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If you are…#28 Critical(志麻せつら)

画像:フリー素材.com様(https://free-materials.com/一人暮らし・ワンルームマンション01/)

彼氏の家にお邪魔することになった。でも、当人であるはずのせつらはいなくて、お兄さんが私の手を痛いほど引っ張る。

私は何度も「離してください!」と抵抗した…し、今なお抵抗している。しかし、お兄さんは「そーゆーの、そそるねえ。」と逆効果なのだ。正直言って、狂っている。

もしこれが電気だったら何百オームもしただろうそれも虚しく、アパートの一室に連れ込まれた。机が二つとベット一つ、誰の趣味かわからない画材セットまでは見る余裕があった。しかし、一つ違和感があって聞こうと思ったが、そんなターンはなかった。

「ここは営み以外で使ったことなくてさー。俺の番帰ってこねえなーって思ったらお前の家泊まってんだよねー。」

「番って…」

「言うまでもないでしょ。アイツの穴、使用済みだからさ。で、お前はアイツの番?」

恋人のことを『番』呼ばわりする彼は、おそらく人じゃない。というか兄弟を彼の言う『番』にしている時点でもうおかしいのだ。人の形をした化け物はさらに迫る。

「ま、そうだったらまとめて飼って食べればいっかー。」

抵抗する間もなく私はベッドに押し倒された。彼氏じゃない奴に、とかそれ以前の問題なのでどうでもよくなった。私は足を振り上げた。ナニが起こったのかは言いたくないが…強いて言うなら『クリティカルヒット』した。

「『飼う』?『番』?あんた、人をなんだと思ってんの⁈そんなことでしか人間を見れないとか…哀れで可哀想。というか、弟のせつらすらそういう目でしか見れないんだ。牢屋とかで反省してきなよ。」

私は言っているうちに冷静になった。そうか、彼はおかしいのではない─哀れなんだ。彼はうめきつつも言ってきた。

「そんじゃああんたがせつらを満足させられるとでも言いたいのか?」

「そうだよ!てか、そういうことじゃないと満足させられないとか…せつらが可哀想だよ!」

すると、窓から赤いランプで照らされ、この部屋に警察がきて私は保護された。


結局、私が家に返されたのは補導ギリギリの時間だった。玄関に帰り、「ただいまー。」というと、がばりと抱きしめられた。彼の制服Yシャツからは彼の香水の香りがした。

「守ってやれなくてごめん。」

彼はそれだけしか言わなかった。私は滑らかな金髪を撫でると言った。

「いつも守ってばかりだから、今度は守らせて?」

「それじゃあ俺のメンタル持たないっての。」

私は倒れ込みそうなくらい背伸びすると、彼がちゃんと受け止めて…そして甘く口づけした。いつもみたいな人工甘味料の味はしなかった。

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