されていますので、長い記事一本で情報の全体像をおおむね見渡すことができるからです。

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