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If you are…#10 Rely(志麻せつら)

画像:Sothei様より(https://sothei.net/classroom-40da0307)

『最近、志摩先輩と距離が近い』と怒られる頻度が増えた気がする。

まあ、言われて当然のような気がする…というのも、つい最近まで他人同然だった関係が(自惚れにはなると思うが)3年生の女子よりも距離が近くなったのだから、言われて当然である。

「…だからと言ってSNSのアンインストールは困りものですけどね。」

私がそう愚痴を吐く相手はスクールカウンセラーを名乗る女性である(というか学校で紹介してくれたのだからおそらくは本物であると思われるが)。どうやら生徒会の方が見ていたそうで先生がお試し程度にと呼んだそうだ。

で、その彼女は「そうだったんですねー、辛かったでしょう。」とオーバーリアクションをしてくるわけであるが、それで慰められているのかと問いたくなるレベルの白々しさであった。

結局授業を公欠してまで取った時間は、愚痴をこぼす、という面では有意義だったかもしれない。でも解決は間違いなくしないしこれで心が晴れやかになるというわけでもない。

━早く先輩に会いたい。

私は応接間から出たらすぐに4階まで走った。自分たち1年生の教室がそんな辺境にあることを初めて疎んだかもしれない、早くしないと先輩が帰ってしまうかもしれない。私は先輩と一緒に帰りたいただそれだけを思って階段を駆け上がった。

教室に着くと、先輩が待ってくれていた…私の机で私のリュックを抱えながら。それに腕をかけて突っ伏しているのも愛らしいし、足組みとか素材は妖艶だし、染め直した金髪も三角形のピアスも全部全部愛おしい。ちょっと観察してたら先輩がこちらに気づいたようで顔を上げた。

「遅かったじゃん。」

彼の言うことはごもっともである。もうみんな(おそらく先輩の友達も)は帰っているのでこの広い教室には二人しかいない。

「あ、あの、これはですね…」と私はつい敬語に戻ってしまったあたりで「あらかた先生に聞いたから。」と先輩は冷たく言い放った。それに私は負けじと「寂しかったんです!」と言い返してみたが、嘘だったというのもあって効果は今ひとつのようだ。

「寂しかったら誰でもいいんだ?」と先輩は私の席から退こうとする様子は見せなかった。いつもだったら安安立って来てくれる先輩に疑問しか抱かなかった。その全く思いつかない私の様子をみて、ついに先輩は打ち明けた。

「俺だけ頼ってればいいのに。」

私は呆気に取られていたが、その後どういうことかわかった時にはつい微笑んでしまった。

「先輩、素直に言えないタイプですもんね…似た者同士ですけど。」

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