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If you are…#22 Brother
画像:みんちりえ様
(https://min-chi.material.jp/fm/bg_c/apartment_hallway/)
ずぶ濡れ事件以来、せつらは私の家にお泊りするようになった。
「へえー、今日も智子はせつら君とー。」
「まあ、智子の方からちゅうしてきたんだけどね。」
このように、私の親とタメで話しているレベルで気に入られており、今まで帰省してくる兄のために空けられていた部屋はすっかりせつらの寝床となっていた。
兄が家を出て行ってそろそろ10年が経とうとしているし、最後に会ったのは小学生の頃だ。なので寂しさなんてものはないし、何ならこうして毎日せつらと過ごせること幸せの方が大きい。
「お兄さんはベッドとか布団とかで寝ないタイプの人?」
「うん、たまに部屋の整理をしてるんだけど…この変に長い形の椅子くらいしかないからここで寝てたんじゃないかな?」
「そーなんだー。」と先輩は件の椅子に寝転ぶ。兄のクローゼットから出したらしいパーカーは萌え袖になってて、黒のズボンはちょっとパツパツな気がする。でも…というかだからこそ可愛いというか。
ちょっとゆっくりしていると、母がドアを開け「せつら君、お兄さんが。」とだけ言うと行ってしまった。
…せつらってお兄さんいたんだ。
そんくらいしか考えていなかったが、彼の方を見ると、呆れなのか寂しさなのか諦めなのかはわからないが、とりあえずそんな感じのオーラはすぐにわかった。
私は彼についていく感じで玄関まで出た。その玄関先にいたのは一人の男性であった。
その男性はどこかせつらと似ているが、せつらのイメージがたぬきだとしたら男性は狐であろう。さっき『せつら君、お兄さんが。』と言われていたりしていたので、差し詰め該当人物であろう。彼は他人の住居内だというのにタバコを蒸した。
「お前はそういうやつだよな。」
彼はそれだけ言うと私をじっと見た。先程狐と表現したが、今の目は獲物を狙う蛇が最も近しい気がする。
「無職で家の中でタバコを吸っちゃう兄貴だったら、そりゃ彼女選ぶに決まってんじゃん。」
せつらはそう冷たく言い放した。同じ血を分けているからだろうか、正直なところとか、なにかを咥えがちなあたりは結構似ているなぁ、と思った。
すると、男性は私の肩に手を乗っけると、私と一緒に外に出ようとした。もちろん抵抗しようとした。でも彼の手がギリギリと力がこもってそんなことを許してはくれなかった。
「どこに連れてく気?」とせつらは私たちの前に回ったが、「楽しいことできるとこ。」とだけ言って男性は蹴散らしてしまった。
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